始まる混戦
「とりあえず耐えろ!」
そんなことを言ってから扉を開けた。
はじめての経験だ。
それでも異臭の前に俺達は敗北した。
「目が!しみる!」
「息ができない!」
そんな絶叫から始まる戦闘。
作戦は尻尾には行くな。
翼や骨が見える部分を攻撃。
ダウンしたらでてきたゴーストを叩きころす。
敵の攻撃自体には特殊な感じがないのでチームは特にクラスなどでわけない。
そういうことだったので俺達は見知ったメンバーでチームを作った。
俺、ヴェル、イオ、ファラン、レオ。
姉さんは指揮ということで一人。
シエラは攻略組と一緒だ。
「私もかなたと同じチームが良い!」
と駄々をこねるシエラを説き伏せるのはなかなか大変だったが、ヴェルが何かをシエラに伝えるとにやりとして従った。
ヴェルの話術は凄いな。
そんな中で始まった俺達の戦いは長期戦になった。
なんと言っても攻撃力の高い攻撃はコントロールが難しい。
それが肉に当たってしまった時には武器を失い戦えなくなる。
当然としてこつこつと小さな攻撃をあてていくしかない。
威力の高い技を狙うならまったく肉のついていない翼だがいかんせん位置が高い。
重装系の連中であれを攻撃するのはなかなかやっかいだろう。
そんな俺達が攻めあぐねるのは仕方ないわけだ。
それに対してドラゴンゾンビが攻めあぐねているのは、攻撃のパターンをよみきられているためだ。
ヴェルの攻撃に関する解説は非常に細かいものだった。
「爪がかちかちと地面を叩き始めたら後ろ足の払い攻撃がくるから気をつけて。」
などなど、開始前の作戦会議で俺とシエラはまったく気づかなかったくせをみやぶっていた。
覚えることが大変なくらいの情報量だったが命がけだから必死で覚えた。
「もごもごしてるぞ!」
そんな声が聞こえた。
そういうときはとりあえずバックステップだ。
「おし!風回避。」
俺を狙った攻撃ではなかったらしい。
しかし、いつまでもこんなちびちび攻撃している場合じゃない。
慣れたとはいえ臭いしな。
両手に銃をかまえていたが、ホワイトパールを収納する。
右手に月光。左手にブラック・バート。
俺の基本スタイルに戻ったわけだ。
「ちょっと!つかまったらどうするのよ!」
ガードも攻撃もなかなかできないイオが言ってくる。
「策がある!」
走りこむ。
幸い敵はこっちに気づいていない。
月光に光属性の弾を装填する。
魔法剣の真価を発揮するチャンスだからな。
肉に突き刺さる瞬間に月光のトリガーを引き刃に光属性をもたせた。
そして、見事にざっくりと肉を切り落とす。
骨が表出した。
「いける!」
「かなた!右のおなかの肉を全部切り落として!」
「あいよ!姉さん!」
敵の横っ腹に位置取りを変える。
敵も危機をさとったのか俺に攻撃を集中させてきた。
「ヴェル。予告頼む!」
「おっけー。右足払いくるよ。」
予告通りの右足での払いをジャンプしてかわす。
仕返しに腹の肉を切り落とす。
「次。噛みつき。」
「了解。」
ステップで距離をとって回避。
噛みつきをかわしたあとに再びステップで急接近しさらに切り落として行く。
それを繰り返すうちに、攻撃しやすい範囲ができた。
「かなた。次は逆の腹を。他のメンバーで今、肉がなくなった腹を全力攻撃。」