幻実へ
キャラクターメイキング画面が目の前に広がった。
自分の前に自分と瓜二つのキャラクターが表示される。
もともと自分と似ていないキャラクターに出来ない様にカスタムの範囲は狭いが、姉さんにわかりやすい様に種族もヒューマという人間型にした。
狼人風のウォーウルファーが好みだが、ワイルドさを加味すると俺にならない気がした。
猫人のキャティーや幼児体型のチューマは問題外だ。
ここで猫耳の姉さんをイメージするあたり、こんな状況とは思えない落ち着きぶりだ。語尾はにゃんでお願いしたい。
ーーー。
クラスセレクトに入ります。
クラス、要するに仕事の様なものだ。
鍛冶や調理などのクラフトなど色々なものがあるが、姉さんを探すためには戦闘系のクラスがいいだろう。自分の性格的にクラフトが向かないという部分も多々ある。
姉さんのことだ、クリアに向けて既に活動を開始していることだろう。
そう考えるとクラスやスキルを上げるのに不利なクラスはやめた方がいい。
デスゲームになったということは、クラスあっぷPT、つまりクラスを上げるためのチームのことだが、リスクの少ない遠くから攻撃するタイプのクラス、例えばアウトファイター系の槍とか弓が流行りそうだ。
その分余ってしまってPTに入れない確率があがる。
それなら、HP少ないくせに、高威力で敵に憎まれやすい二刀流のディソーダーや攻撃魔法のソーサラーは需要があっても供給がないからクラスあげには有利なクラスだろう。
ポジション的にはダメージディーラー、通称DD。効率よくクラスを上げるのに必須のクラスだ。
βテストで経験したことのあったディソーダーを選ぼうとした時、少しだけ胸に痛みを感じた。
この選択はきっと「死」に近づいている。
それでもクラスをかえることはしなかった。
クラス「ディソーダー」に決まりました。
全ての選択が終わり、チュートリアルをパスすると始まりの街トスカーレに降りたった。
βテストでは、死ぬとここに戻されたものだ。
そして、周りの視線が俺に集まっている。
「おまえ、死んで復活したのか?やっぱ現実で死ぬって嘘か!?」
近くの男が聞いてきた。
「いや、今来たところだ。」
周りの人々の落胆が伝わってきた。
「自殺志願者か・・・。8人目だ。」
「俺は人を探しにきた。死ぬつもりはない。」
周りから変人を見る目で見られている。
「二刀流って死にたがりクラスじゃねぇかよ。」
その通りだと思ったが、今はそんなことはどうでもいい。
まずは、冒険の下準備をしよう。
俺のレクチャー通りなら姉さんはもう隣の街に行ってるはずだ。