被害の理解
今回の戦いで俺はやっと自分のやってることのリスクを理解できた。
今回の被害者6人。
偶然、俺の知り合いには被害はなかったが、攻略組という仲間を失ったのだ。
2人に関しては俺が何もしなければ他の奴が死んでいたはずなのだから、俺の責任でもある。
俺が何もしなければもっと死んでたはずなんだ。
そのはずだ…。
いつも通り石碑に名前を刻み込む。
そこに刻まれた人数は参加したメンバーよりも6人少ない。
俺達と一緒に戦ったのに。
あっちの世界まで引っ張られそうな気分だよ…。
さっさと街に戻ろう。
そして、俺達はこの世界で生きていくべきなんじゃないか?
きっとイオもヴェルも賛成してくれる。
姉さんだってきっと…。
レオとシエラは…。
そんなことを考えつつ街に帰った。
前回ほどは攻略組のお祝い的な雰囲気も弱い。
被害がでないなんて奇跡を前回やってしまっただけに大きな期待をしてしまったのだ。
街につくと淡々とシエラの説明が開始された。
「またルート組が49までのルートチェックにいくと思うからそれまで休みね。それじゃ解散。」
それだけ。
お祝いという雰囲気でもない。
次で最後だっていうのに…。
宿ではリンカと双子が待っていた。
「お疲れ様です!」
俺達が無事で帰ってきたことに喜んでいる。
その顔が俺には辛い。
俺は誰かを犠牲にしてここで生きているっていうのに。
「かなた。そんな顔しない。」
イオが俺の耳元で小さな声で伝えてきた。
そんな顔をしてしまっているのか。
「お待たせしましたお嬢様。」
レオがリンカをかかえあげている。
2人は幸せそうだ。
そんな色々なものが見てられなくて俺は自分の部屋へ急いだ。
それについてきてくれるイオはずっと握った俺の手を離さない。
どこにもいかさないそんな気持ちがこもっているように感じた。
この世界に俺をつなげる小さな手。
部屋に入って扉を閉めてカギも閉めて俺はその手を強く握り返した。
「かなたのせいじゃないよ。」
「死ぬ人間があの2人になったのは俺のせいだ…。」
静寂…。
「イオ。この世界で俺と生きてくれないか?」
「いいよ。」
互いに失うリスクを背負うぐらいならこの世界で2人で生きていく方がましだ。
「でも、パパとママに報告はしたかったな。」
そんなことをイオが呟いた。
・・・。
気が早い…。
結婚するでもないのにもう親に会いに行くのか。
それも、葵の両親とは普段から顔を会わすことが多い。
しかし、そんなちょっとした想像を俺は実行してみたいと思った。
葵のご両親にご挨拶か。
普通に生きてたら無かったかもしれない展開だ。
この世界があったから俺達はこういう関係になれた。
そして、ちょっとした人に言わせればつまらないようなことでも彼女が望むなら実行してやりたいと思える。
命をかけてご両親に挨拶だ。
2人を殺した事実は変わらないけど、彼らの意思はきっと現実に向かっていたはずだから。
俺は止まらない。