告白の答えの前に、異世界召喚!?
「小鳥達の楽園」という学園ファンタジーの乙女ゲームが有る。
内容は学園でファンタジーなゲーム、で終わらせてもいいのだけれど、軽く説明すると、
「才色兼備で行動力の有るヒロインに、様々な素敵な男性キャラが惚れて、最終的にはカップルになるというゲーム、だよね」
しかも一つのキャラに3つ近くのエンディングがあったりする、そんなゲームだ。
ちなみにR18追加ディスクもあったりするのはおいておくとして。
このゲームは……実は呪われている、という都市伝説がある。
なんでも片思い中のカップルがいた場合、その登場人物にされてしまい、そのカップルがくっつくまで何度もプレイさせられてしまうらしい。
乙女ゲームだから恋愛が終着点なのは分かるけれど、これは酷い、と思っていたりする。
でも都市伝説なんて、ただの“噂”に過ぎないと私は鼻で笑い飛ばしていた。
ちなみにこのゲームを買った理由は、主人公のキャラが好みで、こんな女の子になってモテモテになりたかったから……という俗っぽいのが当初の目的だった。
けれど今はちょっと違っていて。
「この王子様役が、幼馴染の天王寺伶音を黒髪黒目にした感じなんだよね」
そう呟いて私は深々とため息をつく。
幼馴染の天王寺伶音は、イケメンでスポーツ万能で優しくて勉強もできてという、こんなある意味無敵な人間がいるのだろうかという私の幼馴染だ。
そんな彼がどうして私なんかを相手にしていたのかはさっぱりわからない。
でも私には少し意地悪だった気がする。
そんな私は、羨ましいと思うけれど幼馴染の友達以外の感情は……あまりにも私達の距離が近すぎたから、私は意識していなかったのかもしれない。
でも、この前……変わってしまった。
夕暮れ時の私の部屋。
二人っきりで遊んでいた私は、伶音にキスされた。
触れるだけの軽いキスだったけれど、私は、何でという気持ちにしかその時ならなかった。
そしてそんな驚く私に伶音が、
「このキスの意味を、考えて欲しい」
私に告げた。
そこにいつもの幼馴染はいなくて、熱っぽく私を見つめる……私の知らない幼馴染がいた。
でもそんな風に言われても、私には心の準備がまだ間に合わなくて。
その後も学校で会う度に、私は伶音から逃げ出してしまった。
そしてこのゲームを手に入れた私はその気持について整理をするために参考も兼ねてプレイをしていた。
その結果、攻略本を買って全ルートクリアをしてしまうくらいにやり込んだのだけれど……それは、最後のルートをクリアしたその時だった。
「……助けて、もう一人の“私”。もう、私一人では無理なんです」
そんな“私”の声が聞こえて、やっていたゲームの画面が白く輝き始める。
その眩しさに私は目を開けていられない。
何が一体起こったんだろう、こういうパターンだと、異世界に召喚されるんだよね、と私が思いながら光がなくなったのを確認して私が目を開くと……そこは見知らぬ部屋だった。
あまり物の置かれていない部屋で、あの乙女ゲームの部屋がこんな作りだった気がする。
ただそういったものをつぶさに観察してもいいのだけれど、私は今現在眼の前の人物のほうが気になった。
黒髪に赤い瞳をした可愛い感じの少女。
ただ、姿形は私に似ていて、そして今、悲しげに泣いている。
彼女は私が現れるとともに、抱きついてきて、
「助けて! 私、もう自分一人ではどうにも出来なくて……」
「え、えっと、君は……ルカ・スノーホワイトだよね?」
「……私を知っているの?」
「う、うん、ゲームで見ていたから」
「……あの、貴方の名前は?」
「私? 私は……如月瑠香」
そう私は抱きついている、ゲームのキャラであり私に似たルカに……私の名前を告げたのだった。
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