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デスゲームの始まり

 進路相談は予定より長引いた。

 俺は姉さんを支えたい。

 両親が死んでから3年間、姉さんは高校生でありながら一人で俺を育ててくれた。

 祖父から同居の提案もあったが、両親の思い出が残るうちに2人でいた。

 隣の環状家のひとも良くしてくれたおかげで2人で幸せだった。


 だけど、逆に言えば将来が具体的に見えない俺には相談するだけのものが無かった。

 結局のところ、進路相談は少しの進展も無く終わった。

 今のところ、料理ができて家事もできる自分に不十分を感じていない。


「さて、帰るとしますかー。」


ーーー。


 帰る途中にいつも交番の前を通る。家から一番近い駅の横にあるから仕方ないけど、悪いことしてなくても緊張してしまう。

 横目でチラッと中を見てしまうのは癖になっている。

 しかし、いつもの平穏無事な様子では無かった。

 いつも茶をすすりながら和んでいるそろそろ定年かと思っているおじいさんな警察官が爆発物を見るかのような目で俺も知っている箱を睨みつけていた。

 LL初回版の箱だ・・・。

 嫌な予感がした。

 確かに希少価値で数百万ぐらい余裕で行くんじゃないかというゲームだから扱いに困るだろうけど・・・。

 そんな悪い予感は数分後に真実を教えてくれた。

 町が騒がしい。

 特に、町の中で最も大きいモニターを掲げたデパートの前。人だかりができている。

 普段は流れているニュースに見向きもしてもらえないそれは今日は違った。

 モニター内のニュースキャスターも見るからに慌てている。


「緊急放送です。ラストライフ・オンラインというゲームにおいてダイブアウトできない、ゲームをやめられない状態になっています。電源を落とすなど強制的にダイブアウトさせた場合、ダイバーの脳に障害が発生し、脳死する事があります。絶対にダイブアウトさせず警察に連絡をお願いします。」


 ニュースキャスターの前にさらに新しい紙が渡された。

「新しい情報が入りました。このゲームの製作を行った井形尋仁いがたひろひと・・・容疑者からの映像が届いている様です。」


ーーー。


「皆さんこんにちは。井形尋仁です。3万人のダイバーを私が預かりました。しかし、彼らには飽きる事のない生活を提供しますよ。ただし、ダイブアウトする事は誰一人として認められません。ダイブアウトするためにはゲームをクリアするしかない。といってもゲーム内で死亡すると現実でヘッドギアから死のデータが送られるので気をつけていただきたいものですね。死んだと脳が認識すれば人はほんとに死ねるのですよ。ヘッドギアやゲーム機に衝撃を加えるのもオススメしません。ちなみに、私を捕まえて止める事も出来ません。なぜなら私は誰の手も届かない世界に逃げるからです。」

 

 映像はそこまでだった。

 尊敬するその人の姿とその声を聞いてやっと俺は理解した。

 デスゲームが始まったのだと。


「姉さんを止めないと!」


ーーー。

「姉さん!」

 姉さんの部屋の扉を蹴破る勢いで開けて入ると、ベッドの上に静かに眠っている姉さんがいた。


 ヘッドギアで顔が見えない。

 姉さんは既にLLの虜囚になっていた。

ーーー。

 そして、悲しみに浸る間も無く俺の頭は解答を出していた。

 携帯電話で110と押し、テーブルの上に放り投げた。

 そのまま、自分の部屋に戻りゲーム機に電源をつけ、ヘッドギアを被りベッドに倒れこんだ。

 目の前が真っ暗になりいつもと違う注意書きが表示される。


「ラストライフ・オンラインに絶対にダイブインしないでください。ダイブアウト出来なくなっております。また、現在、ダイブイン制限をかけようとしていますが、成功しておりません。ダイブインしない様にご注意ください。」

 それを無視してLLを起動した。


 薄れゆく意識の中で、隣の家までが騒がしい事に気づく。

 俺が来ないから怒っているんだろうな。すぐには行けなさそうだ。


 ごめんと口に出してつぶやいたところで俺の現実での記憶は消失した。


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