今日の生活のために
ランスロットの森の湖には今日もダイバーがいなかった。
ゴブリンがいっぱいいるので寂しくはない。
だが、夜行性のゴブリン族なので歩き回っているゴブリンも眠たそうだ。
「ごぶん・・・ごぶん・・・」
鳴き声が可愛くなっている。
「じゃ始めようか。今日の生活のために。」
「そうだな。」
両手に構える武器も軽く握る。
そうだ。俺はβの時いつも手の中で遊ばせていたんだ。
握り込むのは当てる時だけ。
ヴェルが矢で攻撃したゴブリンは眠そうだった眼を開き、俺の方に向かって突撃してきた。
レベルが上がった今ならあの棍棒でHPが一撃で吹き飛ぶこともないだろう。
知覚加速を使い、ゆっくりになった世界で修理したてのサーペンダガーを使い受け流す。
そこから、右足を敵の頭に叩き込み体勢を崩す。
体勢が崩れるとダメージにボーナスが入る上、クリティカル率が上昇するチャンスになるからだ。
即座にマジックカードを投げつける。
もちろん敵にあたっても何の反応もない。
「紅蓮撃!」
振りかぶった両手の武器が炎をまとう。
さらにその武器がカードを斬り裂き炎を爆発させた。
俺の攻撃は圧倒的破壊をゴブリンに叩きつけ、8割残っていたHPを吹き飛ばした。
「よーし!いけるな。」
「やっぱりかなたは想像力が凄いね。」
「他にもパターンを思いついてるんだ。」
そうしてマジックカードを試しながら、かなりのゴブリンを倒した。
ゴブリンナイトを倒した。
クラスチェンジの権利を獲得した。
クラス「カードスロッター」にチェンジしますか?
カードスロッターに関する解説を読んでみる。
カードスロッター:マジックカードを利用して戦う魔術師 ポジション中衛 攻撃・回復・支援の初級魔術を修得可能
「パス!」
「いいの?」
「前衛以外は興味無し。」
「魔術までだしイマイチか。」
LLでは魔法に関して魔術、魔法、極大魔法の順で強くなる。
わかりやすい様に初級魔術、中級魔法、極大魔法と言う人も多い。
「ヴェルは今のクラス何?」
「ワイヤーアーチャーだね。体勢崩すのに便利なんだ。」
あきらかに俺の安全のためのクラスで恥ずかしい。
「それにしてもゴブの鉄系装備かさばってきたね。」
「鍛治師と仲良くなりたいな。」
「打算的・・・。」
聞こえない。
「さあ再開するとしよう。」
「都合の良い耳だねー。」
やっぱり聞こえない。
それからゴブリン狩りを再開し、かなりクラスランクもあがってきた。
そろそろもっとレベルの高い敵が必要かもしれない。
そんなことを考えてるうちにゴブリンのHPが半分をきっていた。
十分カード無しの紅蓮撃で倒せる程度だ。
「紅蓮撃!」
ーーー。
「トドメいただきー。」
・・・。
「なんで削り切れない!ガードされたのか・・・?」
「霧が出てきたから火属性のダメージダウンかな。」
なるほど、気がつけば湖の方から霧が出てきている。
しかし、黒い霧だ・・・。