制覇にかける思い
「どうでしょう。お嬢様。」
「すごく似合うよ。さすが私ね。」
その笑顔はとても美しく輝いています。
この1つの花しか守れない私の小さな力ですが…
この1つを守れることが私の誇りです。
「ねぇ。執事。」
「なんでしょう。お嬢様。」
「いつまでいてくれる?」
「いつまでも側にいますよ。」
「そう。それじゃ私は安全ね。」
あれからこの会話を何度行ったでしょうか。
確認作業を何度も繰り返して日々を過ごすことはきっと彼女にとっても辛いことだと思うのです。
それでも、彼女はこの世界に対する怨みを一度として漏らしたことがありません。
その夜、私はお嬢様と一緒にいつもの宿に帰りました。
「また私、朝を迎えられるのかな。」
「安心してお眠りください。私がここにいますので。」
「もう少しこっちに。」
歳の頃はあまりわかりませんが、無用心に男を近づけるのはどうかと少し心配になります。
それでも、彼女はそうしないと心を守れないのですから仕方ないのかもしれません。
ベッドの横の床に座りました。
そっとベッドのふちから伸びる彼女の左手をぎゅっと右手で包み落ち着かせる。
こうしなければ寝ることすらできない。
あまりに哀れな命です。
「ねぇレオ。私もう帰りたいよ。」
今までそれだけは言わなかった彼女の言葉でした。
それが難しいことで、どういった未来に辿り着くのか。
死ぬという可能性を受け入れること。
それをはじめて行ったのかもしれません。
「わかりました。終わらせに行きましょう。」
もとよりおいさき短い私の命。
それを燃やして彼女を現実に帰してみせましょう。
明日、私達はミーミルを目指します。