不器用な敵討ち
怒っているイオに会うのが怖い俺はまだ帰れないでいた。
ちょっとカルムのバザーでも見ていくかな。
リルが凄いものあるっていってたしな。
ーーー。
そんなわけでバザーにきた。
なるほど。
確かにトスカーレとは街にいる人間の雰囲気も違えば、売ってるものも違うんだな。
ここのバザーは電気系の製品が目立つ。
通りを歩く人もつなぎだったり白衣だったり研究だったり機械系に関するクラスが多そうだ。
βの時はあまり街特有の雰囲気がそれぞれの街ごとに別れていなかった。
こういう雰囲気の違いを楽しむために色んな街をまわってみたいと思わせてくれる。
これがMMOでは欠かすことのできない醍醐味だとも思う。
さてと、面白そうなものはないかバザーを見てまわろう。
「いらっしゃいませ~。バッテリーパンいかがですか~。食べたら電撃が体中を流れたような気になる美味しいパンですよー。」
「ファラン。バッテリーパン一個頼む。」
「は~い。まいど~。」
キャッチャーミットの形をしたパンを手渡された。
「それで、何してるんだ?」
お金を払いつつきいてみる。
「見てわかるでしょ~?販売代行のアルバイトだよ。」
なるほど。
メイドがエプロンしてるのはそういうことなのか。
「なんでそんなお金を集めてるんだ?家のローンなんてシステムなかっただろ。」
「そうだね。家は一括払い。借金嫌いだし。お金集めてる理由ね…。」
「言いにくいことならいいんだが。」
「君に助けたお代を払ってもらったら残り1万だしな~。教えてあげよう。1万リルで。」
RPGでよくあるよな。
お金を投資し続けるとすごい武器くれたりするイベント。
しかし、こいつの場合、ダイバーなのでそんな美味しい話になるわけがないのだが。
「お金以外に欲しいものってないのか?」
「そうねぇ…仇討ちかな…。」
びりっときた。
バッテリーパン恐ろしいな…。
味とかで電撃っていうより実際電撃が流れた気がする。
髪がちょっとアフロってる…。
「仇討ち?」
「そう。それがお金の理由。」
「おい!?もう1万の借金追加されたのか?!」
「そのようですね~。」
そして俺は知ることになった。
ファランが親友と一緒に家を買うために頑張ったこと。
親友と2人で家を買ったこと。
親友と一緒にこの世界で生きていたこと。
親友がファランを助けて死んだこと。
その仇がこのエリアのボスであること。
そのために金が必要なこと。
「5万リルは踏み倒させてもらうか。」
「ダメ。それで仇と戦うための目標額に届くんだから。」
「その仇、俺が倒してやるからさ。」
「ダメよ!あいつとんでもなく強いんだから。人をこんな話に巻き込めない。」
「じゃあ死ぬ気か?親友は誰のために死んだんだ?、」
こういう時、俺は自分の優しさの足りなさにがっかりする。
ヴェルならきっと優しく言ってあげれるんだろうな。
結局、そんな優しさのかけらもない言葉に対して黙ってしまうファランを見ても俺はそんな俺を続けるしか方法を知らない。
「俺の目標はそいつを倒すことなんだよ。探し人に見つかるためになだから譲れない。」
「あなたもしかして後追い?」
「そうさ。後追われたい状況だけどな。そんなわけで俺が倒す。」