転がせ口車
命がけの殺し合いとは言ったが、一方的なものだった。
姿が見えないんだからな。
相手の情報もまったくない。
しいて言うなら敵の使う武器は短剣。
そして…。
痺れる効果が付加されている…。
さっき斬られた時に貰ったのだろう。
遅行性らしく今頃になって足がしびれだした。
「卑怯ですまんな。これが俺達のやり方でな。」
「いいさ。互いに全力で自分らしさを貫くだけだ。」
こうやって挑発することで攻撃を俺に集中させる。
他が巻き込まれると大変だからな。
「それで、勝つ方法はありそうか?」
「模索中だ。」
「そうか。」
その声が再び俺の背中のすぐ傍で響いた。
後ろから飛び出るナイフ。
しかし後ろからとわかっていれば!
軽く左に避ける。
足が麻痺している程度なら十分できる。
そして、突き出されたナイフを腕ごと右脇にかかえる。
さらに左肘を背中側に打ち込む。
捕らえた感触があった。
そして、何も無い空間から一人の男をはじき出させた。
後方に滑って行く。
「こんな方法でどうだろう?」
一度みやぶられてしまえばもう消えることはできない。
そこまでハインディングは最強スキルではない。
「ちっ。」
姿の見えたこいつらなんて数で潰せてしまう。
「なあ、見えてしまった時点で人数で勝ってる俺らに勝ち目があるのか?」
「やれよ。俺だけじゃないんだぜ。」
「そうなんだよなー。そこで提案なんだが一騎打ちにしないか?」
「は?」
「こっちだってさ。戦力削られると次にさしさわりがあるわけだ。だから代表戦で決めようぜ。」
「ふん。面白い。3人代表でいこう。」
ということで、隠れてる敵を口車にのせて姿を現させた。
これで寝首をかかれるリスクが大きく減少する。
こいつらは本当にゲームを楽しんでいる連中だからな。
決めたことを守らないやつじゃない。
…たぶん。
敵は短剣使いのリーダーのような奴と魔術師、何も持たないたぶん格闘を使うであろう三人だった。
「先に二勝したほうが勝ちでいいか?あと、ギブアップも認めてくれ。」
「二勝でいいが必ず3戦はしてもらう。そして、ギブアップは無しだ。」
「それなら、こっちはギブアップなしでそっちはギブアップありにしようぜ。できれば人を殺したくないからな。」
「勝手にしろ。」
そして決まった試合は
シエラ対格闘?
姉さん対魔術師
俺対短剣使いのシュラウド
ということになった。