迫る絶対絶命
もう何十回と攻撃したかわからない。
なるべく盾チームが俺達攻撃部隊に攻撃がこないように敵の意識を自分たちに集中させようと奮戦しているが、この大きなさそりの敵はまるで三つの脳があるかのごとく両爪、尻尾がそれぞれに敵を狙っていた。
結果、左爪を俺達が、右爪と尻尾を盾チームが受け持つ形になっている。
「ちっ!」
回避に専念しながら左爪に剣を打ち込んでいるなか、明らかな舌打ちが聞こえてくる。
その舌うちしてる奴は重そうな大きな剣を両手で振り回して左爪に叩きこんでいるが、見事にはじかれるばかりで傷ひとつつけられないでいた。
そして、その苛立ちで攻撃の動きが大きくなっている。
「おい!あんまり大振りすると回避できないぞ!」
チームリーダーでもないので言いづらいが身を案じて注意しておく。
「わかってるよ!」
まったくわかってない大振りを再度しかけている。
そして、その油断を抜け目無くさそりは攻撃してきた。
「尻尾そっちいった!」
右爪の攻撃をシールドストライクではじき返しつつイオが報告してきた。
「えっ?」
弾かれた影響で動けなくなっているそいつに尻尾が迫る。
俺の位置からじゃ間に合わない。
そもそも俺は防御系のクラスじゃない。
あんな攻撃受け流すことすら無理だ。
「もお!」
シエラが三振連携を発動させた。
「三疾!」
居合いの三連射を同じ脚の同じ位置に叩きこむ。
それでも折れないからたまったものじゃない。
ただ、脚が少しだけ滑った。
それも、残り5本の脚で支えられているのだから意味がない。
「応えよ!」
氷のゴーレムが尻尾と男の間に入り込む。
そして、尻尾の攻撃を受け止めた。
「今のうちに一度下がって!」
「すまない。」
さっきからピンチが続きすぎだ。
いつ誰が死んでもおかしくない。
しかし、チャンスだ。
尻尾はゴーレムに押さえられている。
突き崩そうと何度も尻尾を前後に振っているがまだ粘れそうだ。
俺は左爪の攻撃に集中した。
「ヴェルいくぞ。」
「わかってる。」
そう言いながら先行する。
弓兵としてはなかなか失敗な気もするが、ヴェルの回避力は圧倒的だからな。
敵を混乱させるのに都合がいい。
飛び込んだヴェルがまず左爪にワイヤーをまきつける。
その間に俺はさそりの頭の部分に切り込む。
なかなかグロデスクな顔をしている。
まがまがしい口が開いている。
負けたら食われそうだな…。
けど、口の中が堅い奴なんて聞いたことがない。
敵の口に向けて剣を刺しこむ。
「グギャー。」
そんな感じの高周波を伴うような声で悲鳴をあげた。
はじめてのしっかりとしたダメージを相手に与える。
だが、その後に待っているのは仕返しだった。
強靭な顎が俺の剣に食いつく。
剣自体が致命的なダメージを受けた。
「一品モノだぞ!」
文句を言ったところで何度も噛みついてくる。
軽く薄くなった分耐久は落ちてるっていうのに抜く余裕さえない。
しかし、ダメージを与えた俺に対しての反撃としてはもっと猛攻がきてもおかしくないはずなのだが…。
「捕縛済みだよ。」
上を見上げると左爪と右爪がワイヤーで絞められている。
それも、自身の力でさらに状況を悪くしていくような巻かれ方をしている。
「ナイスだ!」
反撃を想定しなければさらに攻撃に集中できる。
魔法剣:月光に水の属性の弾丸を装填し、水の魔法を発動させる。
ウォーターカッターの能力に加えて、その水圧で引き抜く。
抜けたそれはひびだらけで剣としてはもう使えなさそうだ。
「土産もくれてやる。」
火の魔弾を撃たずにそのまま口の中に投げ込んでやった。
当然、スキル:爆発芸術のおまけつきだ。
そうやって調子にのってるから逃げ遅れる。
「かなた!上!」
そして、目前に迫っていたのは鋭い棘のついている尻尾。
ゴーレムの胴は既に穴だらけになって静止していた…。
間に合わなくても間に合わせるしかない。
バックステップでなんとか回避を試みる。
さらに、さそりの口から発生した爆風は俺の回避を助ける。
それは成功したと言える。
いつもならそう言えるはずだった。
俺はHPの1割をとばされるだけで済んだのだから。
「ぐっ。」
俺は漏れる声を止められなかった。
声だけじゃなく喉の奥からせり上がってくる液体、血をはくことを止められなかった。
足も言う事をきかない。
踏ん張れば足先から血が吹き出る。
ただ、俺は倒れこむしかなかった。
今日までなるべく毎日更新を続けてきましたが、明日から約一週間ほど更新ができない環境になるのでやすませていただきます。
申し訳ありません。
話の完結まで必ず書きますので、休みの後またお付き合いよろしくお願いします。