最後の登頂
俺達は塔を駆け上がった。
勝っても負けても終わりになるこの戦いに出る前。
「リル。これでお前ともお別れだな。」
「ルリ。今までありがとうね。」
俺とイオはそれぞれに挨拶をした。
「馬鹿言うな。現実で会おうぜ。」
「そうですよ!今度は現実で葵さんとかなたさんの話を聞かせてください。」
それから色んなものを渡された。
きっと役に立つからと…。
発明品の数々…。
がらくたの数々?
閃光が飛び散るフラッシュボムとか面白そうだが、他のモノは使うと何が起きるかわからない脅威の箱たちだ。
ルリが渡してきた袋にはさまざまな衣装が入っていた…。
メイドから花嫁などなど…。
何をさせる気だ。
そんな多くの期待を背負って駆け上がっている。
きっと待っている方が辛いだろうな。
何もできることはないのに、希望はまだ生きているのか潰えてしまったのかすらわからない。
解放される瞬間さえわからないのだ。
そんな不安を早く払拭してやるために俺達は道を急いだ。
49までの道は生き残りがしっかりと覚えていてくれたおかげで迷うことはなかった。
41層から48層の敵は雑魚とよぶことのできないレベルのものばかりだった。
いろんな種類の敵がでてきたが、どの敵もバランスよく性能が高い。
ミノタウロスなんか一撃で死にそうな大斧を振り回してかなりの速度で突進してきた。
安全確保のために、ヴェルのワイヤーワークで縛り上げ、そこに集中攻撃という作戦のおかげで被害はなかったが、死にかけるということはよくあることだった。
そんなこんなで無事に48層の階段に飛び込むことには成功した。
しかし、ここからが問題なのだ。
ルート組。
レベルや技術が不足するためにボス戦には参加しないメンバーのことだが。
明らかに弱いわけではない。
ルート検索しつつボス戦に参加するための技術と経験を重ねている。
そんなやつらが全滅した相手が待っているわけだ。
こっちも何人やられるかわからない。
49層にあがるといつもと変わらない風景が待っていた。
一本の通路。
そして、両脇に佇む巨大なミノタウロス。
「いつもと変わらないな…。」
「そうだね。」
「入ってみるしかないといったところでしょうか。」
ヴェルとレオが中をじっくりと観察しながらいった。
「考えられるパターンは入ったら扉がしまって全部のミノタウロスが襲ってくるといったところね。」
姉さんが考えるように腕を組みながら言う。
「その時はどうする?」
「ヴェルがおとりになって全部を引き連れているうちに一匹ずつ集中攻撃かしらね。」
・・・。
姉さんヴェルにも厳しいな…。
「まあ、それ以上は予想できないしな。いくか。」
49層に踏み込んだ。
メンバー全員が部屋の中央まで進んだあたりで扉が閉まり始めた。
そして、内側から結界が発生した。
それは、そう人為的な魔法の類い。