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もう一人の私の願い

 ここで、今私に抱きついている彼女、ルカ・スノーホワイトについて説明しよう。

 もともと孤児院出身の彼女だが、そんな彼女はある日、たまたま城を抜けだした王子、レオと出会う。

 後から分かるがお互い一目惚れした二人は、よくこっそりと会って遊んでいたらしい。


 けれど、そんな日々はレオ王子がこっそり抜けだしているのがバレて、連れ戻されてしまう。

 また会いに来るから、そんなレオの言葉を信じて待っていた……わけではない、ルカ。

 ルカは、待っているだけじゃなくて自分で会いに行くと決めた。


 なのでルカは、優秀な孤児は貴族の養子になれる可能性があると知り、魔法の才能もあって、一生懸命勉強を頑張ったのである。

 その努力のお陰で、王家とも縁のあるスノーホワイト侯爵家に養子として迎えられたルカ。

 けれどその侯爵がルカを養子にとったのにはある目的があった。


 先程から私に抱きついていたルカが涙ながらに訴える。


「私、レオに会いたくて、もう一度会いたくて、なのに、私は……」

「うん、会っちゃ駄目って言われているんだよね」

「! どうして知っているの?」


 涙目で見上げられた私は、どう説明しようかと悩みつつ、


「私の世界には、電子画面……えっと、薄い板状のものに映し出せるのだけれど、仮想上の世界を作り上げて、その世界ここでこういった選択をするとこうなる、みたいなゲームが有るんだ」

「……そんなものがあるんだ。異世界は不思議なんだね」

「うん、それでね、この世界の学園で起こるゲームを私はやっていたんだ。ただ、そのゲームの主人公は、マーガレット・ブラウンだけれどね」


 ルカが凍りついたように動かなくなる。

 だってそれは、今は、ルカにとっては恋敵のような女性だ。

 けれど気休めにしかならないけれど私は、そのゲームについてルカに教える。


「でも内容はね、マーガレットは王子レオとはくっつかないんだけれどね」

「……そうなんだ。それだと、嬉しいかな。本当はそれが私の役目なのにね」

「やっぱりゲームと同じなのかな? 孤児院時代に出会ったレオに会いたくて貴族の養子になったけれど、実は昔出会っていたのを知っていたから養子にしたって。そしてマーガレットとレオをくっつけるために悪役になれって言われている?」

「……うん、その通り。やっぱり召喚は……上手くいったのかも」


 それを聞きながら私はまるで、そのゲームを知っている人間を呼んだように聞こえる。だから、


「どういった理由で私を呼んだの?」

「私を手助けしてくれる、そんな力を持った平行世界の“私”を召喚したんだ」

「……えっと、つまり私は、別の世界の君?」

「うん。基本的に呼べるのは、別の世界の自分か、特別な人だけだから。それにきっと、“私”なら手助けしてくれるって、そう思って……あ、でも、もしも嫌なら今すぐ送り返すけれど……」


 声が段々小さくしぼんでいく。

 そんなルカを私は放っておけなくて、私もお人好しだよなと思いながら、


「うん、私が呼ばれたのには、ルカの手助けをできるからなんだよね。私にどんな事が出来るかわからないけれど、やってもいいよ」

「! ありがとう! ……えっと」

「どっちも“ルカ”だから名前を呼ぶのが不思議な感じだね。ルカ」

「そうだね、瑠香ルカ。……これからよろしくね」


 そう私は、もう一人のルカと握手を交わしたのだった。



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