偵察の報告を
「おかえりなさい!」「無事でなによりです。」
イオの嬉しそうな言葉とレオのほっとしたような言葉から始まり…
「お疲れさん!」
「無事でよかったぜ!」
「信じてたぜ!」
そんな言葉たちの嵐に呑み込まれた。
かなり恥ずかしい…。
しかし、俺達がやったのはそれだけのことなのだ。
だから、こういう風に感謝されるのも悪くない。
この世界なら俺のできることは現実よりも圧倒的に大きい。
俺の価値はここにしっかりと存在する。
「かなたさん。お久しぶりです。」
そんな声が俺を囲む人垣の向こうから聞こえた。
聞き覚えのある声だ。
「すみません。少し通してもらっていいですか?」
そういって人の間を滑っていく。
そして、その向こうにいたのはファランだった。
「ファランじゃないか!」
「やっとこれました。」
そんな風に飛んで喜びを表現すると胸がユレマスヨ。
「けど、よかったのか?家。」
「大丈夫です。一緒にカルムに行った友達と仲直りできたので家の管理をお願いしてきました。終わりも近いと聞きましたので。」
「僕が報告してたんだ。」
ヴェルが教えてくれた。
「終わりが近い?」
シエラが不思議そうにつぶやいた。
確かに、まだ40層の強いボスが健在なのだ。
終わりが近いという言葉は甘いかもしれない。
それでもそれを越えて終わりを近づける戦いがコレから始まるのだ。
「ファラン。戦えるの?」
イオが尋ねる。
「今まで貯蓄したお金を全部使ってきました。それに、クリアのためのということを話したらみんながこれを使ってくれってたくさんのアイテムを譲ってくださって。」
いいな、こういうの。
俺達がクリアするためにこの世界にいきるみんなの力が終結している。
これで負けるなんて許されない。
「ほら。私の盾も強化されたのよ。」
イオのかまえた盾は七色に染まる不思議な盾だった。
「ナイツオブラウンドっていう盾らしいけど。魔法に対しての防御が強くなってるの。」
イオの生存率があがったことが素直に嬉しい。
「それで、40層のボスなんだけどね。」
シエラが切り出した。
「敵はドラゴンゾンビ。悪臭よ。」
全員が黙ってききはじめる。
この命をかけた情報が自分達の命を守るのに大事な情報だと知ってるからだ。
「ゾンビっていうと24層で戦ったアレね。」
姉さんが思い出すようにいった。
「姉さんゾンビ系と戦ったことあるの?」
「え?みんなあるでしょ?」
全員で全員の顔を見合うが誰一人うなずくやつはいない。
「25層の穴に落ちたら真下にまってるやつよ?」
・・・。
「あんたあれ落ちたの?…」
シエラがあきらかに引いている声で言う。
「どうみても罠とわかる紐ひっぱるなんて…。歩いたら足音が変に高くなったでしょ。下空洞ですよってわかるような。」
さすが姉さんだ。
カッコイイだけじゃない。
道に迷うことなら誰にも負けない才能をお持ちだ。
顔が真っ赤。
「いいじゃない!ゾンビはHPが見えないのが特徴よ。それとダウンさせたら操ってる術師が出てくるからそれを撃破しないと何度でも蘇るわよ。」
「最後まで油断をできないようですね。」
レオの言うとおりだ。
「俺達が見たのは最初の動きだけだ。HPが減ったら新しい動きもあるかもしれない。気を抜かないでくれ。」