終幕のあり方
蓋が開くと同時に、黒い箱の内側から光が放たれた。
「遊んでるんじゃないわよ!」
ミサイルを防いでいるイオに怒られた。
「発明王に言ってくれよ!」
出てきたのは宇宙戦艦大和にくっついていたスラスターを二個横にくっつけた巨大な弾丸だった。
「説明しよう!硬い装甲のまえに苦労してるんじゃないかい?かなたくん。」
話し方がおかしいがリルの声が箱の底から響いている。
それにしてもこの予測能力というか目の付けどころは驚かされる。
リザードマンに対しても敵の特性を見抜いてたしな。
「そんな敵にはこれ!ディザスターブロークンマグナムオペラだ!略してDBMO!ブラック・バートの先端につけることで打撃属性の超破壊を発生させられるぞ!」
「おっけー!わかったぜマイブラザー!」
リルの心意気は毎回最高だ。
っとつけてみたが先が重くて上がらない。
力を込めても全然あがらない。
「かなた!危ない!」
バルカン砲の攻撃が再び始まっているのに気づかなかった。
急いで横に転がる。
結果、代わりに空になった黒い箱を吹き飛ばした。
「ギャー」
リルの悲痛な叫び声がこだました。
どこまで芸が細かいんだ…。
しかし、全くブラック・バートの銃身をあげることができない。
あいつはここまでは予測してくれなかったのか…。
そもそも上がったところでこんな重いもので敵を捕捉できるとは思えないが。
確かに有効そうな見た目なのだが…。
「ダメか!」
「諦めないで、かなた。お膳立ては僕のお仕事だよ。」
イオの剣から飛ぶ電撃をジャンプして回避する敵の足にワイヤーが絡まっている。
それに引かれて激しく地に落ちた。
その体型からか横に倒れたらなかなか起きられないようだ。
「ナイスだ!」
寝そべり銃身を地に這わせ構える。
「まって!」
ファランの声に止められた。
「これを!ずっとこれを作るためにお金を貯めてた!」
そして、錬金術で作り上げたのは巨大な爆弾がいくつも連なる連鎖爆弾だった。
「でも、飛行部分が買えなくて。」
リル作成BDMOが奪い取られ、爆弾と共にバスケットの中に収納された。
出来上がったのは巨大な爆弾にスラスターがついた塊だった。
「撃つぞ。」
倒れこんでいる胴体に向けて放つ。
そして、敵の胴体の装甲を破り、その中にめり込んだ。
HPの三割が吹き飛ぶ。
吹き飛んで…。
あれ?…
何も起こらないどころか破れた装甲が回復していく、
「あーっ!着火装置ついてない!」
ファランがどじっ子ということがわかった。
しかし、もはや着火しようにも装甲が回復し、ほとんど見えなくなってしまっている。
ブラック・バートから火弾を放つも着火にはいたらない。
「もう次のチャンスはないぞ!」
「大丈夫。任せて。」
ヴェルが弓を横に構える。
「火の精よ。力を貸したまえ。」
左手から火がともり矢の先端についた。
「無理矢理の終わり方っていうのは芸術とは言えないんだよ。こんな風に全てを整然と済ませ綺麗に幕を引くんだよ。そう、Drow a Curtain。」
とかなんとか言いながら矢を放つ。
そして、はなたれた矢は火の鳥になり、すっと敵の装甲の隙間に入り込んだ。
内側の極大魔法級の爆発が炸裂する。
装甲の隙間から火炎が漏れ、機械なりの悲痛な叫びをあげHPをはじけさせた。
デウス・エクス・マキナは強大な力をもって、終幕をもたらすという機械仕掛けの神としての役目を果たすことなく消滅したのだ。