帰還とその後
10層から1層までたいした問題もなく降りることができた。
夕焼けが眩しい時間だ。
そして、姉さんは三角帽子を深くかぶり、うつむいたままミーミルの街を歩き続けている。
きっと顔をあわせられない人がいるのだろう。
唇を噛み締めて、地面だけを見つめている。
そんな姉さんを見るのもはじめてだった。
姉さんが間違ったことなんてないのだから、こういう顔をする必要がなかったのだ。
きっと今回のことも姉さんが間違ったからおきたわけではないだろう。
だから、きっと分かり合えるはずなんだ。
顔も見せられないその人達に。
それぐらいは俺がなんとかしたいと思う。
「この帽子使うといいよ。まだ未使用だし。」
ヴェルはそう言って、今使っているソーサラー系とわかりやすい三角帽子ではなく、ハンチング帽のようなものを渡した。
「ありがと。」
素直に受け取る姉…。
どういうことだ!
「そうだ。せっかく髪長いんだし編んでみようか。似合うと思うよ。」
とまで言いやがる。
優しさだっていうのはわかるが・・・。
「お願いするわ。」
俺には何もできないのに・・・。
きっと姉さんは許されることを望んでいないんだろう。
そういう人なのだから。
俺はそれでもどうにかしてあげたいと思ってしまう。
ヴェルはきっとそんな姉の意思を尊重している。
俺は解決する以外の解決を知らない子供だ。
大人っていうのは凄いな・・・。
「姉離れの時期ね。氷花さんの弟離れと一緒に。」
イオが俺にだけ聞こえるような小さな声でいった。
「そうだな。姉さんへの思いはこれからも変わらないけど、おまえへの思いは成長中だからな。」
まだまだ素直に言うことが下手だけど、少しでも俺の捻くれ具合は改善すればいいと思う。
「そう…ね。」
きっと俺達はこれから多くのことを経験していくんだろうな。
そのために死ぬわけにはいかないけれど。
俺は現実で葵に素直な言葉を伝えたい。
このLLでできた繋がりは偽者の世界で本物の絆をつくるはずだから。
「ところで、かなたさん。」
申し訳なさそうにレオが話しかけてきた。
「なんだ?」
「攻略に関してはどうしますか?」
なるほど、大事な問題だ。
「攻略組と連絡できればいいんだけどな。」
しかし、それは姉さんの中にある何かに触れることになるかもしれない。
かといって、俺達だけで攻略できるようなものでもない。
レオは俺達にかけたわけだしな。
どうするべきなのか決めきれない・・・。
そんな俺の困惑を見切れない人じゃなかった。
「連絡の方法ならあるわ。」
今は震えいても・・・。
「攻略組の拠点となっている場所があるの。なかなか帰ってこない連中だけど、メモを残しておけば会えるはずよ。」
姉さんなら越えられる。
二月中旬にかけて多忙のため一日一話更新にしようと思います。
最終的には休ませていただく形になる可能性がありますが・・・。
申し訳ありません。