直前の緊迫
ボス層の直前、39層。
ここもいつもと同様に長い一本の通路になっていた。
通路の両脇には通常のリザードマンの約二倍サイズのリザードマンが並んでいる。
「さてと、偵察は俺達3人でいいか?」
攻略組参加メンバーの了解を確認する。
「おう。任せたぞ!」
「しぬなよ!エースだからな!」
なんだか恥ずかしい言われ様だ。
イオの顔を見ると、私も連れて行ってという顔をしている。
しかし、イオは盾を持っていない。
ミニドラに焼き尽くされたわけだが、それではナイトの能力の半分もいかせない。
だから
「イオ。俺は絶対に死なないから待っていてくれ。」
少しだけイオの瞳から涙がこぼれる
それでも進まなければならない。
俺達は40層への階段に踏み込んだ。
20人近くいたさっきまでのパーティーメンバーが今や三人。
心細い気にもなる。
「そんな緊張するなー!」
シエラに尻を叩かれた。
「そうだよ。僕達がついてるんだから。」
そこでふと気になることを思いついた。
「シエラ。」
「なに?」
「ヴェルに口説かれた?」
「まだ。っていうか私のこと嫌いでしょ?」
そんなことはたぶんないはずだ…。
「そんなことないよー。女性には優しく!」
ヴェルの話し方はいつも通りのようにもみえるが…。
うーん。
おかしい。
まさかとは思うが一途な恋がどうこうとか言わないよな…。
一日だけ姉さんにもヴェルにも会わなかった日がある…。
それでも今チームワークに亀裂を入れている場合じゃないからな…。
そんな話をしている間に40層の扉の前についた。
「…ドラゴンだよな。」
「そうかもね。」
シエラは割りと気にしていないようだ。
「どうかな?もっと大きいリザードマンだったりするかも?」
要するに
「開けてみなけりゃわからないか。」
扉の前にシエラが移動した。
「そうそう!色々考えたって何も変わらないんだか・・・らっ!」
シエラが扉を蹴り開けた。
その扉の隙間から生温い空気が逃げ出る様に外に吹き出してきた。
「なにこれ!臭い!」
「腐敗臭かな…」
「閉めろ!」
・・・。
「「「入りたくないな・・・。」」」