収束の後の別離
カルムの街を散歩している俺。
隣を歩くイオ。
騎士の姿をやめ、動きやすそうな格好をしている。
ホットパンツから伸びる足が健康的だ。
現実でもよくこんな格好をしていたが別に気にならなかった。
今はそれをやめて欲しいと思う。
男どもが見ているだろ・・・。
「なんか急に肩の荷が降りちゃった感じね。」
「そうか。」
「あんたは行かなくていいの?」
「姉さんがこのエリアで俺の名前に気づいてくれるの待とうかなって思ってるよ。」
「そう・・・。」
イオが歩くのをやめてこっちを見ている。
「でもさ、なんだか光を失った様に見えるな。」
「俺が?」
「うん。大丈夫?」
「俺は変わらないよ。待ってるだけさ。」
「でも、みんないなくなっちゃったじゃない・・・。」
空を見上げてぽつりとつぶやいていた・・・。
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もう何日前だったか覚えていない。
カルムの出口で俺はヴェルを見送っていた。
「かなた。僕は少し他の街に行ってくるよ。」
「・・・そうか。」
「僕がいなくなったからって無理しちゃだめだよ。」
「ああ。もう少しここにとどまるつもりだ。」
ヴェルの顔には寂しさが表れている。
「そっか・・・。疲れたんだね。少し休んで元気になったらまた遊ぼうね。」
「そうだな。そういうのも必要だよな。」
微笑んで見つめてくる顔はもう何も語らない。
「何かあったら連絡頂戴。」
「ああ。またな。」
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ヴェルが去って数日。
ファランの家で昼食を食べている時だった。
「私達は魔術学園ミーミルに行こうと思います。」
「そうなのか?」
「えぇ、お兄ちゃんがどうしても行きたいってうるさくて。」
リルは憮然としてしゃべる気がないようだ。
最近ちゃんと話をした記憶がない。
「ユグドラシル攻略が始まっているという話ですから。それのサポートもできるんじゃないかと。」
「なるほどな。それならミーミルが一番近くていいとこだな。」
「はい。」
その後の言葉があるのに言いづらいという感じだ。
「どうした?」
「その・・・。私達はミーミルで待ってますから。お姉さんもきっとユグドラシルで待ってると思います。」
「もう死んでるかもしれないけどな。」
黙ってしまった。
口に出してみて一番ショックだったのは俺なのにな。
「おい!かなた!見損なったぜ!」
「何に期待してたんだよ。」
「難しい言葉は言えないけどな。おまえが一番生きる力が強いと思ってたよ。」
「生きる力ってなんだよ。」
「知らん!」
そうして出て行くリルに追いかけていくルリ。
それから、ファランの家には俺とイオとファランしかいなくなった。
ファランもよく外に出るようになってほとんど話していない。
俺はいつのまにか1人だ。
みんな、俺に死ねって言うだけで。