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ラストライフ・オンライン  作者: 蜜柑
脅威の塔
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情け容赦ない戦い

 ユグドラシル29層。


 今までのボス層一歩手前同様一直線の広い通路になっている。

 そして、その両脇に控えているのは蟻が立ったような兵士だった。

 これも近づけば襲ってくるタイプだろう。


 一番向こうに見えるのは30層への階段。

 その前に攻略組と思われるメンバーが20人ほど集まっている。

 少しあわてているような雰囲気がある。


 この層に近づくに連れて口数の減ってきた姉さんも気になるが状況を確かめなければ。

 と思っていると、さっきまで隣にいたシエラが走り出した。


「どうしたの!?」

 よくみると攻略組の集まりの中心に倒れこんでいる男がいる。

 大斧が武器のようだが、それを持つこともできないのだろう。男の隣で斧が転がっている。

 それに対して、回復系のクラスと思われるクレリックな見た目の二人がつきっきりで回復魔法を詠唱している。


「シエラがいない間に偵察に行ったんだ。」

 死線を必死で乗り越えたように肩で息している男が説明をしている。


「ボスは巨大なさそりだ。硬い上に素早い。必死で敵の攻撃を偵察しようと避けてたんだが、こいつがさそりの尻尾にさされて…。」

「それで猛毒状態なのね?状態回復魔法はきかないの?」

 倒れこんでいる男をよく見るとHPのゲージが減っては増えてを繰り返している。


「だめだ。ただの毒じゃねぇ。」

「げほっ。」

 倒れこんでいる男が血を吐く。

 その血は固まる気配がない。


「俺はもうムリだ…。置いていってくれ。」

 しかし、回復の魔法がなければ1分ともたないだろう。


「そんなことできるわけないでしょ!」

 シエラはきっぱりと言い放つ。


「これは、溶血性の毒だね。」

 いつのまにかヴェルが倒れている男の隣にいた。

「特別な薬じゃないと回復できないし、仮死状態にして保存するのが一番かもしれない。活動すればさらに溶血が早まるからね。」


「仮死ってどうするの!」

 シエラの言い分はもっともだ。

「ノルン。お願い。」


 その声に攻略組全員の目が姉さんに集中した。

「リーダー?生きてたのか。」

 死にかけている男が言った。


「テル。私を信じてくれる?」

 そっと隣に座る姉さん。


 テルと呼びかけられた男は血を溢れさせながらも笑った。

「戻ってきてくれて嬉しいぜ。みんなを頼む。死なせないでやってくれ。」

 こくりとうなづいたあと、姉さんはその男に手を当て、魔法を詠唱した。

 そして、氷の中で男は眠りについた。


「みんな!わかってるね!こいつのために、みんなのために!ボス倒して迎えにくるよ!」

 シエラがムードメーカーとしての役割を果たしている。

 俺達も貢献してやらないとな。


ーーー。


 ボスの情報はサソリということと両手の爪、及び尻尾で攻撃してくるということ。

 鉄のような装甲で生半可な攻撃は通じない。


 それに対して俺達は3チームで対抗することとなった。

 敵の攻撃を集め止める盾チーム。

 脚を攻撃して相手の素早さを奪うチーム。

 そして、一番リスクの高い爪と尻尾の破壊を狙うチーム。


 作戦として、敵の武器を奪い安全を確保してからとどめをさすということになっている。


 俺とヴェルは爪と尻尾の破壊チーム。

 イオは盾チーム。

 レオとシエラは脚チーム。

 姉さんは指示役として一人フリーということになった。

 

 そして、30層の扉を開ける。

 目の前にはまがまがしい雰囲気の血の色をした瞳をもつサソリが待っていた。

 今までのボスとは比べ物にならないサイズだ。


「いくよ!」

 もっとも防御力の高いイオが先陣をきる。

 危険なものを壊してさっさと彼女の安全を確保しないとな。


「かなた!約束はまだ残ってるんだからね!」

 人前で言うとか恥ずかしいな。

「俺も死なないしお前も死なせないさ。」


 先制をとったのはサソリだった。

 イオに対しての左爪の攻撃。

 しっかりと盾でガードする。

 しかし、爪で盾を挟まれた。

「離しなさいよ!」

 アロンダイトでその爪を攻撃するが効果がない。

 それどころか挟んだ爪でイオを投げ飛ばしてきた。


 空中になげた得物に対して、尻尾で確実に突きをうちこもうとしている。


「ピンチはえぇよ!」

 左側面に回りこみかけてたのをやめて、相手に突撃する。


 俺を狙う右爪の攻撃。

 それを飛んでよけ、さらに踏み台にして高く飛び上がる。


「イオ!」

 俺は空いている左手を精一杯イオに向けて伸ばす。

「かなた!」

 そしてイオの伸ばした右手をつかみ引いた。


 結果、サソリの尻尾はイオがいた場所で空を切り裂いた。


「つかみがあるから盾部隊は敵の爪はガードせず盾で叩き返して!」

 姉さんの指示がすかさずとんでいる。


 俺着地。

「お姫様役をやっと譲れたな。」

「…恥ずかしい。」

 お姫様だっこしていたイオを降ろす。


 そして、俺達は再びそれぞれ役目の位置に戻った。

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