終わったあとのはじまりのお話
ラストライフ・オンラインは、かなたという少年がヴェルという人物を倒し終わった。
これはたった5人の人間しか知らない真実だ。
私はその真実を知る一人。
その世界でファランという名前で戦っていた。
本名は神河華菜。
私はLLの世界で大切な人に会い、そして失った。
その人も私を愛してくれていた。
だから、現実で彼女の遺品を貰うために私は今、私の知らない遠い街まで来ている。
彼女、浅川夕凪の現実での住所を知ることはとっても大変だった。
わかっているのは名前と年齢、職業ぐらい。
他の何もかもを無視して、それだけの情報で必死で探し続け、LLが終わって一ヶ月ほどたったころやっとわかった。
今回は既に、夕凪の両親に連絡を取って来ている。
夕凪の友達と言うと是非来てくださいと言ってくれた。
そして、夕凪が住んでいるらしい家のすぐ近くまでついに来た。
その家の玄関には一人の女性がいた。
その人はひとめで夕凪の家族とわかるようなLL世界でのユウに似た人だった。
双子なのかもしれないというぐらいに。
「はじめまして。神河華菜です。」
その相手はじっとこっちを見たまま何も言わない。
「あの…。」
「はじめまして…とかよそよそしすぎない?あっちの世界で色々しちゃった関係じゃないのさー。」
私のよくみたユウのおちょくるようなにやにやした顔だった。
「ユウ?」
「そうだよ!もうファランの部屋用意してあるんだからさっさとあがって!」
そう言われたまま手を引かれ私は家に連れ込まれていった。
わけがわからないほどに幸せだった。
ーーー。
「よう!ヴェル!調子はどうだ?」
「あ。かなた。今、火傷からのショック死が終わったところ。次は…火傷による呼吸困難の窒息死かな…。」
「そうか。ゆっくりなとは言えないけど死ぬほどは頑張るなよ。」
ラストライフ・オンラインは俺とヴェルの戦いで幕を閉じた。
現実に戻った時に知った事なのだが、デスゲームが始まって三日目、井形尋仁の居場所がわかり警察が突入したらしい。
しかし、既に井形は死んでいたそうだ。
自分を電子の情報に変えて。
ヴェルという存在はラストライフ・オンラインという大規模な情報蓄積力を持ったゲームの中に容量を間借りしている電子的な生命体ということになる。
つまり、LLとヴェルは一心同体というわけだ。
そんなわけで法律では井形のことを裁けなくなってしまった。
ヴェルという存在を裁くことができるわけもない。
そんなヴェルが贖罪としてしているのが今の作業だ。
死ぬという情報を与えられた脳に対して新しい情報で上書きし活動を再開させる。
その死のパターンごとの情報が必要なため必死で色んな種類の死の回復プログラムを作っているわけだ。
確か最近やっと半分終わったとか言ってたな。
「あら。かなた遊びにきてたの?」
「まあな。葵との電子デートだよ。」
「氷花さん、お久しぶりです。」
姉さんはそんなヴェルの手伝いをしている。
ほとんどこっちの世界にいてばっかりだ。
時々、現実に帰ってきたかと思うとカメラを持ってどっかに行く。
そして、そのデータをヴェルに送信しているようだ。
今やラストライフ・オンラインというゲームはデスゲームとして世界中の人々が知っている。
安全が確認されてから今は新しくゲームができるようになっているが、あまり多くの人はいない。
それでも、井形尋仁の世界が見たいと言う人は絶えない。
きっと長く続けていれば安心して人が来てくれるに違いない。
そして、この世界の住人として楽しんでくれることだろう。
そうだ。
このゲーム。
ラストライフ・オンライン、LLは名前を変えて、WILLというタイトルになった。
未来や希望を意味して。
これでこの作品は終了です。
ここまでのお付き合いありがとうございました。
まだまだ未熟ですが、昨日より今日と思って進歩できるように努力してきたつもりです。
最初よりは多少ましになったかな…。
ここまで来れたのも読んでくださった方、アドバイスをくださった方、挿絵をかいてくださった方々のおかげです。
ほんとうにありがとうございました。
…でも、これからも続きや番外を書いていきたいような気もする…!