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一緒に帰るか?

「悪い、秋葉。じゃあこれから、君のお爺さんお婆さんに会いに行ってみるよ」

 自分の拒絶を誤魔化すように初春は言った。

「出来れば、連絡を入れておいて貰えるとありがたいんだが」

「う、うん、わかった」

「――ありがとな」

 それだけ言い残して、初春は控え室を出て行った。駐輪場に止めてある自転車にまたがって、メモで場所をチェックしてから、自転車を走らせた。

 駅前にある時計を見ると、時間は5時を少し過ぎたくらいだ。

 あ――そう言えば、今日図書館に返さなきゃいけない本があったんだっけ。

 でも、バイトやっているとバイト帰りのこの時間しか、行く時間ないしな――要件を済ませたら、図書館に行けばいいか。

 普段ならこのまま図書館に向かうが、初春は家の方に自転車を走らせる。

 この時間にこの方向に自転車を走らせるのは、この町に来て初めてかもしれない。

 ――それを思った時、柳雪菜のことを一瞬思い浮かべた。

「……」 

 雪菜との関係は、何か自分が誤解をされていると思ったのが気持ち悪いと思ったことから始まったが、多分雪菜の誤解はもう解けている。だとしたら、俺が雪菜と話す理由など、もうないのだが。

 彼女は俺と音々の何でも屋の計画を、この町で唯一話している。

 正直呆れられると思ったが、雪菜は何でも屋の話を笑わずに聞いてくれた。

 今でもわけの分からないことをしていると思っている俺だが、その時馬鹿にされなかったことが、この何でも屋が何とかなりそうだと、安心につながったのは確かだ。

 それどころか、音々を認識させるためのヒントも貰っている。

 紅葉じゃないが、借りも出来てしまったし、何でも屋がはじめられるようになれば、雪菜の頼みを最初に格安で聞いてやろう、と考えていた。

 ――あくまで格安だけどな。

「――ん」

 自転車が駅前を抜けて、田園地帯と砂利道に入ると、自転車が酷く揺れだす。

 初春の家のある山の方を見ると、夕焼けに照らされる山の峰の方から何か影のようなものが蠢いて、忙しく空を駆けており、山の頂上付近からは、陽炎のような、湯気のような、空間が歪んだように見える気が立ち上っているのが、初春にも見えた。

「あの山に隠れている神や妖怪の気か……」

 初春も最初は家の中でしか神や妖怪達の姿を捉えることはできなかったが、最近は家を出ても、微弱な妖気の流れも視認出来る程になっていた。

「……」

 この時間は大体こちらに来ないから分からなかったけれど――

 日が暮れる時間になると、本当にあいつらも、隠れている場所から出てくるんだな。

 だが――

 今、山の向こうに見えているあれは、俺の家に来ている連中のものとは、雰囲気が違うな……

 ――なんていうか、酷く不吉な予感がする。

 あの山の向こうから立ち上るものを見ると、妙に心がざわざわする……

初春は自転車が砂利道に倒れないように、視線を下に向けた。



 それから5分程度で到着したのは、盆地状に神庭町を覆う小山のひとつ――初春の部屋の窓から見下ろせる景色にあった、棚田になっていた山の麓であった。

 山の斜面を削って作られた棚田は、今年の稲を植える準備が整えられ始めているが、その麓である場所も、見渡す限りの畑で、こちらにはそこここに収穫を待つような野菜が実っていた。そしてここに来る途中に見えた、牛舎や鶏舎から、動物の鳴き声が風の音に混じって聞こえてくる。東京にいた頃には外でまず嗅がない、動物の臭いもする。

 その畑のど真ん中に、瓦屋根の、古いがどっしりとした構えの一軒家がある。農道にせり出すように生える立派な松の木が、コンクリートの兵の向こうにのぞき見えている。

 団地出身の初春にとっては、ほとんど馴染みのない、立派な敷地の家であった。

 滑車の付いている門扉のある大きな庭の入り口に、家まで15メートルほどある道に石畳が敷き詰められ、そこに1トンくらい積載できそうな小さ目のトラックがある。門扉の左手には、何か古い道具やガラクタが沢山収められた、四畳半程度の敷地の小屋、右手には、板張りの上に藁をかぶせた簡単な屋根が付いた敷地があり、そこには干し柿や大根が吊るされている。トラックの背後には、中に小さな花壇があり、4月を迎えたそこには、黄色い菜の花が庭を飾っていた。

 きょろきょろしていると、右手の屋根の下に犬小屋があり、近くにつながれていた柴犬が勢いよく初春に吼え始めた。

 その声を聞いて、客が来たと思ったのか、後ろの家の玄関が開いて、背の小さい、7割ほどが白い髪のお婆さんが出てきた。

「おや、お若いお客さんだぁ」

 少しいがらっぽいが、よく通る声で言った。

「はじめまして。秋葉さんの紹介で、ここで働かせていただけるということで、ご挨拶に来たんですが」

「おぉ、くぅちゃんが言ってたのは、あんたかい。よく来たねぇ」

 お婆さんは初春に近づいて、初春の姿をしげしげと眺める。

「あらら、随分細いですねぇ。この細い体じゃ、仕事大変かも知れませんよ?」

「大丈夫です。少しは鍛えているんで」

 初春はよく細身と言われるが、自分の体格を多少研究しており、中学に入学した頃から日常的に体重調整を行っている。

初春はまだ身長も少し伸びているが、中学3年生の時点で173センチ。この身長で、自分の剣道やジークンドーで、初春の戦いで重視する速さを兼ねながら、相手を一撃で戦闘不能に出来る最低限の重さを兼ね備えるには、ボクシングの階級で言う、フェザー級~ライト級の間の体重が一番バランスがいいという結論に行き着いている。厳密に言えば約57~61キロ、大まかに初春は、60キロを少し切るくらいが、現在の自分の理想的な体重と認識しており、大雑把に4キロ以内で体重を調整している。

「さあさどうぞ、上がってくださいな」

 お婆さんはそう言って、初春を家の方へ促した。

 家の中は年季の入った檜の木目の美しい和風の造りで、檜の独特の香りに畳の井草、そして何か煮物を作っているのか、醤油と味醂のような、発酵調味料の臭いがした。

「お爺さん。お手伝いをしてくれる方がいらっしゃいましたよ」

 玄関を上がったお婆さんがそう言うと、右手の引き戸が開いて、大柄で色黒の、まだ初老だが、程よく筋肉のついた、短髪の胡麻塩頭のお爺さんが出てきた。

「はじめまして、神子柴初春と申します」

 初春は頭を下げた。初春は人間嫌いではあるが、自分が人間にされた礼を欠いた行為に怒りを感じる分、このような礼儀作法はきっちりしたいと考えている。

「へぇぇ、若いな、いくつだい?」

 にこやかな笑みを浮かべ、お爺さんは肉体労働者らしく、口数少なく訊いた。

「半月前に15になったばかりです」

「紅葉と同い年か……訊いていたが、本当に高校に行ってないんだな」

「……」

 初春は心の中で舌打ちした。

 うるせえな、好きで行かなかったわけじゃねえんだよ。

「君、今日は時間あるかい?」

「――えっと、図書館に本を返しに行く以外、特に予定は」

「よし、じゃあ飯を食って行きなさい」

「え?」


 6時を回ると、座敷の食卓に、ニラ玉に蓮根のきんぴら、ほうれん草の胡麻よごしに、ブリ大根、エンドウ豆の掻き揚げが並んだ。味噌汁には絹サヤが入っている。

「……」

 すげぇ、見事に野菜ばっかり。

「若い人の口には合いませんかねぇ」

 お婆さんが台所から言った。

「いえ、こんなに野菜を使った料理なんて、すごい贅沢なんで」

 一日500円の食費で過ごしていた初春は、これだけの野菜でおかずを取り揃えた場合、いくらかかるかが分かっていたので、素直に感心した。

「ん」

 ご飯の横に添えられた小鉢に添えられた漬物に目がいく。

「これ、何の漬物なんですか?」

 向かいの上座に座るお爺さんに訊いた。

「ん? キャベツだよ。うちで取れたやつを漬けたんだ」

「え、キャベツって、漬物にできるんですか?」

 野菜を食べる習慣がないので、漬物なんて大根と白菜くらいしか知らない初春は驚いた。

「ははは、都会者は漬物を食わないかな。折角だ、飯前につまんでみてくれ」

 お爺さんが促したので、初春は頷いて小鉢を手に取り、いただきますと言ってから、箸でキャベツの漬物を口に運んだ。

「――美味い……ちゃんと塩が効いてるけど、歯ごたえと甘みがあって」

「ははは、そうだろう。漬物って奥が深いんだよ。キャベツどころか、西瓜やさくらんぼだって漬物になるんだから」

「そんなのも漬物に? へえ、知らなかったです」

 そんな話をしていると、料理の支度を終えたお婆さんもやってきて、お爺さんと初春の間に座った。

「さあ、どうぞ召し上がれ」

 お婆さんに促され、初春は再び箸を手に取る。

 普段野菜を食べない初春にとって、その料理は新鮮そのものだった。

 掻き揚げはエンドウ豆が本当に甘く、ニラ玉はニラも卵も味が非常に濃厚で、ほとんど食べたことのない味だったから、初春は食べながら驚くことの連続だった。

 蓮根のきんぴらは特に初春の気に入り、あっという間に茶碗のご飯を食べ尽くす。

「あらあら、おかわりよそいましょうか?」

 お婆さんが手を出して、初春に茶碗を促した。

「え……」

 タダ飯と、食べたことのない料理に浮かれ、初春はそこで、遠慮なしに食べてしまったことに気が付いた。

「あ、いえ、ご馳走になっている身で……」

「はっはっは!」

 そんな様子を見て、お爺さんが声を上げた。

「その食べっぷり、気に入ったよ。野菜をちゃんと好きみたいで安心した。この仕事も、やっぱり好きじゃなきゃ続けられない仕事だからね。紅葉が推薦するから、信用するつもりではいたが、真面目そうだし、君とならうまく働けそうだ」

「……」

「よし、明日はいきなりすぎるだろうし、3日くらい睡眠サイクル直す時間をあげるから、4日後にでも働きにおいで。紅葉の話だと、9時からレストランで働いているらしいから、仕事時間は4時から8時まで。ついでに朝食もつけてやろう」

「え、いいんですか?」

 どんなに給料が安くても、食事が付けば初春にとっては大きい。

「紅葉とココロに揃って推薦された子だからな。サービスだよ」

「……」

「どうした?」

「――いえ、その言い方が、秋葉そっくりだな、と思って。それと、あまりそういうことをしてもらった経験がなくて」

 初春は柄にもなく戸惑った。

 こうして誰かと一緒に取る食事や、あまり食べない食事。

 何より初対面の相手にこうしてすぐに受け入れられるという経験が初春にはなくて。

 妙に上手い話めいている現状に戸惑った。

「あ、ありがとうございます」

 初春は思わず頭を下げた。

 頭を下げながら、ほっとした。

 この町で何とかやっていけそうな目処がまた立ったことに。

 顔を上げた初春が思わず今の振り子時計を目にすると、6時半を過ぎていた。

「うわ、こんな時間か」

「ああ、そういえば図書館に行くと言ってたね」

「申し訳ありません。これでお暇させていただいても……」

「気にしなくていいですよぉ、あ、ちょっと待っていてください」

 そう言ってお婆さんは一度台所に引っ込むと、タッパーを持って出てきた。

「蓮根のきんぴらとお漬物、少しだけどお土産にどうぞ」

「いいんですか?」

「ええ、美味しそうに食べてたしねぇ」

「すみません、ありがとうございます。4日後の朝4時に、こちらにまた伺います」

「待ってるぞ。頑張ってくれよ」

「はい、失礼します」

 初春は深く頭を下げて、家の玄関を出た。

 自転車にまたがり、初春はすっかり暗くなった農道を走る。

 でこぼこした農道を走ると、自転車のかごに入れたお土産のタッパーががたがた揺れた。

「……」

 そう言えば、誰かにお土産を貰ったことなんてのも、生まれて初めてかもしれないな……



 図書館のある通りに自転車が近づいた時、図書館の建物から電気がいつもより見えなかったので、あ、これはまずい、と思った。

 図書館の前に辿り着いた時に、既に入り口の電気が落とされているのを見て、初春はがっかりした。

「あらら――間に合わなかったか……」

 初春はがっくり肩を落とした。

 しかし、諦めて帰ろうと自転車のハンドルを握り直した初春は、図書館の前の、もう閉鎖された扉の前に、人影がいるのに気付いた。

 それは、柳雪菜のものだった。秋葉紅葉と同じ、真新しい紺のブレザーを着て、ピカピカの黒い鞄を持っていた。

「あれ、柳?」

「神子柴くん――今日は来ないのかと思いました……」

 雪菜は、初春の顔を見て、ほっと一息ついた。

「何だ――柳がここにいるってことは、さっき閉まったばかりなのか」

「は、はい……」

 雪菜は遠慮がちに頷いた。

 本当は、毎日来ている神子柴くんが急に今日来なかったので、どうしたのかと思って、用があるから遅れているのかと思って、少し待っていたのだけれど。

 でも、そんなこと言えないし……

「もうちょっと急げばよかったかな……」

「だ、大丈夫ですよ、この図書館、貸出管理がゆるいので、一日くらいなら……」

「そうなんだが、基本的にルールを破るのはそんなに好きじゃなくてな」

 人間に対し、自分は悪くないと確信して人間嫌いを名乗りたい矜持を持つ初春は、基本的にはルールには従順な性格であった。

「……」

 真面目だなぁ。

 短めに揃えた髪と、ジャケットの首下や、袖の隙間からのぞく筋張った腕、無口で切れ長の目は、少し怖そうに見えなくもないけれど。

 本人が自虐するほど真面目で、物静かで。

 学校の同級生の騒がしいノリについていけず、友達のいない雪菜も、初春とは居心地がよかった。

「――折角だ。一緒に帰るか?」

 初春はそう言った。

「は、はい」

 初春のその言葉に、雪菜は遠慮がちに頷いたけど。

 最近、自分は毎日、その言葉を神子柴くんが言ってくれるのを待っているような気がする。

 この図書館で、そんなことを自分に言ってくれる人がいることが、何だかとても嬉しくて。

 ほんの少しの、二人で帰る帰り道に話すようなことが、ずっと憧れだったから。

 でも、私は神子柴くんの前で、その嬉しさを顔に出すのがすごく恥ずかしくて。

 それを隠すのに必死で、いつもほとんど、帰り道のことを覚えていられないんだけど。



 初春は自転車を降りて、それを押し、雪菜の歩幅に合わせて歩く。

「……」

 雪菜は初春の横顔をうかがう。

 そういえば神子柴くん、高校の制服を着ているのを見たことがないな――体も鍛えているみたいだし、部活とかやってるのかな。

 ――同じ学校に、通ってたりしないのかな……

 雪菜は初春の何でも屋のことと、本の趣味を少し知っているだけで初春のことをまだよく知らなかった。

「きょ、今日こんなに遅かったのって、何でも屋さんの準備――ですか?」

 何か会話をしようと雪菜が口を開いた。

「ん?」

「……」

 うわぁ、私の馬鹿……別に約束して会ってるわけでもないのに、何か図々しすぎだよぉ。

「――まあ、遠からずってところなんだがな」

 初春は答えた。

「柳のおかげで、もうすぐ何でも屋が開業できそうなところまでは来たよ」

「そ、そうですか……」

 雪菜はそう答えて、ほっと胸を撫で下ろした。

 よかった――変に思われてないみたいだ……

「……」

 しかし、初春は、しばらく雪菜の顔を覗き込んでいた。

「!」

 初春の視線に気付いた雪菜はびくっと後ずさる。

「柳ってさ――絵が上手そうだよな」

「え?」

 不意に初春は、文科系の雪菜に、今何でも屋が抱える最大の問題の解決に期待し、現状の問題点を話し出した。

 雪菜は、初春の言葉に拍子抜けする。

「イラスト――」

「あぁ、俺、絵だけはまったくダメでさ。宣伝を始めるにあたって、そういうの描いてくれる人を探してるんだよ。有料でもいいから。描くテーマは名前にちなむから、もうちょっと後の話だけどな」

「……」

 神子柴くんは、連日図書館で本をあさって、何でも屋の開業のために勉強をしていたことを、雪菜は知っていた。

 そんな初春の頑張りを見てきた雪菜は、自分を頼った初春のために、何かしてあげたかった。

「――わ、私よりも、もっと上手な人に、心当たり、あります……」

「本当か?」

「で、でも、描いてくれるかどうかは分かりませんけど……」

「頼む、聞いてみてくれないか? 謝礼は少しだけど払うって伝えてくれ」

「は、はい……」

「よぉし、これで問題が解決したか?」

 初春は雪菜の頷きを見て、小さく拳を握り締めた。

「……」

 ど、どうしよう……安請合いしちゃったぁ。

 でも、神子柴くんは本当に助かったって顔してるし……

「……」

 でも、こんなに頑張っている人が、自分を頼りにしてくれたのは、何だか嬉しい。

 文化祭とか、体育祭とか、いつも自分の意見を言えなくて、数合わせをするだけで、自分の仕事なんてなかった私なのに。

 だから――初めてこういう時に役に立てそうだから。

 頑張りたい。

「しかし、柳には随分助けてもらってるよな」

 初春は言った。

「柳なら、何でも屋が出来た時、依頼があるなら最初に格安で依頼を請けてやらなきゃな」

「え?」

「まあ、得意なことは失せ物探しなんだが……依頼だったら何でもいいよ。今は仕事を選べないしな」

「――格安なんですね、無料じゃなくて」

「俺、ボランティアって嫌いなんだよ。ある程度打算がある方が信用できるってこともあるだろ」

「――ちょっと分かります、それ」

「そうか? 俺は俗物だからな。むしろ打算なしで近づいてくる奴の方が気味悪い。打算があっても、それがないように取り繕うような奴はもっと嫌いだがね。推薦や就活考えてボランティアやってる奴とか、吐き気がする」

「……」

 酷いことを言っているようだけど、妙に私は納得して聞き入ってしまうのは。

 きっと――彼も私と同じ、本質的に人間が苦手なんだろうな。

 だから――神子柴くんといるとほっとする。

 目の前にいる他人が打算を持っているか、本当の善意なのか分からないこと。

 その前に立ち、自分も腹の中を見せずに愛想笑いを浮かべたり、ノリを合わせたり……

 その苦しさを分かっているという点で、私達は同じだから。

 それを知っているから、神子柴くんは先に自分の腹の中を明かしてくれる。

 その苦しさを知っている、分かってくれるということが、すごく安心する……

「依頼――じゃあ、困った時に、神子柴くんにお願いします」

「ああ、よし、見込み客も出来たな」

 初春は、雪菜のおかげで、また何でも屋の一歩前進の手応えを得た。


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