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ラストライフ・オンライン  作者: 蜜柑
終わりの前のひとやすみ
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試される価値

「あれ?やめないの?」


 ヴェルに会って最初の一言がそれだった。

 どこまでも見透かしてくるやつだ。


「現実でしたいことができたからな。」

「ここじゃだめなの?」

「駄目だな。」

「そう…。」

 悲しそうだ。


「そう言えば、ヴェルは現実で会いたい人とかいないのか?はじめから戻るためのリスクはおかしたくないようだったけどさ。」

「いないね。そんなもの。」

 そう言いきれるところが俺には理解できない。


「現実では何もできない自分に戻るんだよ?」

 ヴェルの反撃は俺の核心を捉えた。


 俺はこの世界から出ればただの高校生だ。

 社会をこうせいする一部でしかない。

 一部とも認識されないような世界へ。


 ここでなら俺はいるべき場所があり、認めてくれる仲間がいる。

 今まで集めてきた装備、誇れる名誉。

 それら全てが電子の瓦礫と化す。

 それに俺は加担している。

 ゲーマーとしては許されない想いだ。

 もしかすると俺達のクリアを目標とする活動を快く思っていないやつらもいるかもしれない。


「それでも、俺には現実で一緒になりたい相手がいるからな。」


「そっか…。僕もできることならそう望んだのかもね…。」

「できないことなんて何もないだろ。姉さんのことならダメだが。」

「ふふ。」

 それで俺達の会話は終わった。


 しかし、まあ…。

 はっきりと区切りが俺自身ついたわけじゃない。

 やっぱり2人のことを思い出すと辛い。

 攻略組の連中も俺に感謝の言葉をくれるばかりで誰も責めたりはしなかった。

 それでも、2人のことを俺は背負っていこうと思う。


 だから、俺は攻略組の集まる場所になっている酒場を目指した。


ーーー。


「あとこれからどんだけ続くかわからないっていうのに俺はもうついていけねぇよ…。」

 そんな声が響いた後に男が出てきた。


 誰も止めないんだな。

 自分の命に責任をもってるやつらだからかな。

 しかし、戦力が減る分、一人一人のリスクはあがっていくわけだ。


「いいのか?」

 俺は中に入ると丁度目の前にいたシエラに話しかけた。

「仕方ないじゃない。みんな不安なのよ。私達は止めない。私は何があっても続ける。それだけ。」

「そうか…。」


「ところでききたいことがあるから外でないか?」

「デートなら三日前には予約しておいてよね。」

 三日前ってまだボス戦まえじゃねぇか…。


「特別に時間をわけてあげるけど。」

 そういうことで2人で近くの喫茶店に向かった。


「で、ききたいっていうのは2人の名前?」

「そうだ。俺が殺した二人の。」

「かなたが殺したわけじゃないよ。みんな覚悟の上だし。」

 そういって慰めてくれる。

 

 でも、今の俺に必要なことは贖罪だ。


「ヨウスケとレガシ。」

「ありがと。」

 2という数から名前がついたことで対象を理解したような錯覚に陥る。

 よく知らない2人の名前を知っただけだ。

 それでも、その2人のために俺はこの世界を終わらせる。


 しかし、そんな話だけではシエラが帰らしてくれないので少しだけデートらしい話をすることにした。


「なんでシエラはそこまで帰ることにこだわるんだ。」

「なんでって帰りたいからじゃない?」

 そんな明らかに破綻した答えが帰ってくる。


「ただ帰りたいなら自分で危険なことをする必要ないだろ。シエラの言葉は時々、自分を犠牲にしようとしている気持ちが込められてる。」


・・・。


「なんていうか…。今まで人生の意味なんて感じたことなかったんだよね。運動も勉強もほどよくできる私って誰にも怒られなくて何をするにも自由で好きな道を進みなさいって言われてきた。でも、誰も道の探し方は教えてくれなかった。結局、生きてるだけで目標なんて無かった。しいて言うなら親が悲しまない道を進むだけ?でも、ここにきてこんな状況になって私の目標が見えたの。早くクリアすること。前も言ったよね。多くの命を助けたいんだよ。」


 そんな言葉を黙ってきいた。

 そして、出てきた言葉は


「意味のない人生はきっとない。現実で何かを見つけるために生きてでようぜ。」

 そんな重みも何にもない子供のセリフだった。


「じゃあ、かなたと現実でデートってことで!」

「は?!」

「私に生きる目的をくれる人になるんでしょ?」

「そんなことは言ってない!自分で見つけられる人間になれよ!」

「いいじゃない。私は誰かのために生きていけることって大事なことだと思う。そんな人に会えることって素敵なことだと思う。」


 俺はそんなたいしたものじゃないんだけどな…。




 

 

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