003.5 少女の苦悩
非常に短いですが、少し補完したかった部分です。
ダマは頭痛から来る吐き気を抑えることが出来なかった。〈森羅変転〉から今日まで徐々に体調が悪くなって来ているのが判る。それ体調の変化は頭痛となって知らせてくれる。厠から出たダマは気休めになればと、自分自身に〈キュア〉を唱える。
部屋に戻ったダマは散らばった本を避けてベットに倒れ込む。この頭痛の為に旅の出発を延期させてしまっている。それはとても申し訳ないことだ。しかし、彼女は体調の悪化を仲間達に伝えていない。伝えればきっと、優しい彼らはダマを休ませるだろう。それは避けたかった。自身の体調の悪化は酷くなる一方だし、いずれ時間切れが来てしまうのでは無いかと云う不安がある為だ。
頭痛は慢性的なものであったが、そんな中にも波はあった。一度収まれば暫くは耐えられた。〈フシミの村〉へ出発した時も、波が引いた時だった。
ダマは〈フシミイナリ〉で見付けたクリスタルを思い出す。あれを見た瞬間はかなり危険だった。頭痛の波が押し寄せ、波の流れに委ねて楽になれと云われているようだった。恐らく、この頭痛は抵抗の証しなのだ。流されることへの抵抗、より強い本流へ合流しようとする無意識への抵抗。
あのクリスタルから感じたのはエーテルの吸収だ。そんなものは見たことが無かったが、元々引きこもりである、知らないことの方がきっと多い。エーテルとは魂に類義であると考えている。エーテルを吸収する物体の前で死亡するとどうなるのか、〈落魄〉した魂はその力に引かれて行くのでは無いか。蓄積されたエーテルを肉体へ強制的に還元出来たとしたら、それは甦生となるのか。
ダマは思い付く疑念をメモに書き記していく。
(うち、情けないなぁ……ソードんはんもミオぴーはんも、アイネはんも巻き込んどんのに、自分が足ひっぱてるわ)
ジュリを含めて〈ストームマウンテン〉にいる〈大地人〉は、具合を悪そうにはしていない。やはり自分の特異性のせいなのだろうと思う。そのことに関して兄に恨み言なんて無い。彼は精一杯やってくれたし、自分はこうして生きている。感謝を伝えたいし、安心させてやりたい。いつか〈ミラルレイク〉の同胞達にも挨拶に行きたいものだ。そんな風に考え、彼女は微睡む。いつかきっと、感謝を伝えるために。