新しい武器
「イオ。起きろ。」
「んー。もう少し。」
「イオー!」
「なによぉー。」
「ご飯食べて出かけるぞ。」
「持ってきて。」
こんな悪い子だとは知ってました。
昨日から大変だったのだ。
昨日の夜、結局こいつついてきやがりまして。
ベッドで寂しかったとか嬉しかったとか泣きながら色々言うもんだから慰め続けて。
そしたら、いつのまにか寝やがりまして。
寝顔が可愛すぎるので起こせず俺が床に寝ることになりやがりまして。
で、これですよ。
なんか現実での知り合いにもこんな感じの奴いたな。
「仕方ないな。とってきてやるか。」
っと廊下に出るドアノブを掴もうとした瞬間、ドアが開いた。
空振りすることになった右手が虚しい。
「かなたー。おはよー。ご飯とってき・た・よ・・・。」
「かなた!大人の階段登っちゃったの!?こんなので!」
「こんなのって言うな。俺の妻だ!」
ちょっと冗談を言ってみた。てへっ。
「コロス!この女コロス!」
「おい!?おい!ヴェルー。冗談だぞ!!」
「言っていい冗談と悪い冗談があるんだよ!」
「ごめんなさい!」
こうして朝から人が死にそうだった。
殺されそうだった本人はそれに気づくこともなく、やけにもじもじとしながら布団の中で惰眠を貪っていたようだが。
ーーー。
「それは朝から災難でしたねぇー。」
どうみても楽しんでいる風なルリはまだ鉄を延ばし中で、剣はできていなかった。
「ところで今までかかるくらいの鉄鎧あったか?」
「えっ。ええまぁ。」
目を見れば昨日徹夜だったのがよくわかる状況だ。
「そいつ。夜にそこのイケメンと茶しばきにいってたぜ。」
こっちもなかなかの徹夜っぷりの目をしたリルだった。
「ギクリ!」
ヴェルがわかりやすい。
「あんた何かしてないでしょうね!」
朝、回避したはずの対戦が始まった。
もう慣れたものなので気にしない。
「それで、発明王!どうだった。」
その質問まってましたとばかりに満面のニヤリ。
左腕に抱えた木箱を出しながら右手の親指を突き上げる。
「クールな一品ができたぜ!黒騎士の鎧の耐火が超兵器を可能にした!あと俺が発明王だからな!」
木箱を受け取る。
男のロマンがわかってるな。
しかし、横から釘が飛び出してて持ちにくいぞ。
開けるとシックな黒を全体の印象とする重厚な銃がしまってあった。
銀の装飾がほどこされ、カリブの海賊が使ってそうな見た目だ。
「まぁ俺の説明を聞きな。そいつは二連装のダブルショットができる。上のちっこいトリガーで左の弾。大っきいトリガーが右の弾だ。両方ひけば同時に二発撃てるぜ!」
「なるほどな。しかし、二発毎に排莢と弾いれないといけないのか。」
「まあそうだが、ロマンだろ。耐火が高い素材だから口径も大きくできたんだぞ。さらに!マジックカードの技術を応用して魔弾が撃てる!」
「なんだとー!?まさか2種類の弾丸合成できたり?」
「できるできる!」
「すげぇな!」
「だろ!?」
「発明王!」
「おうよ!」
「子供になんてもの作らすのよあんた・・・。」
イオのため息が聞こえるが今はどうでもいい。
「名前なんていうんだ。」
「あー!説明を読むな!」
なぜかリルが止めるが読んでみた。
ブラック・バート
黒髭と呼ばれる海賊が使ったと言われる6梃の銃のうちの一つ。
揺れる船の上でなお敵の心臓を確実に直撃したと言われている。
特殊効果:命中率上昇 AGI上昇
誤作動率15%
・・・誤作動率!?
「おい。誤作動ってなんだ発明王。」
「あのー、えーと、ほら!銃が爆発したり?」
「死ぬじゃねぇか!」
「死ぬ・・・かな?まあ誤作動したことないからどうなるか知らん。」
「まあまあ。装備してみなよ。」
ヴェルに言われてしぶしぶ左手に装備してみた。
見た目もカッコいいし誤作動率以外の性能も良い。
クラスチェンジ権を獲得しました。
クラス「バッカニア」にチェンジしますか?
バッカニア
銃と剣を手に自由のために戦う海賊。
身軽な動きからの攻撃はトリッキーにつきる。
「へぇ。βの時はクラス名が無くてピストル&ソードとかいう味も素っ気もない名前だったのにな。」
「だったねー。追加されたんじゃないかな。」
「とりあえずチェンジするか。」
アビリティ:爆発芸術を習得した。
「かなたさん。剣も出来ましたよ。」
「おう。どんな感じ。」
「イオさん!の使ってた剣にアイアンを加えて、頑強のスキルと軽さを重視しました。名づけてセーブザクイーン!」
「説明にスパタって書いてあるぞ!」
「これからその子の名前はセーブ!ざ!クイーン!です。」
「ルリは何がいいたいのかな?」
怒りのイオさん登場。
こうして俺の準備はできた。
ヴェルもイオもそれぞれに準備ができたようだ。