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それでも火は入らない

 仲間だったやつらと別れてさらに数日がたったある日


 イオだけがずっと一緒にいてくれた。


「イオ。今日はどこいくんだ?」

「昼食食べに中央区行こ。」


 そして、幸せそうに笑った後、苦笑いに変わり俯く。

 こんな毎日が続いている。


 俺がここにいることでなのか戦えない自分になのか。

 葵は苦悩している。


 それは俺の言葉だけではどうにもできない。


「何がいいんだ?麺類?」

「かなたが食べたいものでいいよ。」

「じゃあ行ってから決めるか。」


ーーー。


 偶然目に入ったダイバー運営のレストランでご飯を食べることにした。


「美味いな。」

 そして美味しいほどにイオの顔は暗くなる。

 食べられない人達やなんとか安いもので食いつないでいる人達のことを思っているのだろう。

 そんな昼食を終え、街の散歩に誘ったがイオは帰ってしまった。


 俺は仕方なくファランが働いている喫茶店へ向かう。

 

 コーヒーを注文しファランをぼーっと見る。

 ファランはあった時に見せた商業的な笑顔を見せるだけで、心から笑ってくれることは無い。


 わかってるんだ。

 みんな俺にユグドラシルにいけと言いたいんだ。


 でも、姉さんもいないのになんで俺が死にに行かないと行けないんだ。

 いいじゃないか。

 こうやって日々をだらだらと過ごして。

 みんなそうしてるだろ。


 最近じゃダイバー間で強盗や騙し取る事件が増えている。

 そんなやつらの為に俺が生贄になる意味があるのか。


 ほら見ろ。

 早速向かいの店で強盗だ。


 大男が店員を殴りつけて逃げ出している。


 そこに懐かしい顔が現れた。

 大男の走る前に立っている。


 殴られたら飛んで行きそうな細い身体。


「邪魔だー!」

 そんな乱暴な言葉を叫びながら殴りかかる。

 しかし、軽くその腕を掴みねじり上げる。


 地に伏す大男。

 腕を掴んだまま相手の背中を足蹴にする優男。

 黄色い声援。


「ほら。とったお金出して。」

「うるせぇ!」

 無理矢理振り解こうとする。

 が、ぱきっと音を立てた後、大男の絶叫が響いた。


 その後は大人しくお金を返し二度ともうしないと誓って帰っていった。


 そして、その優男はこっちの歩いてきた。


「やぁ。ファランさん。」

「ヴェルさんじゃないですか。」

「紅茶をお願いします。ミルクたっぷりで。」 

 っと挨拶を済ませたあと再び俺の方をみた。


 そして、俺の前の席に勝手に座る。

「かなた。久しぶり。」

「おぅ。久しぶりだな。」

「元気してた?」

「まあな。」

「家に行ったらイオがここだろうっていうからさ。」

「そうか。」

 それだけで会話が途切れる。

 

 昔はこうじゃなかったのにな。

 昔っていつだよ・・・。


「本題に入るね。かなたの姉さんの噂を聞いたんだ。」

「名前もわかんないのにか?」

「氷の魔女って噂。」

 ・・・。姉さんらしいタイトルだ。

「ユグドラシル10層の攻略のリーダーだったらしいよ。あ~。ユグドラシルって50層なんだって。10層ごとにボスがいてね。」

「で、その攻略に貢献したと。」

「うん。2人ぐらい死んだみたいだけど初見でよくそれだけの被害で勝てたよね。」

 姉さんなら当たり前だ。

「ということで、ユグドラシルに行こうよ。」

「俺は行かない。」

「そう。理由をきいてもいい?」

 ここで怒ったりしないヴェルは大人だと思う。

 俺は子供だ。

 高校生に世界を救えなんて無理言うなよ。


「姉さんじゃないかもしれないしな。わざわざ俺が危険なことしなくてもいいだろ?」

「そうだね。こういうのは大人に任せるのがいいかもね。」

 そして、紅茶の香りを楽しみながら口をつけた。


「怒らないのか?」

「怒らないよ?でも、ここで楽しく生きてほしいかな。時間はいっぱいあるし。」

「あぁ…。」

「ただ、姉さんを迎えに行くのぐらいしたらどうかな?心配でしょ。」

「そうだな。考えておく。」

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