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ラストライフ・オンライン  作者: 蜜柑
LLO another side
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LL Girls Side ファランとユウ 前編

 私はデスゲームが始まった時、トスカーレにいた。


 騒然となる街の中で少しだけ他の人達よりも落ち着いてたと思う。

 こんな騒動に巻き込まれることにはなんとなく慣れていたのかもしれない。

 っと思ったりもするけれど、あの頃の私は自我を守ることに必死で逃避していただけかもしれない。


 こんなことがあるわけないと。


 だから、私は危険を承知で他の都市に移動することにした。

 ここにいたらパニックに陥った人間が何をするかわからない。


 そして、一日目は旅立つ準備で終わった。


 次の日、旅立とうとしているそんな時に聞いた声が親友になるユウの声だった。


「一緒にカルムに行きませんか?護衛します。」

 そんな声が遠くから聞こえた。

 誰に言ってるわけでもなく、声が聞こえた全ての人に呼びかける感じだった。


 特に行く街を決めていなかった私はその人について行くことを決めた。


 ユウはウィンドランサーというクラスだった。

 眼鏡の似合うかっこいい女性だった。

 今までカルムへ移動の為に寝ずにクラスランクを上げていたと教えてくれた。


 そして、集まったのが斧を持つ大男と小さな女の子だった。


 不安そうな女の子をサポートしながら渡る砂漠や荒野は危険の連続だった。


 トカゲの様な敵にも何度も見つかりそれを撃退しながら進んだ。

 大男は逃げてばかりでユウが1人で戦っていた。

 それも仕方ないと思う。

 ここで死ぬことは本当の死なのだから。

 逆になぜユウが立ち向かえのかそれを知りたいと思った。

 

 だから、夜に砂漠でキャンプすることになった時に二人きりになったころを見計らって聞いてみた。

 夜は恐ろしく寒い砂漠で火をつけ座っているユウの向かい側に座って。


「ねぇ。ユウさん。」

「もぉ。ユウでいいって言うのに!ファランは律儀すぎだよ!」

 そう言われても今まで一度だって呼び捨てにしたことがない私だし。

 さんとか君とかつけてる間は距離が保てている様で安心する。

 人の心には入ってはいけない距離があると思う。


 勝手に呼び捨てにしてくる男の人はいっぱいいたけど・・・。


「それで何かしら?」

「不躾な質問ですけど、なんで戦えるんですか?」

「なんで・・・なんでだろうね。あんまり死ぬって実感がないからかな。」


 彼女の身体には至る所に包帯が巻かれていた。

 出血による継続ダメージを防いでいるのだろう。

 休憩することでHPが回復するゲームでそんなことまでして戦い続けられる苛烈さが理解できない。


「そんな身体で死ぬ実感が無いんですか?」

「言ってくれるわね。」

 苦笑いが痛々しい。


「誰かの為に死ぬならいいかなって思えるのよ。」

 馬鹿な人なんだと思った。


「誰かの記憶に残る方がいいじゃない。」

 馬鹿な人というより私と同じ寂しい人なのかもしれない。


 次の日、私達は最大の危機を迎えた。

 女の子がトカゲの集団に見つかったのだ。


「おまえたちの相手は私だ!」

 ユウの槍が空気を裂き、 風属性の衝撃波を敵に叩きつける。


 その攻撃を受けた四匹のトカゲがユウに狙いをつける。


「一匹相手お願い!」

 ユウが大男に向けて叫んだ。


 しかし、大男はもう近くにはいなかった。


「・・・そうよね。」

 それだけだった。

 恨みを漏らすわけでもなくそう言っただけだった。


「ファランも隠れてて!」


 トカゲはその見た目に反して賢く連携をとってくる。

 斧をもったトカゲの強烈な攻撃を避けても踏み込めない弱くなった地面で崩れた体勢では次の槍の攻撃を避けられない。


 三連続の突き攻撃を左半身で受け止めることになってしまった。

「うあぁぁぁ!」

 そんな痛みを咆哮で耐え、右手にチャージした槍を放つ。


 槍トカゲはその一撃を腹に受け、さらに風の攻撃で大きな穴を体に残し死んだ。


 しかし、一息つく間も無く火炎の魔術を受け、その爆煙が消えユウの体が見えた時にはHPが残り一割を切っていた。


 残り三匹に残るHP一割。

 絶望しかない状況でユウは・・・。

 悲しそうに、でも笑みを見せていた。


 その顔はこう言っていた。

「私はちゃんとやれたよ。人の役に立って死んできっと記憶の中で生きられる。」


 そんな考えが理解できた。

 理解できたけど同意はできなかった。


 再び斧のトカゲが強烈な攻撃を仕掛ける。

 再び崩れる体勢。

 しかし、無理矢理に斧のトカゲに風の魔術をぶつけ吹き飛ばす。


 だが、それによってユウは完全に動けなくなった。

 

 魔法系の敵は魔法を詠唱するのに時間がかかる分追撃するのが苦手だ。

 死ぬ寸前まで私たちが逃げられる様に考えているなんて・・・。


「今だよ!逃げて!」

 火炎の魔術が迫る中そう言って見せたあの人の顔は忘れられない。

 清々しいやりきった顔だった。


 ふざけないでって思った。

 だから、私はユウの前に立っていた。


「!?馬鹿!」


 火炎の直撃を受ける私。

 すごく痛い。

 これに1人で耐えていたんだね。


「馬鹿はあなたよ!死んで勝手に私の記憶に残らないで!」

 そして、私は望んだ。

 この人の痛みを癒したいって。


 願いに答えるのは私のクラスチェンジ。

 今まで何の変哲もなかったアイテム全てに付帯効果が見える。

 錬金術師の特殊能力。


 回復の能力を示すパンとサボテンの花をバスケットに押し込む。

 さっきまでただのバスケットだったこれは今や私の武器。

 2つのものが1つのものになってでてくる。

 それを恨みも込めてユウの顔にかけた。


「なっなにするのよ!」

 しかし、回復していく傷を見て理解したらしい。

 そこから私の支援を受けたユウが敵を全滅させた。


 言いたいことはいっぱいあった。

 ありがとうとかそういう気持ちもあったけど最初にでた言葉は

「死んで楽になるなんて許さないわ。」


 人の記憶に残りたがらない私は誰かの印象に残るような事は避けてきた。

 だからお願いされたら何も言わずに答えてきたし、誰かが何かをしたいと言うのなら止めたことなんてない。

 みんな勝手にすればいいんだ。


「あら。昨日までとはうって変わって人に関わるのね。」

 そういう皮肉を返してくる。


 この人も私同様にわかってしまうんだ。

 私の生き方を。

 私がこの人の生き方を理解はするように。


 寂しいほどに不完全な私達は惹きあっている。

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