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食事
「終点ですよ、お客さん」
駅員に肩を揺すられ、僕は起きた。
「あ、はい」
気のない返事をし、前かがみで立ち上がる。
改札窓口にいる駅員に切符を失くした旨を伝え、小銭を渡す。駅から出ると、雨が少し降っていた。タクシーの光が眩しくて不快だ。駆け足で僕の前を通り過ぎる学生の残り香はもっと不快だ。
少し雨に濡れたまま、僕は駅前のチェーン店のカレー屋に入っていった。そしてあの夢から生きて帰ってこれたお祝いに、カツカレーの大盛りを注文した。酷く腹が減っていた。
「ごちそうさま」
食事が終わり、そそくさと店を出た。雨はもう止んでいた。僕の気分はここ半年で一番良かった。
iPodで音楽を聴き、ハミングをしながら家までの二十分を歩く。僕はその間、いつになく自分の将来をポジティブに考えられた。一瞬、夢の中で助けた女の子の表情が頭を過った。ハミングは少しだけ止まったが、またすぐに再開した。