責任のあり方 責任のとり方
振り下ろされる斬撃から眼を離すことだけは許さなかった。
自分の判断のミスでヴェルを死なせること。
俺が死ぬことで姉さんをささえる人がいなくなるのも俺のせいだ。
だからこの剣撃は因果応報だ。
全て俺の責任だ。
振り下ろされる剣撃は間違いなく俺の首に向かって進んでいる。
そして、俺は死を受容する気持ちになっている。
それでいいのか。間違った責任はこれで許されるのか。
きっと間違ってる。戦うことが責任の取り方だ。
それでも死の剣撃は不可避。
「そこもっと頭低くして!」
声が早いか突き飛ばされる。
そして、派手に火花が散った。
白い騎士が盾で黒騎士の剣撃を受けている。
「早く立つ!」
「あっ ああ!」
白い騎士が黒騎士の連続攻撃をひたすら盾で弾いている。
反撃の余裕は無さそうだ。
「そこのアーチャー役に立つの!?」
「俺よりは!」
「じゃあ起こしなさいよ!そんなにもたないわよ。」
ヴェルのもとに走り顔を叩いてみた。
「ん。強烈な朝だね。」
「冗談言ってる場合じゃない!」
「冗談みたいな起こし方したのに・・・。僕もなかなかのやばい状態だね。」
ヴェルのHPは既に残り2割しかない。
黒騎士の攻撃の前ではどんなものでも一撃で殺される状況。
回復手段などはない。
それなのに俺は戦うことを選んでしまった。
だからこれが「俺の」責任だ。
黒騎士と白い騎士の激突は続いている。
「グィネヴィア!私こそ真の騎士だ!」
「意味わかんないこと言ってるんじゃないわよ!」
盾で思いっきり黒騎士の腕をぶん殴った。
アビリティーシールドストライクは相手の攻撃を止め、硬直を生む効果があるはずだ。
が、それで止まるようすもなく黒騎士の連続攻撃に防戦が続く。
剣を盾で受け続け、金属同士の衝突する高い音が何度も響く。
「かなた。あの敵たぶん狙う相手に特徴があるはずなんだ。」
「どう言うことだ?」
「黒騎士の正体はランスロットの物語だよ。理由はカットするけど女性と騎士に対して怨みがあるんだ。」
・・・。
つまり、俺達が逃げてもこっちには来ないのか・・・。
「早く助けないと白い人も長くはもたないよ。」
ヴェルのHPが二割。十分逃げる理由になる。
「ヴェル。今なら黒騎士の横を抜けれる。逃げろ。」
「何言ってるの!?」
「いいから行け!俺が残る。」
俺の命なら責任はない。
ヴェルと助けにはいった白い騎士が逃げ切れれば俺の命の価値としては十分だ。
・・・。
「それなら僕も残るよ。かなたがいないココじゃ楽しくないからね。何言っても駄目だよ?」
俺はまた選択に迫られる。
この選択はヴェルを殺すかもしれない選択だ。
だが、こいつはこういうやつだからな。
「これでヴェルが死んだら俺がおまえを殺したことになるな。絶対死ぬなよ!」
だから、こっちもわがままを言ってやった。
責任をとれる男になるために。
「そっちもね!あとこれ使って。」
左手にヴェルのハンターナイフを受け、右手にハイフォンソードを構える。
地面を蹴り、黒騎士の横から迫る。
「遅い!」
「その分取り戻させていただきますとも!」