おしゃれは大事の前の小事
「ところで、その執事の服ってどこで買ったんですか?」
やっぱりヴェルは大人だ。
大人に対しては大人な対応をする。
「これですか?」
執事が自分の姿をみながら答えようとした。
「私が作ったのよ!」
ゴスロリ少女が俺たちに向かってしゃべった第一声がこれだ。
「へぇ~。凄い技術じゃないの?」
イオも興味深々といった感じだ。
「えぇ。私の裁縫のランクとデザインセンスはこの世界でナンバーワンですもの!」
うわぁー。
リルとそっくりタイプだ。
「ボクも着てみたいんだけど駄目かな?」
「もちろんいいですわ!ただし同じものは作りません。あなたにあったデザインで作らせていただきます。」
「おぉ!楽しみにしてるよ。」
「それでスリーサイズは?」
「スリーサイズ!?」
なんでヴェルにスリーサイズ聞くんだよ!?
驚いて声が裏返ってしまった。
それにしても、さっきまで気弱そうに執事の後ろに隠れていた姿はどこへやら。
だが、これは好機だ。
俺もカッコイイ装備がほしい!
「あのさ、俺の
「私にも可愛いの作って!」
イオの声に押し負ける俺・・・。
俺が姫風ドレス着た方がいいんじゃないかな・・・。
待てよ。
これはイオのスリーサイズを聞けるチャンスじゃないか!
「いいですよ。執事服ですね。」
「え・・・?」
イオが愕然としている。
「すごく似合うと思うのですが、ダメですか?」
「う…うん。じゃ執事服で。」
「ウェディングドレスがよかったですか?」
がっかりしているイオに優しい言葉をかけている。
リンカは意外と良い子のようだ。
しかし、イオ!
こっちみて赤面しすぎでしょ!
俺の許可がほしいのか!?
そして、各々の注文を受けた後、リンカは作業に入った。
こんなことで日を過ごしてる場合じゃないと思うかもしれないが。
防具として上級の裁縫職人が作った防具にはスキルやステータスがつくこともあるため、非常に重要な準備なのだ。
今までギルドで買ってきたのが間違いだ。
ーーー。
次の日。
夕日が眩しい時間帯。
「できました。早速着てみてください。」
それぞれ部屋に戻り着替えている。
よし、ちょっとヴェルの様子を見に行くか。
「入るぞ~。」
勝手にドアをあけて侵入すると・・・。
半分脱ぎかけた背中が見えている。
男とは思えない綺麗な曲線で構成された華奢な体だ・・・。
脱ぎかけの服を手でおさえてこちらをみている。
なにこれ。
俺は男の裸を見ているはずなのだが・・・。
いや・・・。
目覚めたりはしないぞ!
「かなた・・・。あんまり見ないで。」
おい!なにそのリアクション!
つーか、俺そんなに見とれてしまったのか!
とりあえず部屋から出た。
自分の胸の高鳴りが聞こえる。
イオ・・・ごめん。
俺は最低な人間だ。
よし!
こうなったらイオの裸で俺は自分を取り戻す!
「イオ~。入るぞ~。」
大丈夫。
俺はアロンダイトを受ける覚悟がある。
「ちょ!待ってよ!心の準備ができてない!」
純白のウェディングドレスのイオがいた。
胸のあたりの防御力が薄い。
この高鳴り・・・俺はやっぱりイオに惹かれている。
「イオ。よかったな。俺はまともだ。」
「どこがまともなのよ!女の子、それも着替え中ってわかってるのに入ってくるなんて!」
追い出された。
ヴェルだったら剣で斬り殺されてただろうが。
俺は盾で顔を殴られる程度で済んだ。
これが恋の力だ。
そして、イオの部屋の前で泣いているルリに会った。
「どうした?」
「すごく素敵でした。イオさん。私も着てみたかったです。」
「頼まなかったのか?」
「頼んだらそんな体型には似合わないってこれを着せられたんです。」
なるほど。
だからルリはネコミミフード付のパジャマ着てたのか。
あまりに似合ってるからいつもそれなのかと思ってしまったぜ。
「見ろよ!これ!」
リルが自慢げにくるりと一回転。
イヌミミパジャマだ。
似合ってる。
しかし、おまえそういう趣味だったんだな。
「ところでおまえら。」
全員のお披露目が終わった中で言う。
「そんな格好で人前でたり戦ったりできるのか?」
結局、戦闘向きの服を作り直し、さらに次の日まで時間をかけた。