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登場人物が増えました。
技1を繰り出しました。
吾平はレベルアップしました。
目前に聳え立つ学校施設。アカデミアは鉄壁の軍事要塞ルーザリカの敷地に隣接する。そしてその門はサリファンダが入り込むことのないよう、特別製の結界扉によって守られている。しかし現在、その門は警備も敷かれずただ開け放たれていた。
閑散とした空気が本来雑然としているはずの学校という空間に取り込まれてゆくのを吾平は不吉に思ったがその判断を下すにはアカデミアに身を置いていたわけではない吾平が言えることではない。これが、“普通”なのだろう。深く考える事もせず、吾平は目的の塔への扉を押し開こうと、手をついた。
瞬間。扉に、切れ目が入った。
(っ頭竜刀!)
重厚な鉄扉がズレた。それの内側から飛んでくる剣戟に一瞬で現象化した剣で防ぐ。
しかし、体勢を立て直す前に追撃が来る。
「あ。待って」
誰かが場違いに声を漏らす。
「遅ぇ!!」
ぎりぎり間に合った双剣で受け止めるも、攻撃が重く、そのまま後ろに吹っ飛ぶ。
「っは」
息が大量に零れ、門へと叩きつけられた身体はそのまま硬く凍った雪に落ちる。
「卑怯者にはお似合いだよなぁ?逃げ帰るなんて、それでも武道家の端くれかってんだ」
近寄る足音と言葉を聞き、いや耳に入れながらも実際には聞いていなかった。
両の手に持つ剣を雪に突きたて、身体を支える。どうやら、攻撃は力任せ。鋭さの欠片もない、ただの暴力。そんなものに崩れる俺ではない。ただ、勝つことだけに専念する。
(姶良の身体に、傷をつけたからな)
ちら、と視線を落とした場所、コートの下に押し込められた胸元は素肌との間に潜むシャツさえも寸断し肌に薄っすら赤く線が浮ばせていた。ぱっくりと開く服の隙間から冷たい風が肌を撫でゆく。
「あ?おめぇ――」
「ただでやられているほど、俺も甘く――ねぇんだよっ!」
吾平に続き、胸元へと落ちてきた視線に不快を感じて剣を向ける。
「っと……大した根性じゃねえか。殺すのがもったいねぇな」
臨戦態勢だった男に対し、受身だった吾平も殺気を向けた。またしても戦闘開始かと思われたその時、穏やかな、暢気とも呼べる声が間に入ってくる。
「あーあ、やっちゃった」
「……んだよ」
あいたたた、という困った視線を向けるのは先ほども制止の声を上げた人物だ。
吾平と男の間に、それも吾平に背を向けるという無防備な形で割り込んでくるのに不快なまでも気が抜けた。
吾平のいう「姶良」とは……?
これは変換間違いではなく、伏線です!ここでおもいっきし主張してますけど。