矛盾の激突
土煙は晴れない。
だが、俺はイオの安否を確かめる勇気がない。
死んでいるだろうあの状況で死んでいることを知りたくない。
だから代わりに・・・。
「ヴェル!なんでイオを殺した!」
ヴェルにつめよる。
俺はどうしても許せなかった。
死ぬべきなのは俺なのに!
ヴェルが許せない。
そうじゃなくて・・・。
そうじゃないはずなのに。
「殺したなんて酷いよ。僕の守れる命は一つが精一杯だっただけなのに。」
いつも通り丁寧に正しい答えを言うように話す。
それが許せない。
「お前は命に順位をつけたんだ!」
俺だってつけているのに。
俺がイオよりも下だと。
俺の冷静な頭はわかっている。
それでも、気持ちを抑えることはできない。
矛盾の溢れる感情を整理もせずに叩きつける。
「そうだよ?みんな自分の命のために多くの命を消費してるじゃない。」
だから、当然のように言うな!
俺の命はイオの命を糧にしてはいけないものだ!
「言い合ってる場合じゃないでしょう!まだゴーレムは残っているんですよ!」
レオの言うこともわかってんだよ!
それでもイオが死んだのは誰のせいでもないなんて俺は大人みたいな事は言えない!
正しいなんてクソ食らえ!
ブラック・バートを構える。
そうさ、俺は正しくなくていい。
きっとイオが望まない形で俺は望みをかなえる。
「かなた。僕に銃を向けるの?」
「イオの仇はおまえだ!」
その言葉に対してヴェルはゆっくりと構えた。
俺の身勝手な怒りに付き合うらしい。
「つまりイオの命は僕よりも順位がいいんだね。残念。」
本当に残念そうに。
でも、まあいっかという雰囲気があった。
レオの焦る顔が見える。
しかし、双子と少女のそばから離れられない。
トリガーを少しずつしぼる。
ヴェルは俺の初弾を必ず避けてくるはずだ。
だが、確実に殺してみせる。
少しずつ高まる緊張。
なんで気づかなかったんだろうな。
いまだにゴーレムが介入してこないわけを。
「ちょっと冗談やめてよね。」
土煙の中からイオの声がする。
そんな中でしゃべったからか苦しそうに咳き込んでいる。
だが、まだ生きているのだ。
「あおい!」
土煙が薄くなってくる中走りよる。
座りこんでいるイオ。
吹き飛んでいる部分もない。
そして、佇むゴーレム。
右腕が吹き飛んでいる。
残った根元に凍ったあとがある、
「かなたさん!右側です!」
レオに言われてやっと気づいた。
ゴーレムの残った左手は、その先にあるもう一匹のゴーレムの腕とからみあっていた。
そのゴーレムは氷のように青く冷たい姿だった。
腕を吹き飛ばしたのはこのゴーレムだろう。
だが、味方というルックスではない。
「イオ!立てるか!」
イオの手を引く。
そして、離れた。
安全と思われるところまでいくと、氷ゴーレムが仕掛けた。
右腕で石の左手を払うとそのまま氷の肩を石の胴にぶつける。
石の方が後ろに倒れこんだ。
そして、構える氷のゴーレム。
突きだした右手から吹雪が吹き荒れる。
凍っていく石のゴーレム。
足元から凍っていっている。
そしてついに完全に凍りついた。
氷のゴーレムが勝利の咆哮をあげる。
そして、その振動で凍りついたゴーレムはまるで砂のように崩れた。
咆哮が終わる。
俺たちは動けなかった。
そして、氷のゴーレムは俺たちの方を見た。
見たかと思った瞬間、その体も吹雪となってきえた。
「氷の魔女・・・。」
ヴェルが思いついたようにこぼす。
そして、俺はその可能性にとらわれた。
「氷花姉さん!」