本人ほどわからない感情
その執事はレオニクス・ルテナントと名乗った。
そして、自分が五番目の自殺志願者であるとも言った。
ただし、この人の場合、自殺志願というのを言葉通りに受け止めてはいけないタイプだ。
気になるのは、どこかで見た記憶があるということだ。
「リンカお嬢様の執事をしております。」
さらにそう付け加えた。
今まで執事にあったことないから勘違いかな。
聞いて見るか。
「現実でも執事なのか?」
「いえ。」
「確か。ルテナントって警部補じゃなかったかな?」
「はい。警察をしております。」
普通こういうゲームで現実の情報をはっきりともらすことはない。
ゲームの世界に慣れてないんだろうな。
まあ俺も現実でのつながりが気になって聞いちゃったわけだが。
「ヴェルはなんでも知ってるよな。」
今まで聞いた中で知らなかったことってほとんどないんじゃないかな。
「褒めても何もでないけどね。」
ヴェルが紅茶をそっと俺の前に出した。
うちの執事の方が優秀だな!とニヤリとしながらリンカと呼ばれたゴスロリ少女に勝ち誇ってみた。
膨れる少女と割を食う執事。
「レオ!私はお菓子付きの紅茶がいいわ!」
「お菓子ですか・・・。」
困った顔をする執事。
「はい。どうぞ。」
ヴェルがモンブランを献上している。
悔しい!ヴェルは俺のものなのに!
しかし、冗談は置いておくとやっぱりみたことあるんだよな。
この顔。
お茶をリンカに出したあと自分のも用意している。
急須で緑茶だ。
「あー!」
みんなが俺の声に驚くが俺が一番驚いてる。
「LLの箱の扱いに困ってた交番の!」
「西古井の駅の交番ですよ。」
「近所じゃないの!」
イオも驚いている。
つーか、住んでる場所ばれるじゃねぇかよ・・・。
「なんで来たんだ?」
人のことは言えないが…。
「もうすぐ定年の身としては人々のために働きたかったのですよ。目の前に運命の糸が届いてしまったのですから、「やるしかない」そう思ってしまったのです。」
なるほど。
俺とは違って本当にすばらしい人間だな。
「ここでの幻実に打ちのめされましたがね。私にできることはほとんどなかったのですよ。」
それからなぜ執事になったのかを話してくれた。
そして、なぜユグドラシルを目指すのかを。
「最終的には俺たちもユグドラシル攻略を目指すけど。まずは俺の姉さん探しになるがいいのか?」
「もちろんです。あなたの家族愛には感動しました。ご協力させてください。」
すごい恥ずかしい・・・。
そして思い返してみる。
俺の姉さんに対する感情はどれだったのだろうか。
家族としての愛。
尊敬や憧れ。
・・・異性としての愛・・・。
あってはならない気もするが可能性はあるだろう。
どれかはまだわからない。
今、俺がイオに対して何も答えられないのはきっとここにある。
イオにとって嫌な結果だとしても先送りにはできない。
俺は姉さんを探して。
ただ支えるだけでなく、その答えを知らないといけないのだ。