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「今回の件、中毒者が裏で手を引いている可能性が高い」
中毒者――吾平たちの末路だ。ファラカイナの能力を最大限引き出すために人を捨てた者たちであり、また自らがサリファンダとなった人に仇なす存在。悪魔の囁きに身を委ねた者たち。彼らの存在を、シグマは肯定した。
今回の件、とは吾平たち第11隊が新たに受け持った任務のことだった。街中に出現を繰り返し、“街”を破壊する。人も襲われる。それが同一犯だと判明したのは目撃証言からだった。曰く、人々にとある質問をしてゆく青年がいる。その後、襲われた。
サリファンダが青年を追っているのか、青年が用の無くなった場所にサリファンダを解き放っているのか。どちらにしても、指導者のような存在は背後にいると見ていい。
パサッと資料が鳴った。龍城が興味薄く、机に放り出した音だ。各隊に与えられた会議用個室の狭い空間に響いた。
「今の僕らの手に負える相手じゃない」
(確かに、出現範囲は広く、期間もそれぞれ短い)
前例は幾つもあった。ガダン王国内に限った事件だが、それでも王国全体に広がる。王都周辺にいくつかの小都市がある以外は廃村が殆どの国だ、人的被害は少ない。ただ出現場所が広いとなると、予測するにしても候補が多く、うまく敵と対面できるかどうか。
まず、間違いなく人員が足りないというべきだろう。何せ、11隊は隊員数、五人。サリファンダを倒すことには充分な人数であっても、それを各所に割くことは一人一人の戦闘能力が高くても、現実的に不可能な話だ。事前準備をしていたとて、人数の不足はカバーできない事態である。
「だからね、」とシグマが続けた。
「僕の手の回り切らない所までカバーできるような応用力の有る雑よ……伝達役が欲しいんだけど、吾平くんは心当たりある?」
言い直してみても思いっきり“雑用”と口走った事実は変わらないが、それを大っぴらに突っ込む人物はこの場にはいなかった。陰口にもならない、ひそひそ話でもない二人の会話で雑用って言った、とツッコミが入れられていてもそれは突っ込みとして本人に、シグマに届かないからだ。届かない言葉は突っ込みにならず、シグマは周囲を無視して吾平に畳み掛ける。
吾平はといえば、唯一突っ込みの許される立場にいるが、意外なほどの天然ボケをかまし、「シグマが自分にのみ問いかけるのはそれまでの在校生に適合者がいないことから新入生に頼る意図なのか」やら「心当たり――それを予想してわざと俺の口から名を呼ばせようとしているのか」などと小難しく考え思考をねじらせている。
単純に、シグマに突っ込みを入れるような輩以外といえばこの11隊には吾平しかいなかった、というだけなのだが。真面目にボケをかまして思考し続ける吾平に周囲の評価も変わってきた今日この頃だ。
「――なら、」




