休息の終わり 激戦の始まり
3日ほどの休養日が終わりシエラから攻略組の中でもルート組と言われる連中が39層までのルートを確定させたという報告を聞いた。
20から30にかけて虫系エリアだったのに対して、31からは爬虫類系らしい。
小さな竜族も見られたということだった。
宿の姉さんの部屋。
既に俺たち全員集まっている。
「攻撃力が高い敵も多いから登るのにも気を抜けないって。」
「そう・・・。何人死んだの?」
姉さんは悲痛な顔でそう聞いた。
死なないことを想定できないレベルなのか。
「3人。」
シンプルに答えるシエラ。
それはきっと重さを知りたくないからだ。
一人一人に今日までの人生があったのに今では3という数字がそいつらを表現する言葉になっている。
「名前は?」
「エラリア、ミト、シャケ。」
「初期メンバーじゃないわね…。」
「塔でクラスアップしてボス戦組に参加予定の連中だったから新参よ。」
それでも、姉さんはその名前を繰り返して記憶に刻み込んでいた。
この被害も現実帰還への必要なリスクだったのだろう。
それほど現実帰還に価値があるのかはおいといてだ。
「ボスの偵察は済んでるの?」
ヴェルが聞いた。
「まだ。」
「それなら僕がするよ。」
回避得意のヴェルが偵察。納得できるところだが、俺の友達が命をかける必要があるのだろうか…。
そんな疑問は拭えない。
「それなら俺もだ。」
だからと言って止まる理由にはできない。
それが俺の今日までに学んだことだ。
悩むなとかじゃない。
進みながら迷え。
光が見えた時にいつでも飛び出せるように。
「私もそれならいくわ。」
姉さんが参加を希望した。
「リーダーが偵察なんて危ないことしちゃダメだよ。」
ヴェルが諭す様に言う。
「弟のことなら僕に任せて。」
その言葉の効果はてきめんだった。
立ち上がって今にも主張しようとした姉さんが座る。
「レオも待機だ。」
俺は参加を申し出ようとしているレオの切っ先を制した。
現実での仕事や大人としての責任を取ろうとするレオにリンカの方へ見るジェスチャーで意味を伝えた。
あんたが死んだらリンカをどうするんだ。
そういう意味を。
そして、偵察は俺、ヴェル、シエラの三人となった。
今回は姉さんの件も解決したので攻略組と一緒に登ることにした。
道がわかるやつもいないしな。
解決したといえば…。
「姉さんなんでまだ髪編んだままなんだ?帽子もだけど…」
「えっ!?」
そして、微笑みを越えてにやにやするヴェル。
これは危険な状態だ。
ボス戦よりも現実的な部分で問題だ。