私と話す気なんて、全然なかったんだ
慌てて私が部屋に戻ってくるとそこにいたルカが、
「どうしたの? 慌てて」
「その、偶然、レオ王子に会ってしまって、慌てて逃げてきちゃった」
「……正解だね。私以外に、瑠香がいるって気付かれると困るから」
「うん。本当に驚いたよ、話をしたいのだけれど、と私は言われるし」
「……そうなんだ」
そこで、ルカは黙ってしまう。
何処かしょげている様な、俯いている様なそれに私は、
「もしかして、ルカ、会いたかったの?」
「……別に」
悲しそうな表情は変わらない。
そして私は知っている。
人気のない校舎で、ルカがレオ王子に……。
すでに会っているし、こんな風に表情に変化がないとなると、別の理由だろうと私は見当を付ける。
「それとも私がレオ王子様に、話をしたいって言われたのが羨ましいの?」
「! ……別に」
「そうなんだ。レオ王子と話したいんだ、ルカは」
「……話したくない。だって、レオは……私と話す気なんて、全然なかったんだ」
「そんな事はないと思うけれど」
「嘘! だって私、出会い頭に逃げようとしたら腕を掴まれてそのまま……何でもない」
私が目撃したのは丁度、ルカが壁に押し付けられた頃のようだ。
ほぼ再会して次に会った時にそんな風にされれば、それも好きな相手にされたなら落ち込むだろう。
なのに私には話をしないかと言ってきて、
「まさか、私がルカじゃないとばれた?」
「! ……まさか、異世界とはいえ同一存在だよ? 気付くはずがないよ」
「そう、だよね……そうなってくるとさ、レオ王子、その、ルカは前に会ったみたいだけれど、その時の事を反省して類との関係を修復したいって思っているんじゃないかな」
「……そう、なのかな」
「そうだよ、でないと説明がつかないじゃん」
「そう、だよね。……そっか。私と話をしようとしてくれているんだ」
そこでようやく、ルカが微笑む。
けれどすぐに悲しそうな表情になり、
「でも私はもう、話せない。それが私の役目だから」
「そしてそれを覆すために、私がいる、でしょう?」
冗談めかして私がルカに告げると、そこでルカが微笑み頷いた。
そこで私のお腹がぐうっ、と鳴く。
「お腹が空いたかな、そういえば食べ物はどうしよう」
「ここの部屋で私も食べるから、部屋で食べるための飲み物と食事を貰ってくるよ。……私は実は大食いだってことにしてね。待ってて、すぐに取ってくるから」
ルカが立ちあがり走り出す。
良かった、元気を取り戻したみたいだと私は思いながら、
「ルカが悲しいと何となく私も悲しいから、ルカを励まして……レオ王子とくっつけるんだ」
そう口に出して私は、頷いて決意を新たにしたのだった。
食事はスープとパンの様な物とお肉の入った野菜炒めだった。
結構沢山持ってきてくれたので、パンは保存がききそうだから、残して持っていようかなと思う。
また瓶詰めの飲み物を幾つも持ってきてくれて、それがブドウの様な味わいで凄く美味しかった。
そんな風に異世界の料理を堪能している私にルカが、
「それで、マーガレットの片思いの相手はどんな感じ?」
「好感度が100とするとすでに56貯まっている感じかな」
「凄く落としやすいのかな?」
「うーん、そうかも。これから私が上手く好感度を上げるように誘導もしてみようかなって思っているから、どの道大丈夫だと思うけれどね」
「頼もしいです、瑠香」
「大船に乗った気でいたまえ、はっはっは」
「調子に乗ってるぅう、この」
肩で軽く私の肩をツンとと叩くので私はやり返す。
そうするとルカがまたやってくるので私もやり返して……私はまたやり返す。
そんなこんなで楽しい夕食を終えた私達は一緒のベッドに寝る。
このまま余裕でクリアしてやる、そう私は心に決めるけれど……事態が動いたのは、次の日の昼休みの事だった。
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