白と黒の騎士
サソリが悲鳴をあげる。
左爪を失った上に、尻尾を締め上げられ、曲がるはずのない角度まで横に捻じ曲げられている。
必死で痛みを弱めるべく曲げられている左へ旋回しているが黒騎士はそれに勝る速度で尻尾を掴んだまま走る。
ゴーレムよりも小さな身体に圧倒的な力が詰まっているようだ。
しかし、サソリもただ旋回しているわけではない。
左脚で蹴り飛ばそうと狙ってきたり壊れた爪でなぎはらおうとしてくる。
素手で戦う黒騎士にそれを防ぐ術はない。
「させないわ！」
その黒騎士を狙う全ての攻撃をイオが盾とアロンダイトで防いでいる。
白と黒の騎士のチームワークが際立つ。
ちょっと悔しい…。
俺も活躍しなければ！
「かなた！足に氷！」
「了解！」
姉さんの指示を受けて右脚の位置に陣取る。
離れていると回転の速度についていけない。
もっとこの嵐の中心にむかわなければ！
「かなた君！そんな身体でやめて！」
シエラの言うことは正しい。
飛んだりはねたりすれば再び出血しかねない。
「うちの弟はやるって決めたら命をかけて必ずやりとげるわ！」
姉さんの期待が重い。
しかし、期待に応えるのも弟の仕事だ。
右爪の射程距離まで近づいていく。
振りかぶる爪が見える。
あれをかわしながら氷の魔弾を撃ち込み続けなければならない。
「あんなお姉さんより私の弟になりなさい。」
シエラが俺の右隣まで来ていた。
そして、爪へ向けて連撃を叩き込む。
それを受けるたびに爪の速度が落ちる。
身体に負担をかけなくても避けられる速度だ。
正直に言えば何回ステップやジャンプを踏める身体か不安だっただけに助かる。
その分、シエラはぎりぎりまで攻撃するからさっき脚を攻撃してた時よりも紙一重のリスクが高い回避を続けている。
考えてみると短い出会いから今までの時間の中に何度助けられたかわかんないな。
「シエラ姉さん！ありがと！」
「えっ！？」
予想してなかった呼び方に恥ずかしそうな反応をしつつしっかりと回避と攻撃をするあたり器用だ。
「かーなーたー！」
本物の姉さんが怖い顔をしている。
戦いの後が心配だ。
