水は方円の器に随う
「――知り合いを人気者に?」
「ああ、平たく言うとそうしなきゃいけなくてな」
初春と少女は、お互いに本を借りると、もう夜も更けた神庭町の農道を二人歩いている。初春は自転車を押し、本を入れた鞄を自転車のかごに入れた。
今日は満月の翌日だから、月の光が強く、星の光は少し消されているが、相変わらず、街路灯も少ない道からは、神庭町の夜空は群青色に見えるほど、幻想的な光の斑が出来上がっていた。
「それで、とりあえずそいつを中心に、何でも屋をやってみようと思って。人気が出るためには、どうしたらなれるのか、どんなものなのかを調べていたんだ」
「何でも屋、ですか……」
初春も最初は、自分と同世代の少女に恥ずかしい勘違いをされたことに気持ち悪さを感じ、つい食い下がるように誤解を解こうと、少女にいつの間にか自分の話をしてしまった。
だが、そのうちに、この少女が、この『何でも屋』の計画を聞いてどういう反応を見せるのかに興味が出てきた。俺もこれから、不本意ではあるが、人間相手に何らかのディスカッションをすることも増えるだろう。成功すれば営業活動になるし、胡散臭がられれば、計画を修正することも考えなければならない、という思いで、彼女と話していた。
そして、少女は……
今まで表情も険しくて、とっつきにくい印象だった男の子が、さっきみたいなことにムキになったりするのが、妙におかしくて、人見知りの少女も、力が程よく抜けた。
そして、この人が別に、女の子にもてようと思って、あの本を借りたわけではないということは、何となく少女は理解した。それほど初春の弁解の仕方が真に迫っていたし、少女が初春に本を返した時、初春はしばらく少女の反応の意味を理解できていなかった。それは別に隠そうとはしていなかったということ。
「そういうわけで、君がしたような想像のようなことは一切ないんだ。いいね」
「はい……ふふふ」
少女は思わずまた笑ってしまった。よっぽど恥ずかしかったんだな、という反応が正直で、他人との駆け引きが苦手な少女は、その正直さにほっとしてしまう。
「でも——お友達と、何でも屋ですか……何だか小説みたいですね」
少女は言った。
自分と同い年くらいの子が、商売を始めるなんて、何だか楽しそうだな、と、ちょっと思った。
「お友達のためにそんなにしてくれるなんて、そのお友達はすごく喜ぶでしょうね」
同時に、少女は羨ましかったのだ。
本ばかりに夢中で、人と話すのが苦手で、元来友達のいない少女にとって、知り合いのためにあんなに熱中して調べものをしてくれる目の前の少年や、まだ見ぬその相手のような関係は、何だか自分とは対岸のもののように思えた。
「――厳密に言うと、友達ってのとはちょっと違うんだけどな」
自分に合わせて歩幅を小さく取っている初春は、歩きながら言った。
「え?」
「ただ、何て言うか――見てると放っておけない奴なんで」
「……」
それを『友達』と言うのではないのか――そんな言葉が喉から出かかったけれど。
少女に友達はいない――それを思うと、声が出なかった。
「……」
いいなぁ、この人にはそういう人がいるんだ。
こんなに一生懸命になって、相手を人気者にしようとしているのだから、何か役に立ってあげたいな……
そんな思いが、少女の胸を突いた。
「――何か、手がかりは見つかったんですか?」
「――いや、情報をまとめて、手がかりになりそうなものをこれから継ぎ合わせていくような段階だな。帰ってもう一度本に目を通すようだ」
初春は自分の押している自転車のかごに入った、本の入った鞄を見て、気だるげに言った。
「――宣伝をするなら――最初は、やっぱり名前ですよね」
少女が言った。
「名前?」
「あ、あの――小説とかだと、グループとか組織ができると、最初は名前をつけるじゃないですか。ただの『何でも屋』よりも、個別の名前を覚えてもらえる方が、アピールや差別化もしやすいですし……」
「――名前、か……」
音々を売り出す、ということばかり考えていたから、あまり考えていなかったが……
俺自身は、あいつの姿が見えているから『音々』でいい。
でも、あいつの姿の見えない他の人間に、音々を認知させるには――『音々』という、あいつ本人の名前じゃない、もっと存在を具体化したシンボル的なものの名前が必要だ。
一番大事なことを見逃していた。自分達がやろうとしているのは『ビジネス』であり、『起業』なのだ。あまりにも小規模なのでその発想が抜けていた。
「そうか、組織に名前をつけるか――確かにうっかりしてたな……」
初春は頷いた。
「あと――人気って言うと、マスコットキャラクターとかいると、覚えやすいですよね」
「マスコット?」
「そういうキャラクターとかが可愛いと、気になっちゃいますよね。女の子とか子供って、可愛いものが好きですし……覚えやすいし、つい頼んでみたくなっちゃいますよね」
「……」
可愛いもの――女子の言う『可愛い』というのは基準が分からず信用のならないものではあるが……
「ふむ……」
初春にとっては、目から鱗である。確かにどちらも有用性の高い視点ではある。
「うん――いいぞいいぞ。アドバイス、ありがとな、すげぇ参考になったよ。なんかこれからの取っ掛かりが少し見えた気がする」
初春は、少し張りの出た声で、少女に礼を言った。
「――え?」
少女は驚いた。
割といっぱいいっぱいで、あてずっぽうなことを言っただけだったんだけど――
「そ、そうですか?」
「ああ。それって本の知識か?」
「そ、そう――ですね。結構中世の傭兵団とか、公益商とか出てくる物語だと、やっぱり紋章とかを作ったりして、それに誓いを立てるシーンとか多いし――司法の象徴に天秤を使ったり。幕末ものとか読むと、沢山そういう、ちょっと派手な名前の組織ができますよね」
「あぁ――海援隊とか、土佐勤王党とか、九十九商会とかか」
「そうです、この前読んだ上杉鷹山が主人公の小説は……」
「上杉鷹山――コアなとこ攻めてるな」
「あ……」
つい本の話を夢中でしようとしかけていたことに、少女ははっとなる。
「ご、ごめんなさい、つまんない話をしてしまって……」
「いや、いいって。そんな面白い本だったら、暇だし、貸してほしいくらいだ」
初春は元々親からほとんど小遣いをもらえなかった。テレビゲームや流行のおもちゃも買ってもらえず、同級生と思い出や楽しみを共有することが、小さい頃からできなかった。
だから休みの日は、大体図書館や古本屋の立ち読みに行った。テレビを見る以外、初春の知っている数少ない娯楽が本だった。初春も少女ほどではないが、本は好きであった。
「ほ、本当ですか……」
「ああ、時間は腐るほどあるからな……新学期始まっても、図書館に来るなら、俺にお勧めの本を教えてくれ」
「う、うん、多分――学校が始まっても、多分来ると思います……」
「そうか、じゃあもし暇なら、何か『何でも屋』についても、アドバイスなんかくれないか。もう少し煮詰めたら、また意見を聞かせてもらえるとありがたいんだが」
「え……」
少女は戸惑った。
そこまで話すと、二人は神庭町の駅前の道に出てくる。バイトしていたファミレスの看板もライトアップされて見えてくる。駐車場の車の量と、ディナーに入っているクルーの力量を計算すると、店長をはじめとして、地獄のようにやられているだろうと想像する。
「あ、俺、夕食の買出しにスーパーに行かなきゃ。じゃあ、またな。参考になる視点、ありがとな」
初春は少女に頭を下げる。
「俺、神子柴初春。君は?」
「や、柳――柳雪菜です……」
「柳か――よし、覚えた」
初春はそう言うと、自転車にまたがって、雪菜に一礼すると、駅前のスーパーの方へと自転車を走らせて行ってしまった。
「……」
雪菜は、しばらく初春のそんな後ろ姿を見送っていたが。
「はぁぁぁ……」
雪菜は、腹のそこから大きなため息をつくと、膝から崩れ落ちそうになるのを必死にこらえて、駅前のロータリーのベンチに崩れ落ちた。
「……」
家族以外で、こんなに誰かと話したの、初めてだったよ……
緊張したぁ――しかも同世代の男の子だったし。
「……」
でも――久し振りに誰かに「ありがとう」なんて言われたな……学校じゃ、どうでもいい人扱いされてた私なのに。
頼りにされたのも、生まれて初めてだったかも……また話しかけてくれるって約束があるって――何だか変な感じ。
「――神子柴くん、か……なんか、思ったよりも子供っぽい人だったな……」
雪菜はふふっと笑った。
「何でも屋――あれだけ真剣に考えてるなら、上手くいくといいな……」
「うーん……」
家に帰り、夕食を簡単に摂ると、初春は今のちゃぶ台の前に座って、借りてきた本を開いて首をひねった。
酒をもらってすぐだからか、家には今日も比翼をはじめ、一つ目やら、のっぺりとしたふんどし一丁の大男やら、沢山の神や妖怪崩れが紫龍をたずねていた。
「あの小僧、昨日ぶっ倒れたと思ったら、今日はけろっとしておるな」
「今日はもう音々殿の協力か」
供え物もない、名前の売れていない神々にとっては、神の見習い以前の場所にいる音々を神にするために協力する人間なんていうのは、眺めている分には最高の暇潰しである。昨日の紫龍との手合わせを見て、そんな人間がいるという噂も、近隣の彼岸の者達に広まりだし、見物に来る者も増え始めており、今日も居間や縁側に10人ばかり、図体のでかい馬やら牛の妖怪が庭からそれを見ていた。
初春が頭を悩ませているのは、自分達のやろうとする『何でも屋』の細部の明確化である。
宣伝をする上で、今日図書館で漁った知識と、柳雪菜からのアドバイスを統合すると。
もう少し、自分達の存在とサービスを、明確に、透明にする必要があるという点に、初春は行き着いた。
「どうなんだい? 今日の首尾は」
面白がって見物している比翼が訊いた。
「――やっぱり音々の力は重要だ。まずはどんな形であれ、あいつの力を依頼してきた客に体験させなきゃいけない――そのためには、もう少し依頼しやすいやり方で伝えないと……そういうシステムを作らないといけないな」
「そうだねぇ。それに、その娘の意志を仕事に介在させなきゃいけないよ。現代の人間は、見えざるものの存在を信じないからねぇ」
「それに関しては、今日ヒントをもらってきた」
初春は言った。
「何でも屋を企業に見立てて、音々にちなんだ名前をつければ、音々の存在を認識させられると思うんだ。大きな枠組みの中に、音々自身を組み込めば、全体の評価の中に、音々に対する感謝も集まると思うんだ」
周りにいる神や妖怪も、首を傾げる。
「なるほど――要するに、会社をお社や祠のようなものとして取り扱う――ということだね。確かに、信仰の拠り所になるものがあれば、そこに向けられた徳は、神に還元されるね。考えたね、坊や」
比翼は頷いた。
「わ、私にそんなもの、大丈夫なんでしょうか?」
自分がお社に代わるものを持てるということに、音々自身はあまりにスケールの大きな話にうろたえた。
「まあ、作ったってそれだけじゃ、有象無象に過ぎない――何せ人手がないからな。これからお前にも、何か働いてもらわないといけないな……」
「――すみません、ハル様……」
「いや、それでもお前の能力ってのは、要であることは変わりないんだ。あとは仕組みの問題だな……」
「……」
考えを巡らせる初春に、音々は申し訳なさを募らせる。
私、まだ何もできてない……
でも、何もしないままじゃ駄目――ハル様と一緒に、考えるお手伝いをしなきゃ。
「ハル様、お茶を淹れますね。そうしたら、私にも本を読ませてください」
音々は何か初春のためにしようと考え、キッチンに向かった。湯を沸かし、湯飲みと急須を持って、初春の前に湯飲みを置く。
「ああ、ありがとう」
初春は本から目を離して、湯飲みに手を伸ばした。
「――ん?」
初春はその味に首を傾げる。
「これ――ただのお湯?」
「え――わあっ! お茶の葉を入れるのを忘れてました!」
「おいおい……」
「す、すみません! すぐにお茶を入れてお持ちします!」
「おい、落ち着けって」
初春が慌てる音々をなだめようとするが。
「わあっ!」
慌ててまた小紋の裾を自分で踏んづけて、音々はまた前のめりにべちゃりと転んだ。
「いたたた……」
「……」
初春は思った。
まったく――絵に書いたような慌て者だな。
「……」
でも、ちょっと可愛い――かな。
こいつ自身を売り出せれば、本当に男が客になってくれそうだけど……
「……」
そんなことを思いながら初春は立ち上がって、音々に手を伸ばす。
「神様が人間なんかにお茶なんか入れなくていいって。お前は自分のことをとりあえず考えろ」
「……」
音々はその手を取る。竹刀ダコができたその指は、ごつごつしていた。
「――ん?」
初春は、その音々の手に触れた時に、ふっと思った。
「――お前、この家の中でなら、この世界のものに触ることができるんだな」
「え? は、はい」
「だけど、この家の中にいても、他の人間には、お前やおっさん達の姿は見えない……」
「そうですね。この家に長くいることで、霊感が強くなって見える方もいますが……」
「お前が特別なんじゃ。人間という生き物である自覚がないから、お前はこっちの世界に迷いやすい――存在がぶれておるのじゃよ、お前は」
居間で酒を飲む紫龍が言った。
「……」
初春はふっと思い立ち、立ち上がり、自分の部屋に行って、預金通帳を取り出した。
初春の口座には、両親親族から支払われた手切れ金が最初に入金されており、それ以降は何の仕送りも受けていない。元々の啖呵で、手切れ金の額も大して多いものではないが、初春は無駄遣いを避けていたし、引越しにお金がかからなかったので、まだ数十万の貯金があった。
「ちょっと痛いが……まあいいか……無駄になるものじゃないし」
初春は居間に戻る。
「音々。お前の待機中の仕事が決まったぞ」
「え?」
「お前が最初はお客との窓口になるんだ。この家で、パソコンを使って」
「ぱ、ぱそこん?」
「メールを使ってお客さんとやり取りしたり、ネットを使って宣伝をしたり――そういうこともできれば嬉しいんだが」
「は、ハル様。私、『ぱそこん』とか『めえる』とは何なのかも、よく分からなくて……」
申し訳なさそうに音々が言った。
「……」
初春は反省した。そういえばこいつ、プリンも何なのか知らなかったもんな……パソコンはハードルが高いか?
「そうか――電話の方が簡単かな……でも、俺は未青年だから、新しい携帯電話や固定電話の契約は一人じゃできないし……」
初春は少し悩んでいたが、しばらくして、音々に自分の携帯電話を差し出した。
「その前に、ちょっと実験してみよう。俺が外で電話をかけてみるから、音が鳴ったらこの電話に出てくれ。お前が電話を取り次げるか、試してみる」
そう言って、初春は家を出て、自転車に乗り、坂を下って、駅前にあったと記憶していた公衆電話に向かっていった。
「は、ハル様――わ、私こういう現代の電話って、使ったことなくて……」
音々はこの家をほとんど出たことがなく、見た目は若いのだが、さながら浦島太郎のような存在である。当然機械音痴であった。
「ど、どうやって電話に出れば……」
音々が電話を持ってしどろもどろしている時。
突然携帯から音楽が流れ出し、音々の体がびくりとなった。
「わあっ!」
音々は電話を手に取った。
「どどど、どうすれば……」
「?」
しかし、紫龍と比翼は首を傾げた。
まだ初春が家を出てから、2、3分しか経っていない。このタイミングで駅前の公衆電話に辿り着いて、電話をかけてくるには、ちょっと早すぎる。
「ちょっとそれ、誰からかかってきたか確かめた方がいいんじゃないのかい?」
比翼がそう言ったが。
「ひ、比翼様、確かめるって……」
その言葉の意味が分からない音々はうろたえる。
――ピッ。
そして、音々はわけが分からないうちに、電話の通話ボタンと、スピーカーボタンを押してしまうのだった。
「あ……」
音々は、ぱっと電話から手を離す。
『――ハル? やっと電話に出てくれたの?』
スピーカーから、部屋に年の若い女の子の声が聞こえてくる。
「え? ハル様じゃない……」
『ハルのバカ! 心配したんだから! 何度かけても電話に出ないし! ナオだって、ずっと心配して……』
「……」
だが、そこまで言うと電話の先の声も途切れる。ずっと相手の反応がないことを、相手も不審に思ったのだろう。
『ねえハル、何で黙ってるの? 今、どこにいるの? 何をしているの?』
電話の主の声は、徐々に震えを帯びる。
『ねえハル、お願い――答えて……』
その言葉を振り絞ると、電話の主が泣いているのが、電話越しの音々達にもはっきりと分かるのだった。
「……」
その消え入るようなか細い声の泣き声を聞いて、音々は放り捨てた電話を手に取った。
「結衣様!」
「お、おい!」
紫龍がぎょっとした。
「ハル様は、素晴らしい方です! あなたの幼馴染として、きっと誇りになれるお方です! だから、ずっと待っていてあげてください!」
『……』
電話の先の相手は、泣くだけで何も反応しない。
「結衣様!」
音々も電話の先で声を出すが。
言いかけたところで、後ろにいた比翼が電話を取り上げて、通話終了ボタンを押した。
「これ以上は駄目。相手の子にはあんたの声は聞こえていないけれどね」
比翼は今までの温和な感じを幾分消し、戒めるように音々に言った。
「あんたは嫌でもアヤカシからそういう秘密も聞こえちゃうのかもしれないけど――あんまり相手の事情をのぞいちゃ駄目だよ」
「――す、すみません……」
折節、再び比翼の持っていた電話が鳴った。比翼は着信画面を見ると、『公衆電話』と書かれていた。
「ほら、今度は坊やだよ」
比翼は通話ボタンを押して、音々に差し出した。
「もしもし」
『もしもし、音々か? お前、電話には出られるんだな』
初春の声がした。
「――ハル様」
『ん? 電話だと、機械を通すからか、聞き取りにくいな……お前の声が、一応聞こえることは聞こえるんだが……他の人間にも、これなら聞こえるのかな』
「――いえ、私の声は、他の人間には、電話でも聞こえないです」
『ん? 何でお前がそれがわかるんだ? ――まあいいや、どちらにしても、お前が電話で客と直接やり取りできるかと思ってやった実験だが――俺相手にこの音質じゃ厳しいな。分かった、すぐに帰る』
「――ハル様」
『ん?』
「――すみません」
音々は、電話越しに、初春に深く頭を下げた。
『――変な奴』
そう言ったのがかすかに聞こえると、初春は電話を切った。
「……」
「――坊や、今でも昔の仲間からの連絡を無視してるってのかい」
比翼が言った。
「いいか悪いかは今の時点では分からんが、前向きになるために、過去を振り返らないという意思表明じゃろうな」
「……」
「まあ、時間が経てば、収まるところに収まるものじゃ。水は方円の器に随う――あいつの本質は、水や風の如く――流れた先に収まるものじゃ。そこに関しては、今はそっとしておいてやれ」




