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実は罠はすでにしかれていた

「え?」


 突然“世界”の動きが止まる。

 風や声や人の動きはおろか、全てが止まってしまった。

 私以外何一つ動いていない静寂の世界。


 試しに一歩踏みだそうと私は思うと、いつもの様に私は動ける。

 時間を止める能力。

 それが私の持っている“チート”だったのだろうか?


 皆が動けない間に私は動ける。

 悪用すれば恐ろしい力だけれど……。


「今ならきっと、皆の役に立てるね」


 幸せな結末のためにはこの力が必要だったのかもしれない。

 そう思いながら私は走りだして、スノーホワイト侯爵の元に向かう。

 そして火の塊が迫るなか、誓約書をヒョイッと取り上げる。


 手に入れた私はそのまま先ほどの場所まで戻ってきて、ここなら安全だよねと思ってから、


「どうやって時間を解除すればいいんだろう。えっと、そして時は動き出す、みたいな感じでいいのかな……時間よ動け、むむむむ」


 そう私が念じてみると同時に、音が戻る。

 炎の塊が向かっていくそれに悲鳴を上げるルカ達だったけれど、その炎が爆砕した所でとりあえずはレオ王子に、


「あの~、取ってきたのですが、これはどうしましょうか」

「! それはルカの誓約書! 一体何をした?」

「えーと、時間を止めて、取ってきました」


 そう私が答えると、レオ王子は少し考えてから、


「やはり異世界から呼ぶと、強くて危険な力を持つな」

「え、えっとあの……」

「だが今は、礼を言う、君の力のお陰で、ルカは助かったのだから」


 レオ王子はそう伶音れおに似た優しい笑みを浮かべる。

 こんな所も同じなんだなと私は思う。

 そこでレオ王子はルカの誓約書に指を触れる。


 そのまま指でなぞるようにその魔法陣の一部に触れて、


「契約を解除する」


 そう告げると同時に紙が白く光り、描かれた文字が黒い霧のようなものとなり消えていく。

 それが全て消え失せてから、レオ王子はルカに、


「これでルカを縛るものはもう何もない。後は……あそこにいるあの男を倒せばいいだけだ」


 そのレオ王子が告げた一言が合図だった。

 もう容赦する必要はないと、私が真っ青になるくらい三人は攻撃を仕掛けてスノーホワイト侯爵に攻撃を仕掛けて気絶させる。

 そして全てが終わった後、ルカが私に抱きついてきた。


「ありがとう、瑠香ルカ! やっぱり瑠香ルカを呼んでよかった!」

「うん、まさかこんな力が私にあるなんて思わなかったよ。でもルカが自由になれて良かった」


 心の底からそう思って私はそう告げるとルカが微笑む。

 そんな、まだ全部は片付いていないけれど、一つは上手く言って喜んでいる私達だけれど、そこでレオ王子がやってきて、


「ちなみに別世界の自分を呼べるのは、王族だけに秘され、そしてある程度魔法の素養がなければ使えない魔法なのだと、ルカは知っていたか?」

「「え?」」


 私とルカは間の抜けた声を上げてしまう。

 それにレオ王子は微笑みながら、


「ちなみにこの魔法は特別なものだから、知っている時点で、危険人物認定……王族の一員でなければ、一生幽閉かな」

「……え?」


 ルカが不思議そうに声を上げる。そんなルカに更にレオ王子が楽しそうに、


「そしてそれを呼び出せるだけの才能を持つ君は、放置できないな。しかも呼び出した相手はこの世界の時間を止めて色々出来る人物。それだけでもルカは、私達にとって危険な存在だ」

「で、でもこの魔法を教えてくれたのはレオ王子で……」

「そう、教えたのは私、だって、ルカを何処にも逃すつもりがなかったからね」


 笑うレオ王子にようやく私も含めて、皆が気付いたようだ。

 つまり、初めからレオ王子はルカを逃すつもりなんて全くなかったという事実を、である。

 そこでレオ王子がルカを抱きしめる。


「だからもう私はルカを逃さないよ、覚悟をしておいてね」

「……はい」

「それが私から逃げた罰だ」

「はい、レオが望むなら何でもします」


 それに珍しくレオ王子がちょっと意地悪に笑って、


「今、何でもするっていったよね?」

「う……はい」

「これからは私の傍から離れてはいけないからね」

「はい!」


 それにルカが幸せそうに頷いたのだった。


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