覚悟の夜明け
俺はみんなと別れて宿にいくことにした。
今日はほんと大変だったからな。
黒騎士と戦ったり、イオと知り合って、さらにルリとリルの双子にも会った。
ルリは高いクラスレベルでいい剣を使ってくれそうだし、リルは俺のアレを作ってくれるだろう。
昨日とは違って、前進してるという気持ちになれる。
姉さんをみつけるためにエリアのボスを撃破するという目的も見つかった。
でも、エリアボスは確実に強敵だ。
黒騎士以上に強い奴もいっぱいいるだろう。
それで俺だけが死ぬならいいが・・・。
イオやヴェルが死ぬようなことになったら俺は・・・。
失いたくないものが増えていくのを感じる。
俺には全然覚悟が足りないんだ。
デスゲームと知ってダイブしただけでは足りない。
もっと強烈な俺の覚悟が必要だ。
それなのに…今も、俺は昨日の宿にむかえないでいる。
あの雰囲気に触れることが怖くて。
だから、黒騎士討伐で手に入ったお金を使って、ちょっと高級な宿に泊まろう。
そう思って歩いてると後ろからの視線に気づいた。
なので全力で走ってみた。
「あっ!」
そして角で待ちうけた。
「とまれおまえ!っていうか誰だ!」
ガツーンと頭同士が直撃した。
「てめぇ…痛いだろ。」
「こっちだって痛いわよ!」
「つーか、イオかよ。」
「うぐっ…。」
「何のようだ?」
「ちょっと言いづらいことがあってね…。」
「なんだよ?」
「その…私がいると嫌なのかなって…。」
「嫌?」
「私が一緒に行くのは邪魔?」
「あぁ。それか。確かに嫌だな。」
「そう…。」
「今ずっと考えてたんだ。俺がやろうとしてることは死に近づいてるってさ。」
「死に近づく?」
「危険な敵を相手しないといけないだろ。そうすると、おまえやヴェルが死ぬことになるかもしれない。それが嫌なんだ。」
「でもさ、私だってこんなの終わらせたいよ。そのための近道があるならやる。あんたが一番ゴールに近い気がする。だからついていきたい。」
「でも、どうしても駄目っていうならここで大人しくしておく。」
俺はその一言でやっと気づいた。
失うかもしれないと知って気づいた。
一人で覚悟が決まるわけないんだ。
誰かを護りたいとかそういう思いがあってやっと歩ける。
それを素直に伝えることができないけど、イオもその一人なのだろう。
イオを助けたい。
それだけじゃなくて、イオと支えあいたい。
そうすれば俺の覚悟はきっと揺るがないから。
ヴェルも双子も、これから知り合う人たちも。
そして姉さんも。
「死ぬかもしれないけどさ。俺と来てくれるか?」
「もちろんだよ。あんた護るのは私だからね。」
「ところでさ、この私が押し倒されてるような構図はいつ終わるの?」
「役得だと思って楽しんでた。」
ぶん殴られた。