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 遠くのほうに駅が見えてきた。とてもみすぼらしい駅。みすぼらしい駅って好きだな。近くにガンディーさんみたいな人が座っていたら、もっといいんだろうな。

 改札機に初乗り運賃140円を入れる。空になったペットボトルをホームにあったゴミ箱へと投げ込む。

 電車が来るまでまだ時間がある。僕は欠伸を一つし、ベンチに座り、再び空を見上げる。空は見る度新しい発見がある。なんだか今日は、いつになく雲の輪郭がはっきりして見える。僕の気分は相変わらずぼんやりとしているのに。でも将来が見えない二十一の夏なんて、誰でもそんなものだろう。同世代の人と最近会話をしていないので、実際のところは分からないが。


 空を見ていると、時間を忘れる。火を見てもそうだ。水はどうだろう? 

 そんなことを考えていると、遠くのほうからしつこいぐらいのオレンジ色をした電車が山々をくぐり抜け、大きな音とともにやってきた。そうだ、これから僕は街へ帰るのだ。ここでは暗くなると電車の本数が本当に少なくなってしまう。終電も驚くほど早い。だからなるべく早い時間に帰りたかったのだ。それに僕がここに来た理由は、全く何もない。

 時計は午後三時十分前を指していた。うなだれた体制のままベンチから立ち上がると、熱気で曇ってしまった眼鏡をYシャツの袖で拭きながら、電車の中へと入っていった。電車の中は涼しく、そして空いていた。平日のこんな時間なのだ。僕は眼鏡をYシャツの胸ポケットに入れると、一番端の席に座り、目を瞑った。

 酷い疲労感を感じた。このまま起きなければいいのに、とほんの少しだけ思った。しかし、すぐにその考えは空腹感に支配され、どうでもよくなった。カツカレーが食べたかった。

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