ただ単純ではいられない
デウス・エクス・マキナの消滅に合わせて消えていく身体から1つの槍が残った。
最初は戦利品と思ったが違うらしい。
ファランがそれを拾っている。
きっと親友の遺品なのだろう。
「出ておこうか。」
「そうだな。」
デウス・エクス・マキナが消えた向こう側にある扉へ向かう。
イオは慰めるべきか悩んでいる様だが、俺と目が合うとこちらへ走ってきた。
そして、三人で扉の向こうで待つことにした。
扉がしまり、こちら側からは開かない仕組みのようなので背中をあずけた。
「なあ。葵。」
「なに?」
・・・。
「卑怯よ!」
「なんで隠すんだよ。」
イオも俺の隣で扉に背中を預けた。
「恥ずかしいじゃない・・・。」
「かっこよかったじゃないか。」
ため息ひとつ。
「かっこいいってあんまり嬉しくない・・・」
「何か言ったか?」
「なんでもないわ。シスコン。」
まったく否定できない。
「そんなに氷花さんが大事ならなんで来たの?」
ヴェルの顔を見てみた。
珍しく苦笑いをしているが、もう止める気はないらしい。
「姉さんもここにいるんだ。」
「えっ?」
「俺はその後追い(チェイサー)なんだ。」
「そっそうなの・・・。」
「なんで葵もいるんだ?俺が学校から帰った頃に部屋から物音してたのに。」
「親でも来てたんじゃない。帰ってすぐダイブインしたもの。」
なるほど。
そうだったのかもしれない。
「見せたかったものってこれだしね・・・。」
なんと答えていいかわからない。
「そうか。」
イオの言葉にも元気がない。
「でも生きてて良かったよ。」
「そう。ついででも嬉しいね。」
俺の本心だったが受け入れては貰えなかったようだ。
それでも沸いてくる思いがある。
死んで欲しくない.
その思いが決定的な亀裂を生むことになった。
「なぁ葵。」
「何よ。」
「カルムに残ってくれないか?」
その後、言葉1つさえくれないまま全員でカルムに帰ることになった。
ーーー。
帰り道。
亀裂から抜け出られた僕達は、カルムへ向けて歩いて帰っている。
かなたとイオさんは険悪なムード。
なんとかしてあげたいけど、きっとかなたなら自分でなんとかなるだろう。
「ファランさん。眼鏡はどうしたのかな?」
「ユウの忘れ物はやっと渡してあげられました。」
「きっと私のこと馬鹿って怒ってくれたと思います。」
「そっか。よかったね。」
「はい。」
僕はやっとファランさんの本当の笑顔が見れた気がする。
僕には作れなかった笑顔だ。
これが絆なのかな・・・。