終局の手前
さてと目前に迫るのは死の一撃だが、どうしようかな。
そんなことを考えていた。
ただ、俺を殺すはずの暴風から目をそらさなかったのは自分の死に場所と思ったからかもしれない。
俺の知り合いは割りと死にたがりが多かったからな。
俺なんか始まった初日なんて死の恐怖で生きるのに必死だったっていうのに。
誰かのためにとか仇のためにとかそんな奴が多すぎる。
そんな中の一人になったのはいつからだろうか。
この世界に来たことが死への第一歩だったと言われるかもしれないが、俺にとっては全然現実感がなかったのだ。
自分が死ぬなんてことを考えることもなく姉さんを助けにいかなきゃと思っていた。
だから俺が死んでも守りたいと思ったのはきっとこの世界での成長だ。
現実で死んでも守りたいという言葉を使うヤツの何割が本気の死を想定して言ったのかな。
そんな回想を一瞬でしたあたり一種の走馬灯だろうか。
その走馬灯は横からの衝撃で中断された。
ドラゴンゾンビの作ったものではない風が俺を横から吹き飛ばした。
正直痛いが死ななかった分ましだ。
生きてるって最高だ。
死んでも守りたくてもできれば死にたくない。
そして俺を救ったのはファランだった。
バスケットを地面におろし槍を両手に構えている。
「これ。なぜだか私でも使えるんです。」
「助かった!ありがとな!」
ファランの風で受けたダメージも仲間の回復魔法で治癒しきった。
よし!
まだ戦える!
「あとで話があるから!」
イオの声がするが顔は見ないようにした。
戦った後の方が問題だ。
さてと、次は反撃するか。
月光に光の中級魔法が入った魔弾を装填する。
「くされとかげ!今度はさっきの比じゃねぇぞ!」
再び尻尾に向けて突撃をかける。
左後ろ足の攻撃をかわし一気に飛び上がる。
俺の体重と速度を全て月光に込めて尻尾に叩きこむ!
尻尾も迎え撃とうと振られている。
衝撃の瞬間にトリガーを引き光の魔法を刃に通す。
中級魔法の余った魔力が厚く長く剣を包む。
普段の二倍の長さをもった月光を振り下ろした。
ずどん。
尻尾が重たそうな音をたてて地面に落ちる。
これでリスクが大幅に減少した。
「さすが。かなた。」
「おうよ!」
ヴェルと軽い挨拶を交わしながら次の攻撃目標へ向かう。
狙うのは翼だ。
尻尾側から背に向けて飛び込む。
そして、着地の瞬間に氷の魔弾を足元に打ち込み足場を作る。
すぐに溶けるからすぐ飛び立つわけだ。
さらに、空中で再装填し足場を作る。
それを繰り返して翼にたどり着いた。
そこで見たのは、あと一撃で崩れそうになっている骨の状態だった。
「もうすぐゴーストでるぞ!準備しろ!」
そう言ってから骨に最後の一撃を与えた。
ドラゴンゾンビの身体中の骨が砕けていき支えを失った身体が地面に伏せる。