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ラストライフ・オンライン  作者: 蜜柑
猶予の間に
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息抜き

 ユグドラシル30層へあがるのに俺はボス戦予定の日の4日前、つまり今日行こうとしていた。


「姉さん。今日ユグドラシルに行こうと思うんだけど。」

 姉さんの部屋で2人きり。

 家族水入らずだ。


「あら。早いのね。」

 まったく考えていなかった顔だ。


「20層から上は道がわからないからな。」

 姉さんとあった19層までしか道がわからない。

 ヴェルなら一度いった道は間違わないからそこまでは安心だ。


「そんなこと、私はなんども29層まで行ってるから大丈夫よ。」

 と自信満々に言う。

 そこまでいうのだから信用するのが家族だ。


「ところで姉さん。なんで部屋でも帽子脱がないの?」

 そんなにヴェルに貰ったものが大事なのだろうか。


「えっ?」

 肩をびくっとさせる。


「ヴェルに貰った帽子が大事?」

 ちょっと皮肉を込めた調子で言った。


「そんなことないよ!あんな軽薄なのは関係ない!」

 扉の向こうでがたっと誰かが崩れ落ちた音がした。

 焦っている姉さんは気づいていないけど。


「それじゃ脱いでいいよね?」

「うっ…うん」

 そして恐る恐る脱ぐと…

 

 ぴょこんと跳ねたネコミミがあった。

 冗談で姉さんがネコミミだったらと想像したこともあったし、猫人の種族なのだからあるべきものなのだけど、元気にぴこぴこと跳ねるその耳は想像以上の破壊力だ。


「これ、気分に反応して動きにでちゃうからあんまり見られたくない…。」

 照れて赤い顔とあいまってやばい!


「姉さん!早く帽子を!じゃないと俺は死んでしまうかもしれない。」

「わけがわからないわ…。」

 とりあえずネコミミは封印されて俺も姉さんもなんとか無事だった。

 キャティー族恐ろしいな。


 しかし、そう意識すると尻尾も気になってくる。

 今はベッドに座ってるから良く見えないが…見たい!


「おーい。かなたどこだ~?。」

 タイミングが悪いことにリルの声がした。


「探してるみたいよ。」

「はいはい。」

 姉さんの部屋から退散することにする。

 っと扉の前には水溜りができていた。

 しかし、赤い奴はいなかった。


ーーー。


「リル。どうした?」

「おう!かなた!」

 見つけたのは食堂だった。

 こいつ俺を探す気あったんだろうか。


「今度の登頂にはさすがに妹をつれていくわけにはいかないだろ?」

「そうだな。」

「だから、武器の調整と改造を今のうちにやっておこうかと思ってな。」

 プリンを口にほおばりながら言っている。

 その隣のルリも幸せな顔でプリンを食べている。

 

「ああ。明日出発になったから一日で頼んでいいか?」

「任せとけ!最高の武器を作っておくぜ!」

 そういうことで月光とブラック・バートを預けた。


「じゃ、私の景翼けいよくもお願い!」

 シエラの神出鬼没にも慣れてきたところだ。


「あ。それは私に。」

 ルリが受け取った。


「綺麗で軽くて鋭い刀ですね。」

「うん。良い鍛冶師さんがいたのよ。」

 いたっという表現。


「私たちがいない間に、火付け用のちょっとした枯れ木を集めに自分で行っちゃったみたいでさ。」

「そうか…。」

 俺はあんまり人が死ぬのを見ていないが、割と死んだという話は多いのかもしれない。


「そう。プレートの2割黒くなってるって最近確認した人がいってたから。」

 心を読まれたらしい。

 しかし、それよりも2割が死んだということはだいたい六千人死んだのか。

 だいぶ死んでしまったんだな…。


「だから私達は早く攻略しないと行けないのよ。少しの犠牲を払ってでも。」

 その犠牲にシエラは自分を入れているのだろうか。

 そう思ってしまった。


「でも、今日は遊びに行きましょう!」

「いってらっしゃい。」

 そう見送ってやった。

 のに、俺は手をつかまれ引きずられている。


 イオと今日はでかけようと思ったのに。


ーーー。


「ねえ。この街って綺麗だと思わない?」

 結局、シエラと街を歩いている。

 シエラ達は明日の早朝に出る予定らしい。

 そもそも、昨日全員酒場に集まっていたのはこの攻略に向けて集合していたらしい。


「確かにな。カルムとは違った光の暖かさがあるよな。」

「君って別の街にいたことあるんだ?」

「まあな。」

 別に不思議なことじゃないだろ。

 なのになんでそんな深刻そうな顔してるんだ。

 深刻という言葉があてはまっているかわかんないけどさ。


「私はずっとここ。始まってすぐここにきて。ひたすらクラスアップさせて、ひたすらユグドラシルに挑んできたから。」

「そうなのか…。」

「だって、早く帰らせてあげないと、子供とかおじいちゃんとか生きる方法知らない人達が死んじゃうじゃない。」

 別に俺を責めているわけではない。

 自分の当然の仕事のように言う。

 良い奴なんだな…。


「だから、こうやって街をぶらぶらするのもはじめてだったりして。」

 そして、いつも通りの顔に戻った。

「俺が手伝ってやるからさ。たまには息抜きするか。」

「息抜き手伝ってくれるの?」

 やけに嬉しそうで恥ずかしい。


「ユグドラシル攻略を手伝うんだ。」

「そっか~。期待してる。」

「おう。期待に答えてみせよう。」


 そうして、その一日はシエラと過ごした。

 帰ったあとイオにとっても怒られました。

 何も言い訳できないけど、これでシエラが少しでも気持ちが楽になってくれたら怒られた甲斐もある。

  

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