俺の答えとその結果
再会を果たした俺たちは安全な20層に移動し、そこで今日のキャンプをすることにした。
ここもまた、ただひたすら広いエリアにひとつだけ石碑がたっている。
そして、その前に12個の花束。
それを姉さんは丁寧に並べなおした。
「それってもしかして姉さんが持ってきたの?」
「そうよ。」
それ以上の言葉をかけられなかった。
何か俺の理解できない姉さんの悲しみが石碑を前にするその顔にはあった。
だが、俺には手を出せない領域なのかもしれない。
かといってどこかにいく気分でもないから黙って見ていると
「来てくれてありがとね。」
と、はじめて感謝の言葉をくれた。
「姉さんの弟だからね。」
久しぶりの家族の時間だった。
そして、姉さんは自分のテントに帰っていった。
「今日は安心して眠れるわ。今までずっと一人でいたから眠りが浅くて疲れてるのよね。」
そして、俺は今日まで延ばし続けた答えを出しにいくことにした。
「イオ。起きてるか?」
「起きてる。」
そっけない。
これはなかなかに入りづらい雰囲気だが・・・。
「はいっていいか?」
「はい、どうぞ。」
テントの中にお邪魔する。
「それで、何か用?」
「用だ。」
・・・。
切り出せない。
「もしかしてさっきの話?」
「そんなところだ。」
続けられない。
「気持ちはだいたいわかったわよ?」
顔があかくなりつつある。
照れ隠しもあってあまりストレートに話したくないのだろう。
だけど、このままねじれた伝え方のまま伝えたつもりになることが今までイオを苦しめたわけだ。
素直に…伝えなければ…
誰でも誤解しないような…
言い逃れのできないような…
「葵。好きだ。大好きだ。」
ぼっと真っ赤に発光する顔。
「ちょー好きだ!世界で一番好きなんだ!」
やっぱり照れ隠しにわざとらしい言い方までしてしまった。
なかなか癖はなおらない。
「わかったから!オーバーなこと言わないで!」
俺の口を閉じようとしてくる。
なるほど。
他の人にも聞かれかねない大きな声になってたらしい。
「よし。好きだ。結婚しよう。」
首を絞められた。
息ができない。
「気が早い…。」
照れ隠しのつもりだろうが俺の気は遠い…。
「今日も葵が生きていてよかったよ。」
「そうね。」
あれから俺が死にかけて大変だったがそれでも相手のことを気遣う俺。
「でもさ、おまえあの時良かったみたいな顔しただろ。」
「してた?」
ごまかす気か。
「してた。楽になれるみたいな顔してた。」
「そうね。どちらかと言えば、ちゃんとかなたの前に立てた自分に安心しただけよ。」
それが無いと否定することはできない。
実際、それもあっただろう。
でも、きっとあれはこの世界と俺に疲れた顔だった。
「今まで待たせて悪かったな。俺もさ、生半可な覚悟ですきって言うわけにはいかないっていうのもあってさ。まあ、素直になれなくて違った言い方しかできなかったけどさ。」
「そう。」
「ほら!これからは葵のために尽くすからさ!」
「そう。」
「できることはなんでもするからさ!」
「そう。」
「できないこともするように努力するからさ!」
「そう。」
「俺と一緒に、死ぬまで一緒にいてくれ。」
「それは無理。」
!?この展開は想定外。
「死んだって一緒だって約束したもの。」
「そうだったな。」
「でも、いつだって幼馴染じゃない。いつだってかなたの彼女…だよ。」
そして、照れ隠しのように俺を押し倒した。
「かなた。目をつぶって。」
現実でもこうだった。
俺は葵の願いを断れない。
そして、俺達は恋人になった。
なんで俺の知ってる女はみんな俺以上に男らしいんだろうな。