勝利条件は運
一呼吸。
息もつかせぬ連撃をなんとか耐えた。
基本的に強力なスキルやアビリティーにはリキャストタイム。
要するに使用後の待ち時間が長くなる傾向がある。
ものによっては負荷がかかりなんども使えない類のものも。
つまり耐えた後はチャンスが待っている。
「今度はこっちからいくぜ!」
正直、二刀流は久しぶりで自信がない。
バッカニアには二刀流に対するクラスアシストもないので動きは完全に自己流だ。
しかし、やるしかないときはやるしかない。
左手のダガーで刀のガードを誘い、右手の剣:月光で攻撃をしかける。
が、それも鞘で弾かれる。
「それで本気とか言わないよね?」
ユグドラシル攻略組のメンバーを舐めていた。
しかし、逆に舐めさせるのも作戦のうちだ。
「冗談に決まってるだろ!」
ここで切り札ふたつめをきることにする。
爆発芸術!
剣に付帯させた爆発効果をシエラのガードする刀に移譲。
これで相手の刀は爆弾になったわけだ。
見たことのないスキルにそう簡単に対応できるわけがない。
そこからバックステップで離脱。
シエルは遠距離武器を予測してかガードを固めている。
が、そのガードの基本になっている刀が攻撃してくるとは思っていない。
そして、何も対応できないまま爆発した。
土煙があがる。
まあ、この程度じゃ死なないだろう。
「やってくれたわね!」
ほら、案の定怒ってますよ。
土煙の中から剣閃が閃く。
十分に距離をとっている今、十分に回避が可能だ。
「もう怒った!本気で撃つから死ぬんじゃないよ!できれば五体満足で欲しいんだから!」
できればにどの程度意思があるのか知りたい。
そして、イオが俺を心配する気持ちとシエラに対する怒りでなんとも言えない顔になっている。
はやく安心させてやんなきゃな。
「三振連携!」
今まで見た技は六式まであった。
見たのは四種類。
そして、六までとは限らない。
「六式燕!」
走りぬけながらの剣撃。
知覚加速!
神速のような速さだったシエルの剣撃が高速に見える。
あとは俺が避けられるか避けられないかだけだ。
目前に迫る剣をしゃがんで回避。
「五式奏!」
上からの剣撃がしゃがむ俺を襲う。
左手のダガーでそれを受けた。
が、奏はそこから続く。
上から下の斬撃に続き下から上へと切り返す。
それによって俺のダガーは吹き飛ばされた。
吹き飛ばさせた。
ガードすれば固まってしまうシエラの連続攻撃。
それに対して有効なのは武器を捨てることだ。
さっさと捨てれば衝撃が体に伝わってくることはない。
まあ、普通武器をすてたら負けなのでできないよな。
だが、最後の切り札、ブラック・バートが俺にはある。
「八式轟!」
真上からの一刀両断。
簡単に受け流せるその攻撃を剣で受け流しつつ、左手にブラック:バートを物質化。
「三振でワンアウトってな!」
そして、その銃口をシエラの胴につきつける。
実際、へそにつきつける感じだが、ぼかしたほうがいいだろう。
「なんちゃって?」
シエラの顔がてへぺろ…!
鞘が再び俺の脇腹を狙って加速している。
!二式朧かよ!
知覚加速の遅くなった世界のなかで、既に俺の銃口の前にはシエラはいない。
ぎりぎりで回避したまま、鞘でカウンターを叩きこむつもりだ。
それでも、握ったトリガーは離せない。
敵のいない空間へと撃たれる弾・・・。
ごめんな。
バーーーーン!!!
街中に響く大音響。
ブラック・バート久しぶりの誤作動。
少しずつリルがいじって誤作動率2%までさげたそれがおきた。
そして、それを耳元で受けたシエラがどうなったかは言うまでもない。
地べたに座りこんでいる。
えーっと…。
なんだ?
一応、攻撃して一割にしたほうがいいのか?
なんか、これじゃ俺弱いものいじめじゃん…。
「降参してくれる…?」
もはや頭痛やなんやかんやで泣きかけてるシエラに言った。
「そんな隠し玉があったなんて知らなかった。私の負け。」
こうして俺の決闘は勝利で終わった。
なんか勘違いされてるが運も実力のうちだ。
うちだ…。