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時間よ止まれ

 それを手にしたスノーホワイト侯爵だけれど、そんな彼女にレオ王子は、


「それで、私のルカの命の契約書をどうする気なのかな?」

「……しまった」

「何をやっているのよ! 隠しておけば見つからなかったのに……しか無いわ、こうなったら力づくで言うことを聞かせるわ。まずは全員気絶させて、記憶操作してやる! 手伝って!」


 レオ王子のその言葉に自分の失敗に気づいたスノーホワイト侯爵。

 恐らくは先ほどのレオ……伶音れおの攻撃に焦ったのだと思うけれど、それはこちらにとっても好都合だった。

 だって、隠された場所をわざわざ探さなくてもいいのだから。


 ただ先読みの魔女が即座に動いた点は、予想外だったけれど。

 それでも今私の側にはゲームのヒロインのマーガレットがいるので、


「させないわ! いいわ、ここで決着をつけましょう! 母さん!」

「ええ、我儘娘にも、この世の摂理を教えてあげるわ!」


 とのことで二人が激突した。

 とりあえずは現状ではマーガレットに先読みの魔女の相手をさせればいい。

 それはゲームの終盤のイベントの一つだったけれど、それでいい。


 そう私が思っている所で私とルカの枷をレオ王子と伶音れおが魔法で壊してくれる。

 私を優しく見つめる伶音れおが、


「大丈夫だったか?」

「うん、助けに来てくれてありがとう。あ、もしかしてあのペンダントで?」

「ああ、まさか瑠香(ルカ)がここに来ているとは思わなかったから、初めて会った時は驚いた」

「そうなんだ、どの時点で気づいたのかな?」

「廊下を走って逃げ出そうとしている時かな。あの二人が何かをやっていた時だと思う」


 それはきっと、この世界ではじめて伶音れおに会った時だ。

 何かが違うような変な感覚を私は覚えたけれど、伶音れおはすぐに私だと分かってくれたらしい。

 それに私は罪悪感を覚えながらも、今更だけれど、“好き”だと思う。


 だから助けだされたのもあって私は、伶音れおに抱きついてしまう。

 と、そんな私達にレオ王子が、


「そうやって仲がいいのは分かるが、スノーホワイト侯爵を捕まえるのを手うだってくれ。今逃げ出した」

「……分かっている」

「それとさっきのような()()()()()魔法ではなく、もっと強力なものにしてくれ」

「……瑠香(ルカ)にきついものは見せたくない。実際に止めてきたし……」


 といった伶音れおの話を聞きながら私はといえば、


「あれ? あの魔法は結構強力に見えたけれど」

「あの程度の魔法ではかすり傷ひとつ付けられない。その程度の威力しか無いのは、分かっているから……その点は心配しなくていい」

「う、うん……」


 どうやらこの世界の人間は体が丈夫であるらしい。

 でも伶音れおはやけに詳しい気がする。

 何でだろうと私が思っているとそこで、


「それで追いかけるぞ」


 レオ王子がそう私達に告げて走りだし、私達もそれに習って走りだしたのだった。







「うばえるものならば、奪ってみろ」


 そうスノーホワイト侯爵が挑発する。

 何でも彼女は魔法使いとしても一流らしい。

 ゲーム内ではマーガレットのレベルが高かったので瞬殺できたけれど、こちらではそんな風にはうまくいかない。


「“雷よ、舞え”」

「“氷よ、刃となれ”」


 次々と魔法を繰り出して行くレオ王子とルカ、そして伶音れお

 やがて建物の行き止まりのような場所に、どうにかスノーホワイト侯爵を追い詰めはしたのだけれど、そんな彼女にレオ王子とルカも混じっての魔法攻撃が炸裂する。が、


「そんなことをして許されると思っているのか!」


 叫んだスノーホワイト侯爵は、時折ルカの誓約書を盾にする。

 そんなことをして更にレオ王子の不興を買ってどうするのだろうと思っていたけれど、なんとか私達を倒して記憶を操作してしまえば終わりだと思っているのだと私は気づく。

 嫌なタイプの敵だなと思う。


 マーガレットのためとはいえ、手段を選ばない彼。

 一方的にボコられてくれる敵じゃないところがリアルだなと私は思ってしまう。

 そしてその誓約書によって、私たちは、手出しできないことが何度もあって決定打を与えられない。


 そして私は、魔法がほぼ使えないので邪魔するわけにもいかず、ただ見ていることしか出来なかった。

 でも、ある時、ルカの炎の塊が偶然にもその盾にした誓約書に当たりそうになって、それを止める間もなくて……時間よ止まれと私は思う。

 私は思っただけだった。


「あれ?」


 そこで……私以外の見える範囲内の全てが、凍りついたのだった。



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