違和感と忠告......思惑と思惑......不安への道
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オズは、かなり動揺していた。
「あっ......あの、こんな大金、頂いても良いのですか?」
オズの様子を見てユリウスは笑っていた。
「ははっ、何言ってる?300万とか、そんな大金でもない」
シノもユリウスの説得に重ねた。
「今回のギルドからの報酬は、トータル900万。三等分でちょうど。それだけだよ」
それでもオズは折れなかった。
「この依頼でも俺、シノさんに助けられて、治療してもらい、ユリウスさんにも服とか短剣とか、お世話になりっぱなしで、その...何か申し訳なくて......」
「確かに一時的に、奴隷としてオズを買ったけど、その後、この国がオズの人権を、俺から買い戻し、オズ自身は自由になったんだ。一緒に居るのは、友人、それが理由。そうだろ?」
「うぅ......っ」
シノの言葉にオズは目を潤ませていた。ユリウスもまた、オズの手を握った。
「俺もシノに模擬戦で負けて、シノを追いかけてここにいる。俺自身、特に何の役にも立っていない、ただの居候だ。シノにはむしろ迷惑だろうけど、別に深く考えること、無いだろ?」
「そこは考えろよ!」
「第一、本気で嫌いな奴、迷惑と思う奴と、一緒に暮らしたり、会話とかしないだろ」
「......そうかな?」
シノのツッコミをかわし、ユリウスは続けた。
「まあ、過去に何があったかはわからないが、とりあえず今は何も考えない方がいい」
シノはオズの肩に手を置いた。
「何があっても友人は置いて行かないし、友人の自由を奪うことはしない。それだけ......」
すると突然、ユリウスが話題を変えた。
「シノ、お前は冒険者、辞めた方がいいんじゃないか?」
「えっ......」
ユリウスの突然の助言、その内容に唖然とした。
「お前、キマイラの駆除の時の事、全く覚えてないだろ!」
「そんな事......何で?(分かるの......)」
ギクリと、思わず肩で反応してしまった。
「やっぱり、図星か」
「そんな事......」
「俺がわからないと思うか?」
「......」
「とりあえず、冒険者は辞めろ。心の病は、酷くなると大切なものを失うぞ!」
「わ...わかった」
シノ自身、記憶に空白が生じているような感覚はあった。だが、どのくらいの時間と、頻度で起きているか、認識できていなかった。
アインズ帝国、グラティウス宮殿、帝国三軍統合会議。
アインズ帝国の元首である、国王グラティウスが陸・海・空の統合司令官を謁見の間に召喚した。
「中央大陸フィーア攻撃指示書を見た。お前の意思を聞こうか?ディクス」
三軍連携を強化する目的で新設された、統合司令官ディクスは返した。
「本作戦の意図は、第三世界、フィルツェーン王国に属するグラファイア領の勢力拡大を防ぐことにあります。グラファイア領は、フィルツェーン王国を実質的に支配しており、経済、軍事において、全世界に強大な影響力を持つと言われています。しかし昨今、グラファイア領は領兵が解散、サキシマ国に領域防衛を完全に移管しました」
「ほぉ......」
「以前のグラファイア領装備は、数的優勢と装備性能において影響力を有してきましたが、それら全てを同盟国に分配、放棄しました。一方サキシマ国装備は、少数精鋭であり、海戦では我が戦艦との戦闘では間違いなく、サキシマ国の勝利は揺るぎませんが、圧倒数による飽和攻撃に対しては極めて脆弱、だと分析されています」
「飽和戦か......」
「陸上戦では、サキシマ国は特に、フィーア国の都市ハフノンにて対砲弾迎撃砲を設置しており、長距離砲による攻撃は有効ではなく、やはり、飽和攻撃が有効と分析されています。中央大陸には我が属領が数多くあり、千単位での調達が可能です」
「膠着が早期に解けると?」
「はい。サキシマ国は極めて高度な技術水準ですが、我が属領が自走車両を容易に調達できる様なこちらにとって良い意味で開放的な、抜けた国家です。速やかな広域分散・連携戦法を実施できる、準備は既に整っております」
「そうか。中央大陸攻略、期待している。ディクス」
「はっ」
作戦指示書にグラティウスは署名した。
グラティウス宮殿上空150km、サキシマ国観測衛星、SPY-75が音声傍受していた。
衛星には、時相差量子センサーが搭載されており、声の空気振動による分子の量子変化をミリ秒単位で計測、音声を記録していた。
サキシマ国国家安全保障、通達会合。
[......中央大陸......フィーア......飽和攻撃......自走車両......調達......中央大陸攻略......]
アインズ帝国国王グラティウスと統合司令官ディクスとの会話が流れていた。
「以上が、衛星が傍受した音声だ。グロハスは、不正に流出した当該車両と研究関連施設、関係者の完全消去、指示書への対処については行わない行動指針を提示した。衛星軌道上より、隕石に偽装した戦略滑空体を大気圏突入軌道に投入し、該当地点への精密誘導を行う」
グロハスとは、Global Harmonized System の日本語的な略で、世界調和システムと訳される。これは、エミュレート・プログラムを実行する人工知能が有する機能のひとつだった。
集団の人間における暴力の推移を、過去の膨大なデータから解析、抽出、構築された予測モデルを基に、将来の暴力を減衰させるタスク、などを含み、人類調和を目的としたシステムだった。
「「了解」」
「戦略衛星、機密区分コードAの617、各種諸元を送信完了」
「光学観測より、該当衛星、軌道修正動作を確認」
そんな頃、シノら3人は車で移動していた。
「即決だったな。良かったのか?」
ユリウスはシノに尋ねた。
「ああ、後悔はないと思う。それに、俺の領が関わってる戦争を止めたいし......」
シノは既に次へ向けて、考えていた。
「中央大陸でしたか?極北、極寒の地、ハフノン......」
オズも話を聞いていた。
「そう、これからアハトの航空基地で輸送機に乗ってノルト海の海上にいる空母まで行って、空母からジェット機でハフノンまでそのまま。現地はまだ情勢が不安定で、大変らしいから......」
「そうですか......」
「心配するな、オズ。大陸の勇者の俺が守ってやる!」
「あ...ありがとうございます」
そうして3人は中央大陸、フィーア国、唯一都市ハフノンへ向かった。
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