最悪の敵
トスカーレを出て三日目 デルカ荒野。
砂漠に引き続いて不毛の大地だ。
枯れた様に見える木がまばらに見えるだけで黒い大地が延々と続く。
ところどころに見える深い地割れの下は闇だけで落ちたら死ぬ以外の選択肢が見えない。
そんな荒野の真ん中に光輝く科学都市カルムがある。
その光はデルカ荒野に入った時点で見え、旅人の道案内をしてくれるわけだ。
とまぁ、説明口調で話す俺は既に身体から魂が抜けかけているのかもしれない。
左側を見た。
リルがヴェルの鞄の中で白目を剥いている。
「どうしたのかな?」
ヴェルがいつも通りの涼しい顔で微笑んでくる。
だが、顔が真っ青だ。
右側を見てみる。
イオがルリの肩を借りて歩いている。
種族差による身長さで肩というか身体を借りて引きずられている。
ルリはまだなんとかなる様だが、この全滅寸前のパーティーを救えるとは思えない。
「めぇ~しぃ~。」
リルの怨嗟の声が響く。
そう。俺たちは空腹感の前に無力で…全滅しようとしていた。
三人で三日分の食事。
一人で九日分。
五人では?・・・そういうことだ。
走馬灯が見える。
ーーー。
「失敗しちゃったね。」
「もうほとんど食事ないな。」
「おまえら馬鹿だな!」
一番馬鹿そうなリルが騒ぐ。
「あんまり騒いでカロリー使うものじゃないわよ。」
イオがたしなめるが・・・。
「うるさい!残り分、五人でわけておくぞ!」
リルがうるさいので全員従うことになった。
しかし、残り少ないな。
「私は小食なのでみなさんでどうぞ。」
ルリが自分の取り分を分けていく。
「僕はいいよー。成長期の女のコはしっかり食べないと。」
ヴェルは優しいなぁ・・・俺は貰うぞ。
「なぁイオ。」
「なに?」
「イオはくびれが素敵だよな。」
さらに俺の分が増えた。
「発明王にかかれば食料問題など一発で解決だぜ!」
「やめておきなさいよ。」
「だな。増えるとかないだろ。」
「例をくれてやろう。ポップコーンは?」
「増える?」
「わたあめは?」
「増える!」
「パンは?」
「増える!」
「食料は!」
「「増えーる!」」
「発明王!俺のも頼む!」
こうしてリルの分と俺の分の半分を発明王の本気にかけることにした。
イオが冷ややかな目だ。
「リルといると馬鹿になっていくわね・・・。とりかえしのつかなくなる前になんとかしないと。」
そうして出来たのが食料型爆弾だった。
もう駄目だ。
メイドな天使のお迎えが見える。
・・・ぱたり。