ハフノンに到着した3人......国境付近の危機......防がれた戦闘
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
中央大陸最北端、フィーア国、唯一都市ハフノン。
シノらがいたアハト共和国はオースト大陸であり、西側に中央大陸がある。
中央大陸は世界最大面積の大陸であり、第二世界に属する。基本的には第一世界の国家を宗主国に持つ自治領か植民地のみであり、第一世界からの移民が統治している。
フィーア国、半年前にアインズ帝国を宗主国に持つカリウニスムから独立した新国家。
チタ族、ジルコン族、ハフニール族、ウンニルクアジム族が協力して独立運動を起こし、第三世界のグラファイア領の後ろ盾を得て、独立した。独立直後は、国境付近や内地でゲリラ攻撃や、テロが続き、不安定な情勢だった。しかし半年前、暫定統治に関する権限がグラファイア領行政府からSICA|サキシマ国国際協力機構へ移行し、治安状況は急速に改善されつつあった。
唯一都市ハフノン、フィーア国ではハフニール族が7割を占めており、4族長承認の下、ハフニール族の都市が成立した。公文書に具体的な記述はないが、実質的に首都の役割を担っている。
「うぉ〜、すごい雪だな!」
ジェット機の窓から見える吹雪など、外の景色にユリウスが反応していた。
その後、ジェット機がハフノン付近の海上に浮かぶ空母に着艦し、機体がサイドエレベーターで格納庫に収容された。
「一応、到着したけど......」
「ノルト海でも見たけど、この空母とか、ジェット機とか、本当にすげえな!」
「本当に1日で、というより半日も経っていません。早いです」
3人はワイワイ騒ぎながら機体を降りると、ドローンが待機していた。
『長時間の移動、お疲れ様でした。外の景色が眺められる艦橋にある特別室へご案内します』
ドローン、サキシマ国が運用している包括的支援ロボット。総合生活支援、警察、軍事、医療、整備など、多様な用途ごとに異なる形状や機能を有する。
「こんなに広い場所でも、全く人間がいないんだな」
ユリウスは空母の空っぽの広大な格納庫を見渡していた。ノルト海と違い、他の機体は無かった。
3人が搭乗してきた雪を被ったジェット機に、空港で用いられる航空整備ドローンが、湯気が出ている加熱された除氷剤を噴射していたり、特殊クリーニング専用ドローンが機体に入る様子が目に入った。
すると、前からドローンがもう2機、計3機がいた。3機同時にドローンの背面が展開し、小さな車輪が後ろ端にあるボードの様なものと、後頭部からT字のハンドルが準備された。
『ボードの上に乗り、ハンドルに掴まり、身体を安定させて下さい』
「シノ、これは一体何だ?」
「さあ?まあ、従った方がいい。オズも」
「ああ」「わかりました」
3人はドローンの指示通り、ボードに乗った。
すると単音が鳴った。
『発進します。ご注意ください』
ドローンの案内が途切れた瞬間、3人を乗せたドローンは移動を始めた。
3人とも、思い掛けない使い方に驚いた。
「これ、すごいな。かなり便利!」
「シノ、知らなかったのか?」
「ああ、初めて......」
「面白いです!」
ドローンはエレベーターにそのまま乗り、操作無しで行き先階が設定され、ドローンに乗ったまま、エレベーターを降りた。
『到着しました。特別室になります』
ドローンのボードから下りると、単音が鳴った。
『発進します。ご注意ください』
そのまま、ドローンは行ってしまった。
中央大陸、アインズ領カリウニスム保護国、対フィーア作戦合同軍基地。
「報告!申し上げます。戦闘車両、522台、それぞれ作戦位置にて待機」
「わかった。作戦開始の指示を待て」
「了解」
現地司令官だった、クヒードは空を見上げ、目を閉じ、精神統一していた。
カリウニスム国上空150km、SPY-67衛星が観測していた。
フィーア国上空10,000m、空母艦載機が待機していた。
サキシマ国、グロハス、情報コンソール。
『目標地点、到達まで30秒。軌道を注視、逸脱に備え、艦載機による迎撃態勢、継続』
クヒードは吹雪の中、空の異変に気付いた。
「あの赤い光は何だ?かなり多いな」
アインズ帝国、帝国大学天文台。
「あれらは、流れ星か?火球か?徐々に光が強くなっている」
「体積、落下速度、空気抵抗、質量などの算出で、燃え尽き、地表への到達は無いと推測されます」
だが、天文台の研究員の1人が意見した。
「しかし、あれ程密度の低い物体が、あれ程長時間、空気抵抗による加熱に耐えられるモノでしょうか?およそ数秒で燃え尽きるのでは?」
「わからない......」
アインズ帝国、グラティウス宮殿。
「天文台より、今日の星空には本日、発見された火球と呼ばれる現象が見られる、との報告です。極めて珍しい事に、かなりの数が見られるそうです。この機会に是非、御覧になられてはどうでしょう?」
統合司令官ディクスは、国王グラティウスに薦めた。
「ああ、そうだな。酒を片手に見るのも一興か......。何かの前触れでなければ良いが......」
『20秒前、現在、正常に軌道を飛翔中、分離』
「光が徐々に強く.....!光が増えた?」
クヒードは不安を感じながらも、空を見上げ続けた。
「この火球、焼失しない!外殻の密度が高いのか?もはや隕石だ!この軌道、帝国に落ちるぞ!」
天文台観測員は怯えつつも、その光を見続けていた。
「おお、随分明るいな。これが火球か!まるで隕石と言われても不思議ではない」
「これは、よく見えますな......」
王城では、酒のグラス片手にその光を眺めていた。
『10秒前、9、8、7、6、5、4、3、2、1、地表への到達を確認』
複数の轟音の後、数分後。
「報告!戦闘車両、全522からの定時報告、通信が途絶えました!応答しません」
「何だ?どういう事だ!原因を調べろ!まさか......」
クヒードは嫌な予感がしていた。
天文台。
「帝国本土への複数箇所で着地を確認!緊急事態につき、宮殿、行政府に報告!」
グラティウス宮殿。
「何の音だ!」
グラティウスが騒いでいた。
「報告、天文台より、国内複数地点で隕石の着地を確認されました」
「隕石だと!」
サキシマ国、グロハス、情報コンソール。
『全該当地点、消滅。タスク終了。艦載機は態勢を解除、通常任務に移行』
こうして、サキシマ国が諜報、予測した大規模戦闘は、未然に防がれた。