魔女と魔術師
2人目の戦いが始まる。
姉さんと敵の魔術師。
敵は結界を使うタイプだ。
それもかなり強力な。
それがわかっている分、手の内を見せていない姉さんは有利といえる。
「姉さん。大丈夫?他の人に変わってもいいよ?」
「大丈夫。姉さんに任せて見てなさい。」
そう言われては何も言うことはない。
後ろに下がってイオとヴェルの隣に立った。
「氷花さんなら負ける事ないと思うけど、何か不安ね…。」
「見てるしかないからな…。」
「大丈夫だよ。負けるはずないよ。」
ーーー。
「早めに降参してね。私怒ると歯止めがきかなくなるから。」
姉さんは氷のような冷たさでそう伝えた。
「良い女です。標本にしてやろう。」
悪趣味そうだ…。
「我の召還に応えよ!」
投げたカードが吹雪に変わり、黒騎士が出現した。
ある意味、二対一で卑怯な気もするな。
今回の黒騎士も無手だった。
悔しそうにイオの方をちらっと見ている…。
なんか可愛いぞ…。
だが、気を取り直して敵に向けて走り出した。
その目前に結界が表出した。
「ふん!」
と気合一閃ぶん殴りで破壊する。
敵は後ろにステップしながら結界を次々に張る。
それでも、破壊されるスピードの方が速く距離はつまっていっている。
「これでわかったでしょ。勝ち目はないんだから降参しなさい。」
それでも姉さんの言葉の氷は敵の心には届いていない。
「ちょっと待ってなさい。すぐに綺麗なまま標本にしてあげますから。」
気持ち悪い!
そんなことを言う余裕があるのだろうか。
もはや黒騎士を敵を挟む結界は残り一枚だ。
それを知ってか黒騎士の雰囲気も何か笑っているように見える。
目の前の得物をもうすぐ捉える、狩人としての喜びを。
だが、見せる余裕は本物だった。
最後の結界を割った途端に黒騎士の周囲に結界が浮かびあがる。
めんどくさそうにもう一度黒騎士が殴りつけた。
しかし、今回の結界はそれでは割れなかった。
「トラス構造によって固めさせてもらいました。もう何もできませんよ。」
黒騎士が周囲の壁を殴りつけるが効果はない。
上空を見上げるも、三角の構造をつなげたような結界が落ちてきて蓋をされた。
これで黒騎士の支援は期待できない。
「あとはあなたを閉じ込めるだけです。」
無造作に近づいてくる。
まるで、安全と確信しているように。
召還だけが姉さんの武器ではないのに。
「それ以上近づくと排除するわ!」
「何もできないくせに強気ですね。」
姉さんの警告を嘘と判断したように近づく。
その歩みは姉さんに足を氷で地面につなげられるまで止まらなかった。
「どういう…ことです?召還だけでは…」
「私は警告しました。」
足から氷が上へと侵食していく。
そして、口元まで這いよる氷を見て最後に敵は叫んだ。
「騙したな!」
俺達がいる方向へそんな一言を叫んでから氷の彫像となった。
意味がわからない。