表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/99

お姫様は誰

 ヴェルは再び他の街へ行くと言って去っていった。


 あいつのことだから姉さんの情報を集めにいったのだろう。

 お節介なやつだ。


ーーー。


 ファランの家に帰るとイオが玄関で待っていた。


「ほら。準備しておいたよ。」

 差し出される荷物。

 ミーミルまでの準備だろう。


「行かない。」

 きっと色々いってもわからないやつだからはっきり言ってやった。


「なんで?シスコンらしくないじゃない。」

 それでもわかってくれなかった。

「なんでって言われてもな。姉さんじゃないかもしれないし。」


「氷花さんでしょ。それに違うとしても確認したくないの?」

 断定できるほど姉さんはわかりやすい人間だ。

 ただし、身近な人間だけに。

 

「まぁな。誰かが勝手にクリアしてくれるだろ。」

 なんともかっこわるい返事だが、それがこの世界にいる普通の人間だろ?

 沈黙になる理由がわからないな・・・。


「かなたの考えはわかったわ。でも、私の顔を見てよ。」

 そう言われて気づいた。


 俺は最近イオの顔を見て話すことができなくなっている。

 俺に責任はないと言っておきながら何かに負い目を感じている。


 それでも、荒野のボスとの戦いで死にかけたことやイオを失いかけたことを思い出すと怖いのだ。

 この思いは誰にもわからない。


 そんな気持ちを見越したかのように・・・。

「ねぇ。何を思っているのか教えて。私にも不安を共有させてよ。」

 そして、その言葉に俺は涙をこらえきれなかった。

 

 ついに、弱い自分を吐露してしまった。

 現実に帰ったらもう葵の顔も見れねえよ・・・。


「武器を見るのも怖いんだ。あの日の事を思い出してしまって。」

「そうなの…。ごめんね。みんなかなたを追い詰めたんだね。」

 やっとわかってくれる人がいた。

 誰もわかってくれないと信じきっていた…。


 がちゃり・・・?

「それはPTSDかもしれませんね。関連するものを見ることでフラッシュバックしてしまう。」

 ファランが扉の影から顔を出している。


 扉の向こうできいていたのか…

 全然気づかなかった。

 まじで恥ずかしい・・・。


「ファラン。仕事終わったの?」

「ちょっと気になってしまって。少しだけ帰ってきてしまいました。けれど、イオさんにお任せします。それでは!」

 っと去っていった。

 気をつかう気があるのなら聞かなかったことにしろよ…。


 俺は今度こそ本当にいないか確認に何度も扉を開け閉めして確認した。

 鍵を掛けたり箒を挟んだり二度とあかない様に扉を融解させ壁にくっつけたりした。


「もうダメだ。恥ずかしさで死ぬ。」

「大丈夫。」

「何が・・・。」

「何かが・・・。」

 

 イオの優しさが痛い。

「そうか・・・。」

 

 しかし、俺の不安を表出してみて、自分の知らなかった不安に気づけた。

 それに、恥ずかしい話だがイオが知っていてくれることで不安が薄くなった気がする。


「じゃあ、こうしましょう。」

「ん?」

「かなたが死んだら私も死ぬ。私が死んだらかなたも死ぬ。」

「なんでだよ!?」

 びっくりしてこけてしまった。


「不安なんでしょ。どこでも私が幼馴染になってあげる。」

 なんてグロデスクな約束だ・・・。

 こんな苛烈な奴が俺の幼馴染ですよ・・・。


「軽々とよくそんな事が言えるな。」

「かなたのこと好きだからね。」

 平坦脳波---。

 俺は脳死したかもしれない。


「よっぽど男らしいよ。葵は。」

「そうね。」

 微笑む顔がとても素敵だった。

 恋の経験がなかった俺には確信が持てないけど、俺も好きなのかもしれない。

 それでも、「かも」だ。

 確信はない。


「俺はまだ返事ができないな。ただ・・・。一緒に来てくれないか?」

「守ってあげるわ。お姫様。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ